第三十話 教師の実力
ーーー自分の力は自分が一番良く知っている。
今回の作戦会議で、僕はクラスメイトたちと同じように2階と3階を死守することになっている。
もちろん、今ではクラスのレベルが低いとは思わない。
クラスの皆は凄まじい速度で成長している。自分もしっかりとついていかないと。
「…魔族が攻めてきた。それぞれ、班で行動するように。決して単独行動はするな。」
今、クラスメイトたちは絡斗君たちを除いて24人だ。5人で一つの班を作るように言われた
「…私が2階を見る。そして、南先生が3階担当だ。もちろん先生たちも万能ではないからな、全員を一度に守ることは出来ない。お互いに助け合って、絶対に死ぬことのないようにしてくれ。」
そう幸崎先生が言うと、それぞれクラスメイトたちも持ち場へと移動していく。
僕は2階と3階の間の階段付近を担当する班になった。
ちなみに同じ班の仲間は、哀川さん、相田君、綿田さんだ。
綿田さんは、これまでを見てると少し戦闘には不慣れな部分があるようだ。
逆に相田君はそこそこ戦闘慣れはしているみたく心強い。
本来、5チーム中1チームは待機と言われていたが、2階から3階部分の階段を見るということになった。
「よろしくね、皆。」
すでに、それぞれか持ち場に着いた所で、相田君が場を仕切った。
「僕も大して強いわけじゃないけど…でも皆と力を合わせれば乗り越えられるよ。」
そう言って、皆の心を落ち着かせている。
もちろん、僕もその言葉でだいぶ落ち着きが増した。
「相田君と同じで心強いよ。頼りにしてるよ。」
「もちろん!雄二君もよろしくね。」
そうして僕たちが落ち着いているところに、
「敵が来たぞっ!!」
幸崎先生の叫び声と、壁がぶち破られる音が同時に響いたのだ。
「来たみたいだ!」
相田君がそう叫ぶ。瞬間、僕たちはいつ敵が接近してきてもいいように身構える。
「……ひぃッ!?」
そんな中、階段の一番下に居た綿田さんが悲鳴を上げた。
僕たちは急いで一番下に降りて綿田さんに駆け寄る。
「綿田ちゃん!大丈…っ!?」
大丈夫?と、声をかけようとした哀川さんが2階周辺を見て絶句する。
「な…なんだこれ。」
相田君も周りを見て驚きを隠せない。なぜなら、そこにはたくさんの魔族が攻め込んで来ていたのだから。
「…こんなやつらと戦うのか。」
僕たちがこうして止まっている間にも、2階、3階で他のクラスメイトたちはいきなりの戦闘を開始している。
「…っ!来たよっ!」
僕たちに気づいた数人の魔族がこちらに向かって攻めてくる。
「…っ!?」
相田君は、構えを取るも直接、魔族と相見えるのは2回目で、まだ勇気が持てないようだった。
綿田さんは腰が抜けており、戦闘はできなそうだ。哀川さんはその綿田さんを守る姿勢になっている。
「…!『異能』、「滅刻」!」
僕の体からは、黒いオーラが立ち込める。それを見て、相田君たちは再び驚いていた。
「死ねぇぇぇぇ!!」
魔族の1人が勢い良く襲い来る。その後ろに続いて、数人の魔族も距離を詰めてきた。
「…「空滅」!」
右手を横に薙ぎ払うと、手から溢れ出るオーラが距離を消し、そのまま襲い来る魔族の首を切り飛ばした。
「…!!?」
後続の魔族たちはその光景を目にし、一度手前で歩みを止めた。
「…思ったよりやるじゃねえか。」
魔族の1人がそう感想を零した。
「…雄二君…」
「…相田君。僕たちなら勝てるよ。自信を持とう。」
「…ぁ。…そ、そうだな。…よしっ!ここでカッコイイとこ見せないとね!」
相田君も、手の震えが治まったのか、魔族たちと戦う勇気を持った。
「…必ず、僕たちが哀川さんと綿田さんを守ってみせる!」
ーーー私は、教師として生徒たちを守らなくてはいけない。もちろん、全員を見ることは不可能だ。
…それに、ここまで強力な敵がいれば尚更だ。
「…園崎君、頼んだよ。」
唯一、教師の目が届かない場所にいる1チーム、その中で一番強いであろう園崎のことを思っていた。
「…ふふっ。あなた強そうね?」
目の前に立つ、殺気がダダ漏れな女性と対峙する。
「…あなた、支配者?」
「ええそうよ。私は、『礼賛者』ゾミア・ディールットよ。」
ゾミアと、そう名乗った女性は右手には黒く細長い剣を手にしている。
「…他の小さな人たちを守らなくていいの?」
「…あいつらは負けない。それよりも、一番厄介なお前の相手を私がしなくてはいけないな。」
「ふふっ。…ならば、先にあなたを殺るまでね。」
ゾミアは臨戦態勢に入る。すると、手に持つ剣から炎が溢れ出した。
「…この剣…「死滅剣ゾルガ」の錆にしてあげる。」
「…私も、本気を出さなくてはいけないようだな。」
学校の教師となって、本気を出す機会はだいぶ減った。
だが、今年…正確には日向の影響だろうか…何か風向きが変わった気がするな。
「この先を見届けるためにも、死ぬ訳にはいかないな。」
「…死んでもらうっ!」
ゾミアが一気に距離を詰めてくる。
「…《アクアシュート》!」
水属性の魔法弾をゾミア目掛けて撃ち放つ。だが、全て避けられてしまい反撃を許してしまう。それを、ぎりぎりでかわしつつ、再び攻撃を繰り出す。
…暫くの攻防戦。拮抗した状態の中で先に攻撃を受けたのは私だった。
一瞬の隙を突かれ、細剣の一撃を右肩に受けてしまう。
「…ちっ。」
「…ふっ。『異能』、「鎖血」!!」
「…っ!」
ゾミアの『異能』が発動した瞬間、右肩から流れ出る血がゾミアに向かって伸びていき、やがて、結晶化してゾミアがその鎖状となった血を捕まえた。
「…ふふふっ。これが私の『異能』よ。私に傷つけられた傷口から溢れる血は、鎖状に変化させて思いのまま操れるのよ。」
「ちっ…。」
してやられたって感じだね。
「さあさあ。これで逃げられないわよ?それに、離れれば離れるほど血が引き抜かれていくわ。」
中々にきつい状況…だが、
「…生徒たちの手前、簡単にやられる訳には行かないっ!」
「…さぁ、あんたの『異能』見せてみなっ!」
ゾミアは血の鎖を思い切り引き、私を自分の元へと引き込んでくる。
…私の『異能』としては、その行動は悪手だった。
「…『異能』、「禁呪」!」
「…ッ!?」
私が『異能』を発動した瞬間、ゾミアの体が四方に吹き飛びながら爆発したのだ。
その姿は、敵ながら無惨な姿だった。…四肢は吹き飛び、体の半身も吹き飛んでおり顔がぎりぎり繋がっている状態だった。
「…ぁ…なん…だ……今の…『異能』は……。」
この状態でも声を発することができるのには正直驚いている。
「私の『異能』の力だ。…直近に受けた痛み、それからその相手までの距離にそれぞれ比例して威力が高まる。」
私は敵にそう説明すると、その頭に向かって魔法を放つ。
「…さすがにこれで終わりだな。」
支配者とはいえ、この『異能』の力の方が上だったようだ。
「…皆は。」
私が周りを見ると、それぞれ魔族たちと戦う生徒たちの姿が見える。
「…《アクアシュート》!」
「…《ブラスト》!!」
次々と魔法を放ち、魔族たちを押している。
「…心配はいらないな。」
私は、そんな生徒の姿をしっかりと目に焼き付けておいた。
……あと、どれだけ生きていられるか分からないから。
「…ちょっと、やばいんだけど!?」
…私は先生として、皆の手本にならなくちゃいけない。
でも今は本当にやばい。
「…ちょっと魔族多すぎません!?」
生徒たちの方には魔族は数体しか攻めていないのに対し、私の元には20近くの魔族が寄ってくる。
生徒たちの負担が減るのは幸いだけれども。
「もしかして、私が美しすぎて…うぎゃぁ!?」
馬鹿なことを言うなとばかりに、魔族が次々攻撃を繰り出してくる。
「もう〜!『異能』、「影人」!」
自分の複製体を5体生み出した。
「…「命令」!近くの魔族を魔法で撃退!」
私がそう言うと、同時に5体とも反応し、近くの魔族に魔法を放っていく。
「…《ルクステリア》!!」
近くに迫ってきていた数体の魔族を一度に体ごと吹き飛ばした。
「…これでだいぶマシになったかな…」
見た感じ、3階にいる魔族のほとんどはやられ、残りも生徒たちが次々と倒していた。
「…最悪は回避できて良かったわ。」
3階にいる生徒は誰一人と死んでいなく、皆生き残ってくれたことに安堵した。




