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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第三十七話 兄妹

ーーー立ち尽くすオーディン。その周りを囲むかのように俺たちは立っている。


「…俺の計画が、破綻しただと…?」

「…そうだ。ここからお前に挽回する余裕はないだろう?」

結乃がオーディンの問いに答える。それを受け、オーディンは静かに息を吐く。

「…まだ計画など始まってすらない。」

「そのボロボロの体で一体何ができるんだ?おまけに槍も失ってるぞ。」

ミルがオーディンの姿を見るなりそう言う。


「…私も、貴様は許せない。ここで、始末する。」

マキナも明確な敵意をオーディンに放っている。オーディンを生かす選択肢は俺たちの中からはとっくに消えていた。


「…調子に乗るなよ。」

「…っ!!?」

オーディンはその胸に自らの右手を突き刺した。そして、次の瞬間には先程まで以上の溢れんばかりの力が湧き出てくる。

「…かぁぁぁっ!!!」

「…これは、自分の命を糧に限界突破をしてるというのかっ!?」

結乃だけでなく、他の皆までもが驚いていた。


「…命を糧に…」

つまり、短期決戦に持ち込もうという考えだろう。

「…くっ。先にこちらから…」

「…遅い。」

ミルが先手を取ろうと一歩目を踏み出した瞬間、すでにミルとマキナには二本の槍が飛ばされており一瞬にして2人の胴を貫いた。


「…がっ…!?」

「…ぐっ…」


「…マキナっ、ミルっ!」

ラプラスさんが2人に近づこうとするもすでに目の前にはオーディンが立ちはだかっていた。

「…っ!」

「…貴様もだ。」

「させないっ!《神凪(かみなぎ)》!」

周囲に神の力を媒体として、強力な衝撃波を放つ『神業』の1つだ。


「…甘い。」

「嘘っ…!?」

だがそれを寸前で躱したオーディンは頭上から真下目掛けて槍を撃ち下ろした。

「ぐぅぅぁ!!」

ラプラスさんはそれを避けようとするも、右肩を貫通してしまい、右腕が根元から切断されてしまう。


「…まずい!オーディンの槍に貫かれたらまともに戦えないっ…!」

結乃がその光景を見て悲痛な叫びをしている。

「…何の、効果があるんだ…?」

俺はそんな結乃にオーディンの持つ槍の力を聞く。

「…オーディンの持つ槍は確か、「神槍グングニル」という物だ。複数増やすことができ、その槍の効果は、槍で貫いた者に対してその槍の持ち主の攻撃が必中になるというものだ。」







「…そんな…」

シーラもこの状況がかなりマズイものだと感じ取っているようだ。

つまり今、マキナとミル、ラプラスさんはオーディンのその命を握られているも同然ということ。


「…だが、ミルの「ロード」を使えば…」

槍に射抜かれる前の状態に戻れるのでは。

「…無駄だ。この槍は万物を越えて力を発揮する。…射抜かれて間もない頃ならまだしもすでに「刻印」が付与されればやり直すことなど不可能だ。」

「くっ…。そんなのはったりだったりは…」

「それは無い、と思うぞシーラ。もしはったりならすでにミルが「ロード」し直していてもおかしくない。」

俺は傍らでまだ意識を保っているミルに視線を向ける。

「…だが「ロード」できていない。つまりあいつの言ってることは本当だという事だ。」

俺の言葉にシーラは息を呑む。

「…もしかしてこれってピンチだったり…?」

神が実質戦闘不能となれば、戦えるのは俺を除いてシーラと結乃、レナだけだ。


「…レナ、俺のことは守らなくていい…本気でオーディンを倒しに行ってくれ。」

俺の護衛で動きに制限がかけられているレナに何とか護衛をやめさせて、戦える人数を増やさなければ。


「…了解です。」

レナは一瞬にして俺の傍から離れ、オーディンに攻撃を仕掛けた。


「…シーラは援護を頼む!」

「分かりましたっ!」

結乃もレナに続いて接近していく。そんな2人をシーラは「補助魔法」で援護に移った。

「…俺は…」

どうすればいい。このまま見てるだけでいいのか?

結乃もレナも傷を負ってはいないが、それなりに力は使用していた。多少の疲れはあるはずだ。


「…兄さん。今は私がいるよ?」

そんな色々な事を考えている所に、ずっと傍に寄り添ってくれていた双子の妹、来菜が声をかけてくれる。

「…ぁ、そうか…そうだな。」

来菜が今目覚めたばっかだから、てっきり力が上手く使えないのではと思っていた。

何より、復帰早々力を消費させたくないという思いもあったのかもしれない。


だが、妹を…皆を助けるには妹の力が必要不可欠だ。

「…来菜、早速悪いが力は使えるか?」

「ふふ。お兄に頼られるのなんてすごく嬉しいな。」

来菜は昔のような調子で俺に接してくる。だが俺にはそれが有難く感じている。

「もちろん使えるよ。…それよりもお兄の方こそ、無理しすぎたんじゃないの?」

俺の、代償を受けた体を見て来菜がそう言う。


「…そこは俺『たち』の力の出番さ。来菜がいないところで無理をしすぎたけども、ここからは大丈夫。」

俺は来菜に向かって手を差し伸べる。

「…ふふ。流石お兄だよ。これでこそ私の愛してるお兄だわ。」

少し照れくさいことをさらっと言った妹は、俺の手を握るかのように自分の手を重ねてくる。


この間にも結乃、レナはオーディンと戦闘中だ。上手く槍を避けてはいるがそれ以外の攻撃に苦戦しているみたいで持ちこたえるのも限界が近いだろう。



「…ならば、本当の本気を見せるまでだ。」

「あんな神、私たちの絆でぶっ飛ばしてやるぞー。」


俺たちは一気に魔力を高める。その反応を見て、結乃、レナ、シーラだけでなくオーディンまでもがこちらに視線を向けてきた。


「…絡斗君。君の本当の力を見たいと思っていたよ。」



「「…『異能』、「天冥廻(てんめいかい)」!」」


「…っ!!?」

その瞬間、オーディンは何かの衝撃に弾き飛ばされるかのように後ろへと倒れ込んでいった。







「…絡斗君の、力なのか…?」

結乃だけでなく、レナやシーラも驚いている。

「3人とも、ここからは俺たちが代わりをする。下がって治癒していてくれ。」

俺は3人に言いながら、来菜と手を繋いだまま前へと進んでいく。


「…絡斗君の『異能』は「日天(にってん)」のはず…。今の「天冥廻(てんめいかい)」は一体何なんだ…。来菜の『異能』なのか…?」

結乃が1人、俺たちの力を見て呟いている。


「…小僧ォ…。死して償えェ!!」

もはやオーディンの原型を保てずに体が崩壊している。

「…情けはかけない。来菜の事に関係しているのだからな。」

「…ォォォオオオオ!!!!」

オーディンは凄まじい速度で俺たちに接近し、片手を振り上げている。そして、そのままの勢いで振りかざそうとしてくる。

「お兄と一緒にいれば、お前なんか敵でもないわ。「獄門(ごくもん)」!」

だが、俺たちとオーディンの間には謎の黒い(もや)がかかった扉のようなものが出現する。そしてその扉のドアが自動的に開き、オーディンの振りかざす拳を迎え入れようとしている。


「グガァァァァー!!!」


「…なっ…」

「これは……」


その扉の中に触れた瞬間、オーディンの振りかざした腕はそのまま灰になって消し飛んだのだ。




「……。」

片腕を失い、体も崩壊しているオーディンはその場に立ち尽くし、動こうとしない。


「…チェックメイトだ。」

俺はそんなオーディンに向かって情けをかけることなく全力で倒しにいく。


「くらえ…っ!?」

『異能』の力を発動しようとして俺の動きがピタリと止まった。いや、来菜も同様に目を見開いている。


「…嘘でしょ?」


オーディンの体がいっそう巨大化し、崩壊していた体をその崩壊を止めていたのだ。







「お兄…これって…」

「俺も分からん…だが、かなりヤバいかもな。」

見ると、オーディンの魔力は再び増幅していたのだ。

だが、もはやオーディンと呼べるべき姿ではなかった。

「もう意識もないだろう。…本能でああなったのか?」

崩壊したオーディンは、近くに倒れ込んでいるマキナたちを標的にし、残った拳を振り下ろした。


「…!!まずいっ!」

マキナたちを死なせてしまっては結局オーディンを倒したところで意味が無くなってしまう。


「ォォォオオオオ!!」

「やめっ…!」

俺たちの行動は間に合わず、気がついた時には無慈悲にもオーディンの拳がマキナたちのいる地面ごと抉りとっていた。


「…っ。」

「…そ、そんな…」

誰もがオーディンの行動が終わるまでの間、動くことすら出来ずただ見ているだけだった。


「……!?」


オーディンが次に近い俺と来菜を標的にしたのか、こちらへとゆっくり近づいてくる。

「…っ、絡斗君!」

結乃はそんな俺たちに対して声を上げる。

「お、お兄!今はとにかく…」

「いや、大丈夫だ。」

「…え?」

俺は来菜に動かなくてもいいと指示を出す。その意味と俺の言葉の二つの意味が分からないのか来菜は戸惑っている。


…マキナとの契約が解除されていない。つまりそれはーーー、


「ーーーまた会ったな。小僧。」

俺とオーディンの目の前に現れたのは、『帝の王』ガウエル・ヴェインだった。

「…ふぅ…『異能』、「凶暴化(きょうぼうか)」!」

ガウエルは右腕のみ『異能』を発動させ、近づいてくるオーディンに向かって全力の右ストレートをぶちかました。


「…っ!」

「…ガウエルが…!?」

結乃はガウエルが来たことに驚き、他はガウエルの拳に驚いている。


「グガァァァ…!」

「はッ、こいつが神か?化け物の間違いだろぉが…!」


ガウエルの拳でオーディンは一歩後ろへと後退りをする。だが、それだけだった。まるでダメージは通っていないかのように。

「…ガウエル、マキナたちは?」

「…ここにいますよ、小僧さん。」

声のする方に振り向くと、そこにはボロボロのガウエルを守ろうとしていたあの少女が立っていた。

「確か、名前は…」

「メルルですっ!まぁ覚えてもらわなくて結構ですけどね。」

メルルと言った少女はその手に小さなキューブのようなものを1つ持っていた。


「それが…」

「私の『異能』です。近くに倒れていた神3人はこの中にいます。…出しますか?」

おそらくそのキューブの中なら安全なのだろう。殺さずに残した魔族の配下たちもこれで回収したのだろうな。

「頃合いを見て出しといてくれ。あと、出来れば治癒もしてほしいんだが。」

「人使いが荒いわね!仕方ないからするけどさ!」

メルルは嫌々キューブから神3人を外に出し、「治癒魔法」をかけてくれる。


「…ガウエルが来たんだ。負けられないな。」

ここでオーディンとの決着をつける時だ。

俺たちは今一度気を引き締め直し、オーディンと向かい合ったのだ。

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