第三十九話 人妖同盟
「…っ。メルルは無事かっ!?」
数秒の遅れの後、ガウエルが叫びながら爆発の中心へと近づいていく。
「お、おいっ!まだ危ないぞ。」
「…悪ぃが自分の配下は自分以上に大切なんだよ。お前も分かるだろ、小僧。」
「…っ。」
確かにその気持ちはよく分かる。だが、今のでオーディンが殺られていなかったら?
「…もしそうだったら今度こそ万事休すだけどな。」
そんな思考の中、爆発地の煙の中から、人影が向かってきた。
「…っ!」
その姿は少しボロボロになるだけで済んだという、奇跡的な帰還を遂げたメルルだった。
「…メルル!無事か!」
ガウエルはそんなメルルに近づき、倒れかけのメルルに肩を貸す。
「…ありがとうございます、ガウエル様。…自分の『異能』の効果は自分に対して影響しないという効果があったんです。…それのおかげか、軽傷で済みました。」
メルルはそう言いながらガウエルに身を預ける。
「…これで終わったのか?」
ガウエルは俺に確認を取る。
「…恐らくな。」
オーディンの方を見ると、頭部は吹き飛び、心臓にも穴が空いた状態で物音1つせず倒れていたのだ。
流石にこれで生きてはいないだろう。
「…なんとか、終わったか…。」
長く…「妖精族」を巻き込んだ戦いが終わったのだ。
「…すっかり暗くなったな。」
周りを見渡すことができるのも体力が回復し、俺たちの戦いを見ていた結乃とレナの光魔法のお陰だ。
…神の3人も今は目覚めている。
「…一先ず『アルフセカイ』へ戻るか。レナたちもついてきてくれ。」
「…でも良いのかい?生徒たちが…」
結乃の心配は最もだ。このままレナや他の神を連れて戻ればどうしても目立ってしまう。
「そこは大丈夫だ。七香から連絡があってクラスメイトはこの関係を受け入れたらしい。…カナデのおかげみたいだ。」
俺は七香からRineで連絡が入っていたことをみんなに伝える。
「…なるほどね。それなら問題ないだろうね。」
「ガウエルとメルルもついてきてくれ。」
「…おいおい、それこそ問題じゃねえのか?お前らを襲ったんだぞ。」
「お前が心から伝えれば大丈夫じゃないか?最悪俺の名前を出せば受け入れてくれるやつがいる。」
俺はそう言い、マキナの元へと向かう。
「と、言うことだ。この場にいる全員を『アルフセカイ』へ転移させてくれ。」
「分かった。」
これで一段落だ。そして、七香の発言から捉えると俺の「狙い」も上手く行ったみたいだ。
「…よし。戻るぞ。」
俺たちを魔法の光が包み込み始める。
『……夢は醒めたか?』
「…っ!?」
「…えっ?お兄!?」
何かを感じた。その正体は全くわからない。
…だが、俺の勘がこう叫んでいる。
ーーー妹から離れてはいけないと。
〜〜〜〜〜
「…これでよしっと。」
私は絡斗に対してこっちでの出来事を簡潔に伝えた。
「…それにしても3人だけで主犯の神を倒しに行くとか。本っ当に馬鹿なんだから…。」
私たちの戦いが終わり、カナデやメルリアたちをクラスメイト、先生に紹介していた時だ。
…館の外へと戦いに出て行っていたエルとグリナさん、麗ちゃんが戻ってきて絡斗たちの行方を説明してくれたのだ。
「…でもあいつなら倒しそうよね。何か考えてそうだし。」
竜那や竜佳も絡斗を信じている。…確かにあいつがやられるなんてそうそう無いだろうけど。
「…これが「天使族」…。」
そんな話の中、生徒たちにエルを紹介すると滅多に見ることの無い「天使族」ということから注目を浴びている。
「…ボクにはこの待遇はちょっと恥ずかしいな。」
そんな事を言っているが嬉しいことなので聞かなかったことにしておく。
「…それにしてもラクトさんのいないところで良かったんですか?」
そんな私のところに、フレイヤさんがやって来る。
「もちろんですよ。幸崎先生も校長先生も、『アルフセカイ』に住む「妖精族」と「精霊」と協力関係における『人妖同盟』に賛成しているのですから。」
『人妖同盟』ーーーそれはフレイヤさんから持ちかけられた話だった。フレイヤさんは元々最初に絡斗に話そうと考えていたみたいだが、知らない間に絡斗に幸崎先生たちに言うように言われていたみたいだ。
そして話をもちかけて、私たちと『アルフセカイ』とで同盟を交わすことが出来た。
「…それと、フレイヤさんって『アルフセカイ』の…最後の『核』だったんですね。」
「……それは、ラクトさんが?」
「…はい。」
「…やはりですか。流石はラクトさんです。確かに、私自身が最後の『核』です。」
…本当に絡斗は頭が良いし、何かと勘が鋭い。私もそれにはすごく驚いている。
「…だけど本当にフレイヤさんだったなんて。だから襲われていたんですか?」
「…そうかもしれませんね。」
今思えば色々と辻褄が合うことが多いような気がする。
「…でも兄は戻ってくることはありませんでしたね。」
「…ぁ。」
そうだ。目的の一つに、フレイヤさんの兄…フレイさんを取り戻すことが入っていたはず。
「…仕方ないよね。そもそも生きてるかも怪しかったし。」
そんなフレイヤさんに私は声をかけられないでいた。
すると横からグリナさんがやって来る。
「…きっと戻ってきます。ラクトさんとは短い付き合いですけども、あの子はなんだか他の子とは違う。だから信用しましょ?」
グリナさんがフレイヤさんにそう言ってくれる。
「…そうだね。まだラクトさんたちが戻ってきていませんし。気長に待ちましょう。」
そう言い、話に一段落がついた。
「ありがとうございます。」
「いいえ〜。早くラクトさんたちが戻ってくれば良いですね。」
グリナさんはそんな調子で話してくれる。なんだか心が落ち着いたような気がする。
……それも今のうちだけだった。
「…帰ってきた!」
竜那が声を上げると、全員が一斉に玄関の方を見る。
「…絡斗!」
私もそっちの方へ向かって絡斗たちを見に行く。
まず、絡斗には1発パンチを入れてから色々とはなしたいことがーーー、
「…あれ、絡斗君と来菜ちゃんは?」
結乃の発言、それからそこにいた人物たちの驚きの表情を見て、私たちも遅れてこの事態に気づいた。
「……絡斗がいない?」
〜〜〜〜〜
「…ここは。」
気がつくと、草原の上に倒れ込んでいた。
周りを見渡しても何一つない。
「…お兄。」
すぐ隣には妹の来菜が一緒に倒れていた。
「…悪いな。急に掴んじまって。」
転移が始まり、嫌な予感がした途端に俺は来菜に抱きついていたのだ。
その結果、来菜も訳の分からないところに連れてきてしまった。
「…ううん。お兄と離れたくなかったから嬉しいよ。」
来菜はそんな事を言ってくれた。それだけで少し救われた気がするな。
「…とりあえず早くみんなのところに行かなきゃな。…来菜は「転移魔法」使えるか?」
「無理だよっ。」
てへっ…じゃないんだけどな。やっぱり「転移魔法」が使える者は少ないんだな。
「…仕方ない。周りを探索してみるか。」
「そうだね。」
俺たちは何も無い草原の上をどっちへ行けばいいかも分からないが、とりあえず周りを見渡そうと歩こうとした時だ。
「ーーーよぉ、久しぶりだな。」
背後から声が聞こえ、振り返る。その顔にははっきり言って見覚えなどなかった。
だが、何か心に引っかかっている。
「お前は誰だ?」
「…おいおい、自分の父親に向かって誰だはねえだろ。」
それは衝撃的な発言だった。
「…父親?」
「おいおい…まさか、見たことねえのか?どうりで転生したときに変な場所に居たのか。」
こいつは一体何を言ってるんだ?と、今になって来菜が俺の背中にしがみついて怯えているのに気づいた。
「…大丈夫だ。」
「…うん。」
「…兄妹か。懐かしいもんだ。」
その謎の男は俺たち…正確には俺に顔が似ているような気がする。
「…あんた、俺の父親って言ったよな?」
「…正確にはこの体の主がな。俺はお前なんか知らねえ。が、似たもんを感じるのは間違いねえな。」
「…ここはどこなんだ?」
「俺が呼んだ。」
受け答えが成立していないように感じる。一体この男は何なんだ?
「…あの時の声は…」
「聞こえたか?どうだ……夢は醒めたか?」
ふと、謎の男の雰囲気が変わる。先程までの緩い感じから一転して、真剣な表情へと変わる。
「…その意味は何だ?そもそも、お前は誰なんだ?」
「…ふっ、俺か?」
謎の男は軽く口元に笑みを浮かべ、こちらを射抜くような眼差しで告げた。
「ーーー俺は、日向影史だ。」
これにて長引いた3章がついに完結です!わたし的には、4章からが本番に思っていますのでこれからも応援してください!
4章が公開されるまでお待ちください。




