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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第二十話 『賢王』

ーーー館を出て、しばらく走ったあと森の中へと入っていた。


「この森の中に1つ、『核』があります!」

俺たちを案内しながらグリナさんは言う。

「…まだ破壊されたのが1つ目なら良いけどっ!」

俺はグリナさんの後を追ってそう思っている。

1つの『セカイ』に『核』は5つ存在する。それら全てが破壊されればその『セカイ』は消滅してしまう。

もう二度と、『セカイ』を消させはしない。


「ここです!」

そして、グリナさんが足を止めたため、俺たちも隣で足を止める。目の前には、


「…遺跡?」


まるで、遺跡のような地中に伸びているであろう建物が建っていた。


「この中ですか?」

俺はグリナさんに確認をとる。

「ええ。ただ、この中のどこにあるかまでは知らないけれども。」

「…どうする?二手に別れる?」

エルが聞いてくる。

「…そっちの方が動きやすいか?」

「だったら、ボクは竜那たちと行くとするよ。」

そう言って、エルは竜那と竜佳を見る。


「分かった。何かあれば連絡してくれ。」

「了解だ。」

そうして、俺と七香とグリナさん、エルと竜那と竜佳に別れて遺跡の中へと入っていった。






〜〜〜〜〜






「…こっちで合ってる?」

俺たちは入ってすぐにあった、左右の分かれ道を右へと進んだ。

「…合ってるんじゃね?」

「でも、進んでも進んでも何も無いよ?やっぱり、さっきのところ階段登った方がよかったって。」

右へと進んだすぐ後に、階段と奥へ続く廊下の2つに分かれたのだ。俺たちは階段には登らず、そのまま奥へと進んできた結果がこれだ。

「でも、地下の方にあると思うので、こっちの道があってると思うわよ。」


俺たちの言い合いを聞いていたグリナさんがそう言ってくる。

「とりあえずもう少し進もうぜ。行き止まりになったら、さっきの階段を登ればいいし。」

「…それもそうね。」

ここで何か言い合っても意味が無いと察したのか、何も言わずにどんどん先へ進んでいく。それはもう、進むしか頭にないかのように、


「…あんま先へ急ぐなよ?何があるか分からないんだし。」

「大丈夫よ。何かあったってーーーきゃっ!?」

言ったばかりに、横の壁が吹き飛ばされ何かの侵入が感じられた。

七香もいち早く気づき、後ろに下がっていたため直撃は免れた。


「…誰!?」

七香が声を上げると、煙の中から影が見える。

「っーー!?」

しかし、その影は人型では無かった。

「…まさか、魔物か!?」

そこにいたのは、まさしく「キメラ」とも言える魔物であった。






「…初めて見ました。」

グリナさんが魔物を見て、そう息をこぼした。

「大丈夫ですよ!」

七香がそう言い、一歩前へ行く。

「魔物は実戦済みなんで!」

そう言い、魔物に向かって魔法を放つ。

確かに七香の言う通り、一度魔物とは戦っている。しかも、その時の戦いで魔物はそれほどの力を有していないと認識している。だが、


「…何かおかしい。」


俺は、意味のわからない引っかかりを覚えていた。

この不思議な感覚は何か?そう考える前に、答えが導かれた。


「グァァァーーー!!」


その魔物は、唐突に背中から翼を生やし、口から炎を吹き出した。


「きゃっーー!?」

「っ!!《アイアンウォール》!」

俺は咄嗟に障壁を生み出し、魔物の吐く炎を受け止めた。

「ぐっ…!」

なんとか、炎を受けきることはできたが、こちらとしても万全の状態ではなかった。

「…グリナさん!大丈夫ですか!?」

俺のすぐ横で、衝撃で後ろに吹き飛ばされたグリナさんに声をかける。

「大丈夫よ!気を失ってるだけみたい!」

七香がグリナさんの様子を見て、俺の質問に答えた。

「ってか、これって魔物なの!?」

七香が驚きの表情を浮かべながら聞いてくる。


「わからない。だが、容姿からは魔物に似ている。」

俺はそんな、今や竜のような姿をした「キメラ」を見て判断する。

…確か、以前に本で「竜族」の祖先に「竜」と呼ばれるものが存在していたというのを見た気がする。


「…いや、ないな。」

「竜」は、「竜族」の祖先であり、今や存在しない生物(せいぶつ)だ。「竜族」の本来の姿を使用する、「竜化(りゅうか)」というのがあるみたいだがその可能性はほぼ無いだろう。


「…なんとか倒すしかないか!」

あの謎の(仮に魔物とする)魔物の裏に魔族が関係しているのかは分からないが、倒さないと危険な状態になってしまう。

「…《インフェルノ》!」

俺は躊躇なく、魔物に向かって魔法を放つ。

「グガァァ!」

だが、ダメージは通っているように見えない。

「くそっ!あいつも炎を放つから炎に耐性あったりするのか?」

俺は、再び障壁を生み出し、その後ろに隠れるようにして様子を伺う。

「…水属性か…」

いつも、俺はほとんどを火属性の魔法で済ませてきた。

もちろん、それしか使えないという訳ではない。一番扱うことができ、威力も強いからだ。

逆に、水属性の魔法は基本的に使わない。


何故ならーーー七香の過去に触れてしまうからだ。


いつも、七香には気にするなとは言われているが、俺が勝手に七香の前では使わないようにと決めつけてきたのだ。


「…絡斗。今はそんなこと気にしてる場合じゃないよ。」

七香が、俺を見据えてそう言ってきた。

確かにこの場面で気にする必要はないだろう。


「…ごめん。」

一応、俺は七香に一言謝りを入れてから魔法を行使する。


「…くらえ!《アクアバースト》!」







俺の放つ、水属性の魔法は砲撃のように、真っ直ぐ標的の魔物に向かって飛んでいく。しかも、使える魔法の中でもかなり強力な魔法だ。これで全く効き目なしならお手上げ状態になってしまう。


「グガァァァァーー!!!!」


今までより、更に大きな悲鳴を上げた。

壁越しに見てみると、明らかに弱っている。

「やっぱり!水が弱点か!」

「…よし!絡斗!そのまま倒しちゃってよ!」

七香もそんな鼓舞をしてきたので、もう少し力を出すことにする。

「もう一度だ!《アクアバースト》!」


「ギャァァァ!!!!」

抵抗とばかりに、炎を吐き出したが、こちらの水魔法には撃ち勝てずそのまま炎もろとも呑み込まれてしまう。


「…大丈夫か?」

音が止んだため、恐る恐る壁の向こう側を見る。すると、魔物らしきものが倒れ込んだまま動こうとしなかった。

「…ほぉ。大丈夫か。」

他に誰もいないのを確認し、壁を解除する。


「…ん。ここ、は…?」

と、丁度よくグリナさんが目を覚ました。

「ここは遺跡の中ですよ?」

「…あっ、そうだったわね。…魔物、倒してくれたのね。」

「はい!まぁ、絡斗がやったんですけどね。」

七香が状況説明をした。


「…ここの壁は、塞いでおくか。」

誰かが魔物を送り込んだのかも、たまたま魔物が入ってきたのかも分からないが、塞いでおいて損は無い。


「…よし、先へ進むか。」

途中、横槍は入ったものの引き返す選択肢はなく、奥へと進んで行ったのだ。







更に奥へ進んでくると、突き当たりとなり、地下へと繋がる階段があった。

「…この道が合ってるかもね。」

「そうだな。」

俺たちは、その階段を降りていった。

しばらく降りていくと、終わりが見えてくる。そして、


「…何かある。」


階段を降りた後、大きな広場のような空間になっており、その奥の方に、謎の球体が浮いていた。

その周りは、頑丈にいくつもの透明な壁が取り囲んである。

そして、その見た目には見覚えがある。


「…『核』で間違いないな。」


『レッドセカイ』で見た、『核』に比べてやや大きいが形がそっくりであった。

「…良かった。ここの『核』はまだ大丈夫そうですね。」

グリナさんが『核』を見て、息を吐いた。

「そうですね。ただ、これを守る方法か…」

「一度館に戻って、状況を幸崎先生に話すのも有りだね。」

七香がそう考えており、俺も似たようなことを考えていた。


「…ん〜。とりあえずは、ここの場所が見つかる前になんとか魔法で隠蔽しましょう。」

グリナさんがそう言い、早速行動に移そうとーーー、


「…誰に見つからないようにだ?」


「っ!!?」


ーーーした矢先に、背後から声をかけられ慌てて振り向く。

そこには、1人の…性別の分からない人物がいた。


「…誰だ?」

俺は冷静になるために、そう問いかけた。


「我か?我は、『賢王』アギ。…貴様らのおかげで『核』の位置を把握できた。」


そう答えた。…ちなみに、性別が分からないというのは体格や、顔が見えないといったものではない。むしろ、顔はよく見える。だが、男とも女とも表現できない。

何故なら、


「…ふふっ。あなたたちはもう用済みよ!さっさと失せなさい!我の邪魔は宜しくないわよ?」


口調が、男口調、女口調で不規則に変化しているのだ。体格も普通の一般的な肉付きをしている。髪も、肩に触れる程度の長さだ。


「…何こいつ。」

七香が若干引いている。

「とりあえず、最悪な状況ではあるな。」


ーーーそれもそのはず。「魔族」が狙っている『核』を目の前にして、『イクストセカイ』最後の支配者、『賢王』と鉢合わせてしまったのだから。

アギ

???歳。誕生日不明、血液型不明。『異能』は不明。

魔族で、『イクストセカイ』の支配者の一人、『賢王』。

また、男性と女性のハーフであり、性別が存在しない。

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