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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第三十三話 人族の在り方

ーーー体力が少し戻った頃、大きな音がした方へと足を運んでみた。


「…まさか魔物がいたなんて…。ナナカの元へ戻る前に片付けないと。」

あまり時間をかけすぎてもナナカたちが心配するかもしれないし。

「『異能』!」

私はすぐに『異能』を発動し、次々と目の前の魔物を倒していく。

そして、少し遠くに残り一匹の魔物がいた。

「…あいつだけ大きい…」

その魔物だけは他の魔物よりも一回り大きく、少し違う雰囲気を纏っていた。

「あれで、最後ー!」

私は加速し、その魔物に近づき渾身の右ストレートを打ち込んだ。


「……え。人…じゃ、ない?」


魔物を飛ばした瞬間、真横から聞き覚えのない声が聞こえる。つまりそれはーーー、


「……っ!?嘘…」

ラクトと同じ学校のクラスメイトらしき「人族」と会ってしまった。






1階には降りてこないはずの、生徒が何故いるのか。

すぐに周囲を見渡して1つの可能性が浮かび上がった。


「っ!落ちてきたのか…。」

少し遠くの天井に大きな穴が空いていた。おそらく、そこから落ちてきてここまで歩いてきたのだろう。

「…っ。」

ラクトのクラスメイトらしき人たちの方を向くと、そのほとんどが怯えた顔をして、壁に背を向けている。

「…魔族に…獣人族に…最悪だ。…ここで、死ぬのか…」

一人の男がそんな声を漏らした。


…前に、ラクトから人族とは今は会わないでほしいと言われていた。もちろん私だけでなく、エルやフランちゃんも。

人族の頂点…一番偉い人は魔物だけでなく、他種族全てが敵と公言しているらしく、そのせいで私たちは、今人族の住む『セカイ』にいることがバレれば何をされるか分からないとラクトが説明してくれた。


そんな馬鹿な話、普通ないよね。でも、人族は支配制度が高まっているらしく、その偉い人の言うことを疑う者はほとんどいないみたい。

だから、ラクトが先陣を切って私たちのことを分かってもらえるように努力するって、いつか証明できたらそのときにたくさんの人族と触れ合ってほしいって言われた。


「…ラクトの考えをする人が増えて欲しいけど…」

今の男の言葉、他の皆の表情を見れば、今証明するのは難しい。それでも、

「…ラクトの仲間なら、見殺しにはできない!」

恨まれていても、恐れられていても関係ない。今は目の前の魔物が敵だ。




「…もしかして…」

また別の男が何かを言いかけた気がするが、今はそっちに構っている暇はない。

「…ふぅ。」

やっぱり他の魔物とは違く、さっきの一撃だけではやられることはなかった。


「魔法で足止めして、乱打すれば…」

そうと決めたらすぐ実行。すぐに魔物に接近する。


「あの獣人早っ!?」

「……」

「?園崎、どうした?」

「…あっ、なんでもないよ佐伯さん。」


後ろの声はあまり聞かないように。

「…《ランドラ》!」

魔物の立っている周囲の地面を隆起させる。

「《ブリザードランス》!」

魔物の逃げ場を失くし、私の使える一番の大技をぶつける。

直撃すれば、どんなに強くても一瞬は凍りつく。その間に『異能』を叩き込めばいける。

そのまま魔物に向かって一直線で接近する。



「…っ!その魔物は、魔法が効かないっ!!」



「「…っ!?」」


「…ッ!」

誰かの声が響いた。後ろの声は聞かないようにしていたが、今の声は違う。

次の瞬間、一瞬も怯むことなく魔物が私目掛けて拳を打ち込もうとしてくる。

「…《ランドラ》!」

誰だか分からない人の言葉を信じ、すぐに目の前に地面を隆起させ足場を作り、それを蹴って方向転換をする。


その一瞬遅れた後に、その足場は魔物の拳によって粉々に壊された。






ーーー今の言葉がなければ、やられていたかもしれない。

「…それにしても、魔法が効かない魔物だなんて。」

聞いたことがなかった。

だけども、魔法が効かないと分かった今、『異能』だけに集中すれば良くなった。

「…ふぅ。「崩拳(ほうけん)」!」

両手両足に『異能』を集中させる。これで爆発力が高まる。

「…そして、最近覚えた新技。」

ここで披露することになるとは思わなかったけど。


「ーーーッ!!」

呼吸を整え、『異能』によって強化された足で地面を蹴り魔物の背後に一瞬でまわる。


「…な、なんだっ!?」

「…っ!見えなかった…」


魔物も反応が遅れたのか振り向くまでに数秒の時間があった。

「その数秒が命取りだよっ!「轟雷掌(ごうらいしょう)」!」


私の最近あみ出した新技、「轟雷掌(ごうらいしょう)」。本来、私の『異能』で能力を大幅に強化できるといっても限度がある。今の私の力じゃ、3倍ちょっとくらいしか出せない。

でも、その力を全身、または一部分で数箇所に発動したあと、一点にその力を集中させれば更に大幅に強化できることが分かった。

もちろん普通に使うより気力とか余計に消耗して連発は無理だけど。


この「轟雷掌(ごうらいしょう)」は一発、二発程度しか使えないとしても、その強化幅は6倍近くまで跳ね上がる。


「いっけぇぇーー!!」

私の技は、魔物の背中にクリーンヒットした。

その瞬間、魔物からは尋常ではないほどの高い呻き声が発せられ、技の当たった箇所を中心に体が散り散りに粉砕していった。



…土煙が晴れて、周囲が見えるようになったとき、魔物の残骸らしき腕がその場に落ちていただけだった。


「…もう少し力の調整もできるようにした方がいいかもね…」

私の近くにあったはずの壁までもが消し飛んでいた。さすがにやり過ぎてしまったようだ。


「…君。」

先の戦いでの疑問を解消すべく、戦闘中私を助けるために声を発したであろう男の元に近づいていく。

他の人たちは怯えた顔をしたが、誰も動こうとはしなかった。


「…あなたは、絡斗君と知り合いだよね?」

先にその男が声をかけてきた。

「良く分かったわね。…どこかで会ったっけ?」

その男はどこか見覚えがあるようなないような。


「一回目の作戦会議のとき、当たり前のように天使族の子がいてビックリしたからね。でも、絡斗君と普通に話していたから敵じゃないとは思ったんだ。そして、この場に不自然にいる獣人族。君もそうなのかなって。」

その男が天使族と言った時、再び後ろの人たちが驚いていた。

だが、一回目の会議にいたということなら。

「確かにそう思うわよね。…信じてもらえるか分からないけど、私たちは君たち人族の敵じゃないよ。」

「…そ、そんなの信じられるかよ…!」

私がそう言うと、後ろで怯えている男の1人が食い気味に声を上げた。


「…人は、他種族にやられないために強くなってるんだ!」

「それは飛躍しすぎなんだよ。僕も変だと思ってたんだ。」

「…どういうこと?」

そこで一人、他の者よりかは落ち着いている女の子が私と話している男に問いかける。

「…何か裏があるんじゃない?現に、妖精族と交流をしてみてあの人たち全員が僕たちに敵意があるように思えたかい?」

そう聞かれ、後ろの人たちが考えるような仕草をした。


「…それじゃあ、敵ってのは…」

「魔物は本当だと思うよ。それ以外の敵ってのは、ぼくたちに敵意を向けてくる人たちなんじゃないかな?」

「…人によって、敵が違うってのか?」

「うん。敵ってのは、自分たちで決めることなんだ。その証拠に、言っていいのかは分からないけど絡斗君や愛条さんは他種族に仲のいい人たちがいるんだよ。今、僕たちの目の前にいるこの子とかね。」

それを聞き、他の人たちの私を見る目が少し和らいだ感じがする。


「…よろしく。僕は園崎雄二って言うんだ。」

その男が手を差し伸べてきた。

「…私は、カナデ・トラン。よろしくね、ユウジ。」






「…よく見ると可愛いね。」

その後、この場にいる人たちは心を開いてくれて、仲良く話せるようになった。

「そ、そんなことないよ。」

マシロがグイグイきて少し驚いてしまう。

「…先生たちの元へ戻って、皆にも説明しよう。」

ユウジがそう言い、私たちは2階へ目指して歩いていった。



「…そうだな。」

「あれ、意外と驚かないんですね。」

ユウジが先生に説明し終えたとき、後ろの生徒たちも意味を理解してきたようだった。

「まぁ、日向から説明は受けていたからな。」

「…それにしてもたくさんの種族と仲良しだなんて、すごいわよね〜。」

カンナと言う先生と、ネオンという先生がお互いに私をじっと見つめてくる。


「…あっ!ナナカ!」

私はその後ろにいたナナカを見つけて声を上げた。

「…うっ。他のみんなの前だと恥ずかしいわね。」

ナナカがそんな事を言いながら近づいてくる。

「…一応、みんなも納得してくれたし、このことは後で絡斗に言っておくわね。」

「うん。1階も全部終わった?」

「終わったよ。…あ、先生。」

何かを思いついたのか、ナナカがカンナに話しかける。


「どうしたんだ?」

「他の、エルたちも皆に紹介しませんか?ここにいる人たちは皆仲間だよって。」

「…そうだな。そうした方が、今後日向の役に立つかもだしな。」


どうやら、他の皆のことも生徒たちに紹介することになったみたい。

「それじゃあ、1階に行こー!」

私は先導して、1階に向かっていった。


これで、人族の在り方も変わっていくかもしれない。

…ラクトの思い描いた未来に。

もう少し3章は続きますが、若干のキリの良い話となったので、少しの間投稿が遅くなります。

どうかこれからもよろしくお願いします。

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