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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第三十八話 神殺し

ーーー目の前にいるオーディンはもはやその意識を保っていない。故に、何をするのか全くわからない状況だ。

「…小僧、どうする?まともにやっても勝てはしねェぜ。」

ガウエルがすぐ横で俺に問いかけてくる。

結乃とレナはオーディンとの戦いでかなり消耗しているだろう。

「…2人は休んどいた方がいいな。いざと言う時のために待機しててくれ。」

「分かった。」

結乃とレナは待機することに。俺と来菜は『異能』の力でほとんど体力を消耗していない。そして新しく来たガウエルとメルルが戦力に加わる。

「…シーラはまだ行けるか?」

「はい。援護でしたらまだまだ行けますっ。」

…これなら倒せるか?まずどうやって倒すかだ。


「…ガウエルの拳があまり効いていなかったな。物理的な攻撃はあまり通らないのか?」

オーディンの様子を見て、色々な思考を巡らせる。


「…だったら魔法で気を引いとくぜ。その間に倒す方法考えとけよ。」

ガウエルはそれだけ残し、オーディンの気を引くために魔法の攻撃を繰り返す。だが、どれも決定的なダメージではないように見える。


「…メルルとシーラはガウエルの援護をしてくれ。」

「ふんっ。言われなくてもするわよ!」

「わ、分かりました!」

2人もオーディンの元へと向かい、ガウエルの援護を始めた。

「…来菜、あいつはどうやれば倒せると思う?」

俺はさっきから発言をしていない来菜に目を向ける。

来菜は俺以上に頭が良い。おそらくオーディンの突破方法は『俺と同じように』思いついているはずだ。


「この方法だと、私たち2人とも身の安全が保証できないわね。」

「…やっぱりそうなるよな。だが、何も俺たち2人だけで倒す必要は無い。」

「…あ。」

「気づいたか?…ガウエルたち…正確にはあのメルルに協力してもらえばいけるはずだ。」

俺は来菜の手を握り直して一歩前へと踏み出す。

「…メルルの『異能』の発動条件が気になるな。まずはそれを聞く。その間、メルルの代わりにガウエルを援護していてくれるか?」

俺は来菜にそう言うと、嫌な顔1つせずにこちらの手を離して前へと踏み出す。

「任せて!お兄のために、頑張るよー!」

何とも気の抜けた返事だが、実力はある。心配は要らないだろう。



「反撃の第1歩だ。…これから奴を倒す作戦を始めるぞ!」






来菜はオーディンへと接近していく。

「…!?あの娘、小僧の妹とかいうやつだったな。」

ガウエルはオーディンの気を引きつつ、攻撃を何とか避けながら来菜に意識を向けた。

「…おいおい、1人で大丈夫なのか?」

そんな来菜はガウエルの側へやってくると、

「お兄からあなたの援護するよう言われた!代わりにメルル?ちゃんはお兄の所に行って!」

「…え、私?」

メルルは自分の名前が出てきたことに驚いた。


「…「闇海(あんかい)」!」

来菜の『異能』の技が発動する。オーディンを中心に黒紫色の円が周囲に広がっていく。

「何だ、これ…!」

ガウエルはそんな来菜の様子を見て驚きを隠せない。

「なっ…。」

その驚きもつかの間、オーディンの動きが見違えるほど遅くなった。そして、オーディンも何かに縛られているかのように呻き声を上げている。

「…これがあんたの『異能』か…?」

「正確には『異能』の技だよ。今のうちに出来るだけ攻撃を加えてね。あ、だけどあの地面に広がる「闇海(あんかい)」には触れないでね。オーディンと同じようになるから。」

「…兄妹揃って、恐ろしい『異能』だな…!」

ガウエルはすぐに判断をし、魔法で距離をとって攻撃を続ける。


「…あっちは大丈夫そうだな。」

俺は来菜の方を見て問題はないだろうと思った。

「…何の用よ。」

呼んだメルルが俺の方へと近づいてくる。

シーラは引き続きガウエルの援護をしている。


「…メルルの『異能』の発動条件を教えて欲しい。」

俺がそう言うとメルルは少し驚いた顔をした。

「…なんで、あの『異能』に条件があるって…」

「はっきりとは分からないけどな。だが、『異能』にもだいたいパターンってのがある。応用が効く通常タイプの『異能』と、常に発動して、ある条件下で本領を発揮する永続タイプの『異能』。」

俺の説明の内容は初めて聞くのか、俺の話を真剣に聞いている。

「そして、かなり尖った性能、強力だが発動するために条件がある条件タイプの『異能』がほとんどだ。俺の『異能』もこれに当てはまる。だから、メルル、お前の『異能』と効果を見て何となくそうじゃないかと思ったんだ。」


「…もしかして、あなたって頭良いの?」

「それなりにはできるさ。」

そう答えると、メルルは深く息を吐く。

「…分かった。教えればあの化け物、倒せるの?」

「…話を聞いて、その『異能』の使い方次第だ。俺の考えてることができるなら倒せる。」

俺は「倒せる」と言い切った。その確信めいた言葉を聞いてメルルは何度目かの驚いた顔をする。


「…条件は2つある。1つは本来なら簡単なんだけど…」

「本来は?…どういう条件なんだ?」

「対象者に触れることよ。」

「あー…」

確かに本来なら簡単な条件だな。だが、相手が化け物と化したオーディンだと触ることすら精一杯かもしれないな。

「もう1つは?」

「その対象者の血液を入手することよ。その血液をキューブに吸収させることが条件。血液を消費してその血液と合う人物を中へと入れることが出来るの。入れてしまえば入れてる時間や取り出す時に血液は要らないから実質無制限よ。」

「……。」

「何よ?なんか気になることでもあったの?」

「いや、今は関係ないから良い。」

少し気になる言い回しに聞こえたが、言及することなく次へと話を進めようとする。だが、


「…言って。おそらく君が気にしていることがあいつを倒すキッカケになるかもしれないよ?」


今度はメルルが、俺を試すかのような言い方をしてきたのだ。

「…そうか。なら…お前の2つ目の条件。血液と合わない人物…血液を吸収させていない人物を試すことは出来ないのか?」

今の話、条件に当てはまっている人物の話しか出てこなかった。もちろん、普通に考えれば当たり前のことだ。

だが、もし条件に合わない人物に試したらただの不発で終わるのか?もしかしたら…


「…ほんと察しがいいわね。血液に合わない人物を入れれば、入れようとした瞬間にその人物の体が砕け散るわ。」

「……。」

「こっちは裏条件と言っても良いものね。…ただし、1つ目の条件が少し厄介になるわ。」

「…というと?」

「…砕きたい箇所に触れる必要があるの。更に、印をつけないとこの裏条件は達成されない。裏条件が達成されなければそれは正真正銘、不発で終わることになるわ。」

印をつけた箇所を砕けさせる。…狙いは心臓の位置と頭部になるな。

「…しかもキューブに入れるのに、再びオーディンに接近する必要があるのか。」

「そう。そして印をつけるには最低2秒は触れていないと無理だわ。」

中々に難しい条件だな。


「…出来るの?」

「…もちろんだ。俺と来菜、ガウエルがいればお前がオーディンに触れる隙は作れる。後はお前次第って事だ。」

そう言うと、メルルは緊張することもなくオーディンの方を見直した。

「…私だって出来るわ。」

「よし。…行くぞっ!」

作戦が決まったことで、俺とメルルはオーディンの方へと向かっていったのだ。







「…あっ、お兄!」

来菜が俺たちに気づき振り返る。

「…行くぞ来菜!メルルのために隙を作る!ガウエルも協力しろ!」

「…仕方ねぇな!」

ガウエルも俺の話を素直に聞いてくれるみたいだ。

俺は来菜の元へと近づきお互いにその手を握りしめる。


「…『異能』「天冥廻(てんめいかい)」!」

俺と来菜は『異能』を発動させる。

「…『廻廊(かいろう)』!」

オーディンの周囲を黒と白の光が囲うように交差しながら漂っている。

「メルル!俺を信じてこれに触れろ!「照門(しょうもん)」!」

俺はメルルの目の前に白い(もや)がかかった門を出現させる。

「…っ!」

メルルは躊躇いもせずに俺の出現させた門に触れる。すると全身が門に呑まれその姿を消した。


「…なっ!?」

ガウエルはその様子を見て驚いている。だが、驚きはそれだけでは終わらなかった。


…オーディンの頭上に新たにメルルの前に現れたのと同じ門が出現し、そこからメルルが飛び出てきたのだ。


「ォォォオオオオ!!!」

オーディンは頭上のメルルに気づき、腕を上へと伸ばそうとする。ーーーその時だった。


「…ァァァガガァァァ!!!?」

オーディンが周囲を漂う黒と白の光に触れた瞬間、体が硬直したのか身動きが取れなくなった。


「…条件達成!!」

その隙をつき、光に触れないようにメルルはオーディンの頭、それから心臓部分に触れ、印をつけることに成功した。


「…『異能』、「封印(ふういん)」……「不成立(ふせいりつ)」!!」

メルルが『異能』を発動させる。



「グガァァァァァーー!!!!」



瞬間、オーディンの体が膨張し、大きな爆発音と煙を巻き上げる大爆発が起きたのだ。

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