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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第三十二話 出会ってしまう生徒たち

それは、突然の出来事だった。


「…ぐぁっ…!!?」

目の前の刀を寸前で横にかわし、アルカナの横腹に渾身の一撃を打ち込もうとした瞬間、突然死角から背中を刀で斬りつけられたのだ。

私の放った一撃は、斬られた衝撃で横に逸れてしまい、アルカナにはほんの少しかする形で触れただけ。

大きく吹き飛ばすことは無く、一歩、後ろに下げただけだった。

代わりに、私は突然の衝撃で反応ができず、そのままの勢いで前に倒れていってしまう。


「…今のは…」

「この二本目の刀、「自立・陽動刀」の力。」

そう言い、頭上から落ちてくる二本目の刀を片方の手でキャッチした。

「この刀は、魔力を流し込めば、流し込まれた魔力を消費し終わるまで自在に操れる。手から離れていても。」

「…っ。」

また厄介な刀だ。この二つの刀を掻い潜ってアルカナに攻撃を入れるのは至難の技だろう。


「…!!」

突如目の前に現れたアルカナが刀を振りかざしている。

反応が遅れ、右肩にその刃が僅かに掠ってしまう。

「…『異能』!」

「…ッ!」

瞬時に反撃に移る。『異能』を行使し目の前に魔法を生み出し、アルカナをのみ込んだ。


「…今の感じ…」

自分の、融合した後の『異能』の感覚を何か掴めた気がする。


「…今のは危なかった。」

アルカナが、土煙を掻き分けて立ち上がる。どうやら、今の魔法は直撃したみたい。

「…それでも目立った外傷は無しね…。」

あの至近距離の魔法をまともに受けて尚、余裕のある立ち振る舞いからアルカナの強さが改めてよく分かる。


「…ふっ!」

再びアルカナが攻めよってくる。

「…っ!!」

『異能』の発動が間に合い、今度はしっかりとアルカナの動きを見ることができ、攻撃を何とか避けることができた。

そして、ある事に気づいた。

「すでに刀が一本だけ…まさか!?」

そう思った瞬間、『異能』のおかげで背後の死角から飛んでくる二本目の刀の存在に気づくことができ、それをかわすことができた。


「避けられたか。」

接近してくる前に、予め刀を自立させていたということ。それだけ多くの魔力を流しているにもかかわらず、あれだけの強さ。

「…本当に厄介ね。」『強すぎる。』

私も竜佳も同じ意見だ。だけど負ける訳にはいかない。

アルカナが二本の刀を手に持ち、構えを取る。

「…っ!来る!」

私はいつでも反撃に出られるように、『異能』を発動。



「……ふぅ。奥義!《双乱舞(そうらんぶ)千年桜(せんねんざくら)》!」



…アルカナが姿勢を落とし、真っ直ぐ接近ーーー……、


「…ッ!?がぁぁ……!?」


そう思った瞬間には、幾千にも斬られた後だった。

アルカナが斬りこんだ姿勢から、立った状態に戻るのとほぼ同時に、私の体から血飛沫と花びらが四方八方に飛び散り、私はそのまま地面に倒れ伏した。







「…っ…ぁ……。」

あまりの衝撃に、まるで記憶が飛んだかのように今倒れている理由が分からなかった。

「……っ。」

重すぎる衝撃と深すぎる傷を負った結果、融合魔法秘儀の効果が解除され、私と竜佳が元に戻った。


「しばらく眠っていてもらう。」

アルカナが少しずつ近づいてくる。だが、体が思うように動かない。

「…さすがだ。思った通り、奥義を受けても死ぬことはなかった。」

アルカナが賞賛の言葉を私たちに贈る。


「…ッ!」

アルカナが二本の刀を逆手に持ち、私と竜佳の腹を狙い定めて刀を振り下ろした。



「…竜那!竜佳!」



「…っ!」

アルカナの二本の刀を防ぐように、目の前に一人の少女が大きな盾を持って現れる。

「…ぁ…七…香。」

目の前には、七香がアルカナと対峙していた。

「…君は、アギ様と戦っていた…」

アルカナが七香を見て、そう言葉を発する。


「アギなら死んだよ。フレイヤさんが倒した。」

それを聞き、私は七香がアギと戦っていた方向に顔を向ける。

そこには、アギの姿はなかった。

「…さっきの精霊魔法か。」

アルカナが淡々と七香の言葉を受けて、結論を導いている。

「これ以上やっても意味が無いんじゃない?」

七香がアルカナを説得しようとする。

「確かにその通りだ。指示を出したアギ様が死んだのなら、その指示を続ける意味は無い。」

アルカナがそう言い、七香から離れ後ろへと下がった。


「…見逃して貰えるなら、今は退くとする。」

「そうしてもらえると助かるね。…次は逃さない。」

アルカナが二本の刀を鞘にしまう。

「…私は退く。だが、知能の低い他の配下は残るかもしれない。頑張って倒すことだ。」

それだけを言い残し、アルカナはこの場を去っていった。







「…2人とも大丈夫っ!?」

七香がそばに寄ってくる。

「…何とか…だけど、竜佳が…」

私は何とか残りの力で、体を起こした。だが、竜佳がさっきから反応が無い。

「…くっ。」

七香も険しい表情をしている。この場にいる2人とも治癒魔法は使えない。《レベレント》も竜佳と2人でなければ使うことが出来ない。



「…ナナカさん!」


振り向けば、メルリアさんとシェードがこちらへ向かってきていた。

「メルリア!配下たちは倒したの?」

「1階の敵は倒したぞ〜!」

シェードがそう言ってくる。

「私が2人を治癒します。…カナデさんは?」

メルリアが私と竜佳を治癒しながら、七香に問いかけをしていた。


「恐らく、端っこで体力を回復しているんじゃ…」

そう言って七香は周りを見る。私も同じように見るが、カナデの姿は見当たらない。

「2階以上には行っていないはず。一応、上を見に行ってきます!」

「分かりました。」

七香がそう言って、階段を上って行った。






〜〜〜〜〜






「な、なんだよここ。」

相田君が周りを見てそう声を零す。

僕たちは2階と3階の階段付近を担当していたが、大きな衝撃と共に地面が崩れ落ちてしまい、恐らく1階に落ちてきたのだろうと思う。

…さっき襲ってきた魔族たちは僕と相田君で何とか倒すことは出来た。そのおかげで哀川さんと綿田さんが怪我をしないで済んでくれてほっとしている。


「もしかして、行っちゃダメって言われてた1階にいるのかな?」

哀川さんが呟く。

「…そうかもしれないな。とりあえず上を目指すか。」

相田君が先頭を歩き、その後に続いて僕たちも歩き出した。




しばらく歩くと、目の前に人たちがいた。

「…あ、大河(たいが)じゃねえか!」

目の前にいた人の中から1人が声を上げて近づいてくる。

「!!涼悟(りょうご)じゃないか。」

声をかけてきたのは、相田君の親友で同じように戦闘慣れしている緋黒(ひぐろ)君だった。


「涼悟の班もここに落ちたのか?」

「ああ、ついさっきな。早く上へ戻らないと、他の皆が心配するかもしれねえ。」

緋黒君の班は、2階の端を担当していたようで、僕たちと同じときに落ちてきたらしい。

緋黒君の他には、風野さん、佐伯(さえき)さん、田口(たぐち)君、羽柴(はしば)君がいた。

佐伯さんは、クラスの中でもトップの実力を持っている。

…実際は、絡斗君たちに劣るだろうけど、それでも強いのは確かだ。この状況でも、女性にも関わらず落ち着いている。


「とりあえず、階段を探しませんか?」

女子たちが固まっている中、佐伯さんがそう言葉をかけてきた。

「…でも、下手に移動するのも危険なんじゃ…」

相田君がそう返す。確かに相田君の言う通りでもある。

だが、女子の姿を見てみると怯えていた。

「…そうだよ!真白(ましろ)さんが居てくれるから何とかなるけど…早く皆と合流したいよ!」

真白さん…佐伯さん以外の女子が首を縦に振って頷いている。


「…僕としても、早く合流した方がいいと思う。」

僕もそう皆に伝える。

「…園崎って戦えるのか?」

と、田口君が聞いてくる。田口君もクラストップの実力を持っている。クラス内実力者で、御影姉妹に続いて3位の成績だ。

「…そ、それなりには。」

「…僕たちを助けてくれたし、雄二は強いから問題ないよ。」

相田君がフォローしてくれる。


「…(こう)、とりあえず合流するために移動しても良いんじゃね?最悪戦えばいいだろ。」

「…めんどくせえから戦いたくねぇんだよ。まぁ、皆行くならついてくよ。」

そんなこんなで、2階まで移動し皆と合流することに決め、早速行動を開始した。






そして、しばらく歩くと2階から流れてきたのだろうか、魔族が僅かに残っていた。

次々と佐伯さんと田口君が倒し、僕たちの出番はなかった。

「…1階担当してるやつ誰だよ。魔族多くねえか?」

「光、あんま騒ぐなよ。そもそも1階とかって実力の強い魔族が攻めてきてんだから配下の方は後回しなんだろ。」

そんな感じで、スムーズに進んでいた時だった。


ーーードゴォォン。


「…っ!?」

突如目の前の壁が壊され、一人の魔族がやってきた。

「…なんだよ。《エアストーム》!」

田口君が魔族に向かって魔法を放った。

「…ゴォォ。ッ!!」

「…え、ぐっ!?」

だが、その魔族は全く効いた気配がなく反撃として田口君が正面から殴られる。

「「…っ!!」」

皆驚いて、田口君が倒れるまで動くことすらできなかった。


「…魔法が、効かない?」

佐伯さんが今の一瞬で、敵の特性を見抜いた。

「…しかもこれ…魔族じゃなくて、「魔物」だっ!?」

「で、でも、魔法が効かない魔物だなんて聞いたことがないよ…」

皆がみんな魔物から離れるように後ろへ下がっていく。

…実力者の田口君も佐伯さんも、魔法が効かない相手となると一気に戦力が落ちる。


「…っ。」

魔物が一歩ずつ近づいてくる。

「ゆ、雄二!戦えるかっ!?」

「…ご、ごめん。『異能』が上手く出せない…っ。」

怯えてるからなのか、それともまだ不完全だからか、こんなときに『異能』が使えないなんて。


「…だ、誰か『異能』使えるやついねえのかよ!?」

「まだ上手く扱えねえよ!俺ら生徒がまだ『異能』を扱えるわけねえだろ。永代ならまだしも…俺たちは覚えたてだろうが!」

田口君と羽柴君が言い争いを始めてしまう。その間にも、謎の魔物がゆったりと近づいてくる。


…それにしても、まだ生徒が『異能』を扱えるわけない…か。永代なら…絡斗君も、愛条さんも永代じゃないのにすでに『異能』を扱っている。

絡斗君は最近まで隠していたけれど。

2人の過去が気になるね……


「く、来るっ!?」

羽柴君が叫ぶと同時、魔物が腕を大きく振りかぶり僕たち目掛けて打ち下ろしてくるーーー、


「…やあっ!!」


「…っ!?」

その腕を横から殴る少女の姿が。僕たちよりも歳下に見えるその少女の拳は、魔物を軽々と横へ吹き飛ばした。



「……え。人…じゃ、ない?」


「……っ!?嘘…」

その少女が風野さんの呟きに著しく反応し、こちらを見て驚いた。

だが、驚いているのは決して少女だけでなく僕たちも同じだった。




「獣人族……?」



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