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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第三十六話 記憶

ーーー2人の神と戦って尚優勢でいるラプラスさん。流石としか言いようがないな。


「…『神業』、《神纏(かみまとい)》!」

ラプラスさんの全身を神の力が包み込んだ。一気にラプラスさんの魔力が跳ね上がる。

「…っ!!」

吹き飛ばされた神は気絶したのか動けないままで、女神はラプラスさんの魔力に身構えていた。

「…ふっ!」

「…かぁっ!!?」

一瞬で女神との距離を詰め、ラプラスさんの右ストレートが女神の腹に直撃する。その勢いで大きく吹き飛ばされ、倒れている神の傍らに倒れ込んだ。


「…おしまいですね。《ネオ・アビス》!」

2人の神の頭上に黒い魔法の球体が生成される。近くにある岩など、地形の一部がその魔法の球体に吸い込まれていく。

そしてその球体は徐々に大きく広がっていき、やがて2体の神も吸い込んでいった。


「…っ!」

次の瞬間、神は全身を切り刻まれたかのような傷と大量の血を流して球体に弾かれたかのように地面へと飛ばされた。


「…これでこの2人は終わりね。」

ラプラスさんが魔法の効果を解除する。

「…残るはオーディンだけか…」


マキナとミルが戦っている神、オーディンを倒せばこの一件に決着が着くはずだ。

「戦っている間にいつの間にか距離が空いているな。マキナたちのもとへ向かおう。」

オーディンたちの姿が見えなくなっていたことから、俺たちと距離が空いたのだろうと思い周囲を探しに走り出した。


そして、

「見つけた!ふた…っ!?」

2人とも無事か確認しようとして息が詰まる。

「…嘘っ……。」

ラプラスさん、結乃、レナもその光景に言葉が出ない。


…オーディンの前に、マキナとミルがその場に倒れ伏していたのだ。







「…マキナっ!」

俺はすぐにマキナの傍に駆け寄ろうとする。

「…待ちな。」

「ーーーくっ!」

だがその歩みを止めるかのようにオーディンが鳥のようなものを俺の前に召喚させる。


「…鳥?」

「こいつは俺の能力の一つだ。前にムニンの名前を出したと思うが、こいつがそのムニンだ。」

もう片方のフギンは前に見たがどちからと言えばカラスのような姿だった。

だが、このムニンを一言で表すのなら梟のほうが近しい言葉になる。


「…こっちにも都合があるんでな。本気を出させてもらったわ。ムニンの力を知らなかったようでな、あの威勢のいいミルもこのザマよ。あとでたっぷりその体を舐りたいとこだ。」

オーディンの全身からはこれほどかと言うほどの殺気が漏れている。


「…思ったより来るのが早かったな。お前らのことを甘く見すぎていた。直々に殺させてもらおう。…そこの女はこいつら同様生かしておいてやるよ。」

オーディンが手に槍を出現させ、臨戦態勢へと移る。


「…くっ…。」

足が震えて動くことが出来ない。このままでは殺られる。

(君も手を抜かなければそこまで傷を負う必要も無かったのに。)

「……。」

まるで俺の力がこの程度じゃないことを知っているかのような口ぶりだった。

…今、本気を出せばあいつを倒せるのか?だがそうすれば、10分と体はもたないだろう。


「…それはただの言い訳だ。」

ここで倒す。オーディンは何があってもだ。


「…はッ!殺るのか、小僧!」

オーディンは地を蹴って、次の瞬間には頭上にまで接近してきていた。

「…見せてやるよッ!」

今まで、『一度も』使わなかった『異能』の真価。


「…『異能』、「日天(にってん)」!」

俺の全身を日の力が包み込んでくる。


「…やっと使ったんだね、絡斗君。これで『二度目』かな。」


オーディンの槍が俺の体に到達する前に、槍を伝いオーディンの体から大量の炎が溢れ出した。


「…かっ!その程度か!」

だがそれでオーディンの動きは止まらず、槍を振りかざしてくる。だが、炎の衝撃でほんの一瞬、0.1秒程の硬直があったのを見過ごさなかった。

「それだけあれば充分だ。」

次の瞬間、オーディンの振りかざした槍の下には俺の姿は無くなっていた。


「…っ!?」

オーディンの背後に移動した俺は両の掌をオーディンの背中へと接触させる。

「くらえ!…「日響(にっきょう)」!」

「…がはぁぁっ!?」

凄まじい大爆発を起こし、俺とオーディンは煙の中へと姿を消していった。







周りからは俺とオーディンの姿は見えなくなっているだろう。今現在でいえば、俺もオーディンの姿を見失っている。

「…今のでやられてくれれば良いんだけども。」

流石にそんなことはないだろうと思い、周囲を警戒しながら煙が消えるのを待つことにした。


「…くうっっ!!!」

「…来ると思ってた。」

頭上から全身黒焦げとなったオーディンが槍を突き下ろす。


「…「滅却(めっきゃく)」!」


「…っ!!?」

次の瞬間、立ち込めた煙が一瞬にして晴れた。そして、

「…っ!?」

ラプラスさんたちの目前に現れたのはその場で膝を着く俺の姿と、抉られた地面に倒れ伏し、片腕が吹き飛んだオーディンの姿だった。






「…大丈夫か!絡斗君!」

すぐ側に結乃が近づいてきた。

「…大丈夫だ。…今のは俺の力だ。」

「…分かってる。それよりオーディンは?」

少し引っかかったが今は問い詰める暇はない。


「…恐らくまだ死んではないだろう。」

俺は倒れているオーディンを見てそう言う。


「…ぐっ!」

「!?、絡斗君!」

突然、胸を締め付けるような痛みが走った。

まだ、10分は経っていないというのにもう時間切れか?

「…早すぎる…ぐっ…。」

「もしかして代償か!?」

俺の体から唐突に熱が引いていき、『異能』も全てが解除される。

「レナ!絡斗君を守って!」

「かしこまりました。」

レナがすぐ横へと移動してきた。


「皆さん、気をつけて!」

ラプラスさんが声を上げる。目の前には、飛びかかってきたオーディンがいる。手に持つ槍をこちらへ投げ飛ばしてくる。それは凄まじい速度で巨大化しながらこちらへと襲いかかってくる。


「…駄目だ!」

結乃は反応が遅れ避けきれない。俺はもちろん動けず、レナも俺を守るために動いたため避けきることは不可能だ。

「…くっ…!」

失敗したのか。


「…《ヘブンズフィール》!」


「…っ!!」

突如目の前に光の壁が現れ、オーディンの槍を受け止めた。

「間に合って良かったです…!」

この場に現れた人物が誰なのか顔を上げて驚いた。


「…シーラか?」

俺たちとオーディンの間に割って入ってきたのは、『教育する精霊』シーラだった。







「…かぁっ!次から次へとやって来るもんだ…」

オーディンもかなりの致命傷を負っている。さっきの攻撃はかなり効いたと見て良いだろう。

「…お前はどうやってマキナとミル2人を倒せたんだ?」

結乃がオーディンに聞く。同じ神とは言え、ラプラスさんと先の神2人のような力の差があれば別だが、普通では防戦一方になるはずだ。


「…このムニンの記憶の力。「記憶の一時消去」を使ったまでさ。これで一時的にだが、あらゆる記憶を封じれる。棒立ちの神なんぞ取るに足らん相手よ。」

「……。」

恐らく発動条件はあるだろうが、それによって2人の記憶を封じその間にあの槍で。


「安心しな。倒すのにムキになってたからよ、体なんか触っちゃいねえぜ。」

「誰も聞いていない情報をありがとう。だけど、これ以上あなたに何ができると言うの?」

ラプラスさんが一歩前へ踏み込んでオーディンと対話する。


「はッ、ここにいるやつら全員殺すに決まってんだろ…」

オーディンからは再び力が溢れてきた。

「…こいつ!まだこんなに余力を!」

…俺はさっきの反動でしばらく非能力者同然だ。俺の考えが甘かった。もう少し念入りに…いつも通りやっていたら。


「そんなことはないよ。」


「…っ!?」

「っ!?」

突如聞き覚えのない声が茂みの方から聞こえた。

…いや、俺にとっては馴染みのある声のように聞こえた。その声の持ち主はーーー、


「…ま…まさか…。」


「…この状況で再会ってのも悲しいけどね。お兄、おはよう。」

「まさか…!?」

「…何故だ…!?」

結乃だけでなく、レナ、ラプラスさんもその人物を見て驚きを隠せないでいる。更には、オーディンが血相を変えてその人物を注視する。


「……来菜(らいな)。」

「…お兄、なんだか長い夢を見ていた気がするよ。」

来菜と、俺が呼んだ人物はその目に涙を浮かべていた。

そして俺に駆け寄って、この体に思い切りしがみついて来たのだ。

「お兄!やっと…やっと、会えたよぉ…!!」

「…あぁ、来菜……やっとだ。」

来菜は俺の体を離さまいと力強く抱きしめてくる。


「…これは予想外だな。」

「そうですね。ですが良い方向です。」

結乃たちもこの光景を見て微笑み出した。


「…皆さん、まだあの黒幕は健在です。気をつけてください。」

シーラがオーディンを見てそう言ってくる。


「…何故だ。」

「…どうやら上手くいったみたいじゃな。」

「…っ!?」

「…ミルっ…!」

オーディンが首だけで振り向くと、そこには傷一つないマキナとミルが立っていた。


「貴様のムニンの力を知らなかっただと?舐めておるな。この「改竄(かいざん)」の前で記憶を弄ろうなどと考えるのは浅はかだ。」

「…まさか、この記憶の消去の力を使って…」

「そう。マキナに、ライナの事実を書き換えたという記憶を引っ張ってきた。それを消去したことによって一時的にだが、ライナの事実が書き変わったということはなくなったのだ。」

ミルの説明を受けて、オーディンが驚きの表情のままいた。


「そこにつけ込んで、その瞬間のマキナの記憶を「セーブ」した。その後もろに記憶消去を受けたからミルたちはやられてしまったがな…」

そう言いミルは俺たちの方を見る。

「ラクトたちのおかげで記憶の一時消去の効果がきれた。その瞬間にミルを無傷な状態に「ロード」し、マキナの、ライナの事実を消さなかった記憶を「ロード」し直した。そして再び「セーブ」したのじゃ。」


これまでに起きた事実をミルが説明をしている。

それにしても、いきなりのコンビでこんなことを思いつき、実行してくるとは。


「…さすがはミルだな。」

「そうじゃろ?ラクトよ。」


「…くっ…」


「これでお前の計画は破綻した。今こそ終わりにしてもらうぞ。」

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