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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第二十七話 本当の正しさ

俺は先程のガウエルの発言を聞いて、驚きを隠せない。

何故なら…ガウエルはこの、フレイヤさんと『セカイ』を襲わせた黒幕の神が…俺に優しく接してくれていたオーディンさんだったなんて。


「それは、本当なんだな?」

俺は再びガウエルに問う。

「ああ、本当さ。…この状況で嘘をつくほど俺も落ちぶれちゃいねえ。」

だがガウエルから否定の言葉は入らない。

「…そうか。」

俺はこれから…マキナの事まで教えてくれた神を倒しに行かなきゃいけないのか。




「…絡斗。こっちも全部終わったわ。」

と、背後から声をかけられ振り向くと、そこには麗たちがこっちを向いてたっていた。

そして、その後ろには倒れた状態で山のように積み重なっているのはガウエルの配下たちだ。

その近くには、サーガも倒れていた。


「1人で倒したのか。」

「当たり前よ。手加減してないもの。…一応殺してはいないわ。」

と、麗がこっちに向かって歩いてくる。

「…エル、ありがとう。もう『異能』を解除しても大丈夫だ。」

「…本当にかい?」

「ああ。…ここから再戦してくるほど、馬鹿じゃないだろ?」

俺はガウエルにそう言う。

「…ああ。」

「ということだ。」

「分かった。…ふぅ。」

と、エルは『異能』を解除する。途端に、ガウエルからは魔力が溢れてくる。だが、もうやり合うつもりはないようだった。


「…それよりも、絡斗のそれ…何よ。」

麗が聞いてくる。後ろで、結乃たちも不思議がっていた。

「何って…『異能』だけど?」

「絡斗君の『異能』は初めて見るね。…気になるなあ。」

「…聞きたいなら結乃も『異能』を見せてくれ。」

「ぶぅ。ケチだなぁ。」

今は『異能』を見せることはあっても、『異能』について説明するつもりはない。

……それはいずれ、「完全」になったときに話すつもりだ。


「…それで、これからどうしますか?」

グリナさんがこの後のことについて聞いてくる。

「…館に戻る側と、黒幕の神を倒しに行く側で分かれよう。」

「…それにしても、黒幕がオーディンだったとは。」

エルも驚いている。

エルと結乃は、オーディンについて知っている存在だ。それだけ驚きも他の者よりも大きくなっている。


「…俺と結乃とマキナでオーディンの元へ向かう。」

俺が言うと、誰も異論はないようだ…

「えっ!?…あんた体力持たないっしょ。」

と思っていたが、麗が俺の提案に待ったをかけた。

「いや大丈夫だ。…それに、オーディンさんとは見知った仲だ。直接話が聞きたい。」

俺がそう言うと、麗は少し押し黙ってから、


「…許すの?」

「…っ。」

この質問は想定内だった。見知った仲だから、例えどれだけ悪いことをしても許せるのだろうか。

まるで、俺が結乃を許したことを知っているかのように。


「…話を聞く。内容次第では殺すつもりだ。」

「…そう。」

麗は納得はしなかったようだが、一度おさまってくれた。

…内容次第では許すと言っているようなものだった。

別に結乃を許したことが悪いことではないと思っている。

だが、それは何度も通用するのだろうか?…いや、通用しないだろう。それに結乃は同じクラスメイトだったのもあるかもしれない。

…今回限りにしたいものだ。


「…絡斗。無茶しないでよ?」

「分かってる。…だから、麗も皆のことよろしく頼むよ?」

「…わ、分かったわ。」

「…よし、じゃあグリナさんとエルも麗と一緒に館へ戻ってくれ。」

「分かった。」

「…こいつはどうするの?」

結乃がガウエルを見下ろして聞いてくる。

ガウエルは大木に背を預けたまま、その場に座り込んで動こうとしない。

…まるで死を悟ったかのように。


「こいつは…」

「近づくなっ!」

「っ!!」

ガウエルの今後をどうするかを言おうとしたとき、頭上から魔法が降り注いだ。

俺たちは何とかその魔法の雨をかわす。俺たちは意図的にガウエルとの距離を取らされた。そして、その間に一人の女性がガウエルの正面に立った。

「…くっ…ガウエル様だけは、殺させはしないっ!」

その女性はガウエルを庇うようにして、戦闘態勢に入っている。

「…動けるのか。」

他の配下よりかは多少は強いのだろう。

「…ガウエル様!早く、ここから立ち去りましょう!態勢を整えてまたやってくれば…」

その少女はガウエルにそう言い聞かせる。だが、ガウエルの反応は薄い。


「…もう良いんだ。俺は負けた。死ぬはずの運命を…わざわざ生かされるなんて屈辱でしかねぇ。」

「っ…!」

ガウエルはもう逃げる気力も残っていないみたいだ。


「…ガウエル。」

俺はそんな2人に近づいていく。

「…き、貴様っ!」

少女は怯えながらも俺にたいして、殺気を漂わせていた。

「…どうした。」

ガウエルは俺の行動に目を見開いた。

俺は、『異能』を解除したのだ。この状態では、ガウエルの方が強い。だからこそ、ガウエルは驚いたのだ。

まるで俺がとどめを刺さないと言っているようなものだからだ。だが、実際それは当たっている。

「…俺は別にお前を殺さない。お前は何も知らないからな。」

「どういうことだ?」

ガウエルは俺に耳を傾けた。

「…!メルル、やめろ。」

「!!ですがっ…!」

「良い。話を聞くんだ。」

メルルと、そう呼ばれた少女は俺に襲いかかろうとしたがガウエルに言われ、襲いかかることはなかった。

「…お前らがやろうとしていることはこの世界全てを崩壊させることになる。」

「…っ!?まさかそんなはずが…俺らはただこの世界を自分のモノにするために協力してるだけだ。」

やはり、アランの事など詳しいことは何も知らないか。

「いずれ、自分の『セカイ』すらも脅かされるぞ。…今後どうするかはお前の勝手だ。…次は必ず殺す。」

俺はそれだけを言って、ガウエルたちの傍から離れていく。


「……。」

「…麗の言いたいことはわかってる。だけど、俺はいずれこの世界に住む種族たちが、皆仲良くなれれば良いと思ってるんだ。今回は許してくれ。」

そのためにアランは何がなんでも許すことは無いが。

「…分かってるわ。…さて、早く行きましょ。」

「そうだな。」

エル、麗、グリナさんは転移魔法で、館へと戻って行った。


「それじゃあ、私たちも行くか。」

「そうだな。…マキナ、『ドラードセカイ』へ転移してくれないか?」

「分かった。」

「あ、あれ?オーディンって『シボラセカイ』じゃないん?」

「その前に、お前のアジトへ寄ってく。さすがに俺ら3人はきついだろうし。」

「あー、なるほどね。了解。」



そして、俺たち3人は神の住む『セカイ』へと転移していった。






〜〜〜〜〜






ーーー俺は生かされたのか。あの小僧の『異能』は今までに見た中で一番やばかった。しかも、見たところまだ完璧な『異能』じゃない。もし、完璧になったら一体どうなるのだろうか。

…人族に脅える日が来るとはな。

今この場には、俺たちだけが残っている。

このまま俺らが『核』を壊しに行くかもしれないとは思わなかったのだろうか?

…いや、あいつは…気づいていたんだ。

俺がこの後、『核』を壊しに行くことはしないということを。


「…メルル。」

「は、はいっ!」

「悪いな。…格好悪い所を見せた。」

「い、いえ!とんでもないです!…その、さっきの人が言ってたことは本当なんですか?」

…この世界を崩壊させる。いずれ、俺たちの住む『セカイ』すらも…か。

「…そいつはまだ分からねえ。だから、自分でその真意を確かめる。」

俺は立ち上がる。


「…もう誰の下にも付かねえ。俺は、本当に正しいことをするさ。…支配者も、やめる。」

俺がそう言うと、メルルは驚いた。

「…それでも、ついて来るか?」

「…もちろんですっ!私はこれからも、ガウエル様と一緒にいたいです!」

メルルは迷うことも無く、即答した。


「…そんじゃあ、一度戻るか。そいつら、死んでるやつはいるか?」

「…それが、誰一人殺されてないです。」

「……。」

俺たちが悪事をしていると知っていたからこそ、あいつらはやって来た。

それでも、殺しはしなかったのか。

「…そうか。サーガも含めてそいつら全部持っていけるか?」

「はいっ!」

俺がそう言うと、メルルは他の連中の近くへと歩いていく。


「…『異能』、「封印(ふういん)」!」

そう言うと、メルルの手には1つの箱が現れる。そして、その箱が開くと目の前にいたサーガ含む配下たちが一斉に取り込まれていった。

そして、箱の中に全てが入ると箱は閉じ、まるで封印したかのように箱に御札が付いた。


…メルルの『異能』は「封印(ふういん)」。本人が言うには、生物、無生物、他人、自分関係なしに、ありとあらゆる物を箱の中に入れることができるらしい。

箱の中に入っているものは、入った状態で固定されるため老いることも死ぬことも、傷を受けることもなくなるみたいだ。

また、その箱はメルル本人でしか開けることができず中から強引に外へ出るのもほぼ不可能に近いらしい。

入れる数、取り出す数に上限はなく、また、自分で自由に選ぶことができるという。


ただ、その発動条件がかなり厄介だと言っていたな。


「…ガウエル様!準備できました!」



「よし。一度、アジトへ戻って…神の『セカイ』へ行くぞ。」

これから俺がするべき事は決まった。

メルル

17歳。誕生日不明、血液型不明。『異能』は「封印(ふういん)」。

魔族で、『イクストセカイ』の支配者の一人、『帝の王』であるガウエル・ヴェインの配下の1人。

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