第十七話 親友
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……なんとか、この程度ならば使えるな。
やはりこの力はあまり使いたくない。雄二を説得させるために仕方なく使っているが、早めに終わらせないと。
ーーー雄二は躊躇うことなく、俺に距離を詰めてきた。
「…「空滅」!」
拳にオーラを溜め込み、それを突き出してくると拳が見えない空間へと消えていく。
…そして突然自分の顔の目の前から、雄二の拳が現れてきた。
「…そういう仕掛けか。」
俺はそれを躱し、一歩下がるのではなく雄二に近づく。
「…戦う気になってくれて嬉しいよ!」
それを待ち構えていたかのように、もう片方の手で目の前を斬るような動作をする。
「…「滅裂」!」
目の前に、どす黒いオーラの刃が飛んでくる。
「…はっ!!」
俺はそのオーラの刃を右手で掴む。瞬間、オーラは燃え上がり、灰のようになって消えてなくなった。
「…《インフェルノ》!」
俺はすかさず雄二に向かい、魔法を放つ。
「…くっ!!」
雄二はそれを防ぐために、体を『異能』のオーラで覆い隠した。
雄二は直撃を受けたが、『異能』によりほとんどダメージは通っていない。
「…どうした?」
俺は反撃をしてこない雄二に疑問を抱く。
「…何でもないさ…「滅裂」!!」
そう言い、今度は両手を交互に振りかざし、オーラの刃を複数飛ばしてくる。
「…なるほど。」
オーラの刃の勢いがさきほどより弱まっている気がする。
ーーーこれは、雄二の体力が無くなってきていると考えて間違いないだろう。
「…!!」
俺は手を体の前に出し、飛んでくる刃を受け止めるかのように手のひらを向ける。
「…また謎の力か。…だが、何度も通じないよ!」
雄二は魔法の刃を盾にするかのように、後ろに身を隠しながら突撃してくる。
ーーーだが、それはよくない行動だ。
なぜなら、
「…《ヘルシオン》」
「なっーーー!!?」
俺は、雄二が言う謎の力ではなく最上級魔法を放ったからだ。
「ぐっはぁぁああーー!?」
自ら近づいていたため、不意の魔法を躱すことも防ぐこともできず、まともにくらってしまう。
「がぁぁぁああーーー!」
雄二は《ヘルシオン》に体を焼かれながら、激しく後方へ吹き飛ばされた。
「…少しやりすぎたか?」
俺はそう心配をしつつ、自身に纏っている『力』を解除して、早足に雄二の方へと向かう。
少し歩くと、吹き飛ばされた雄二が木にぶつかり止まっていた。
「…だいぶ飛んだな。」
俺はそう言いつつ、かなり瀕死の状態である雄二に『ある薬』を使用した。
すると、雄二の出血は治まり、傷も癒えていき目を覚ました。
「…なんだ、これは…?」
自分の体を木に預けながら雄二は言った。
「…ネオポーションだ。」
「えっ…なんでそんなものを僕なんかに…」
ネオポーションと言うのは、傷を癒す回復アイテム「ポーション」の一つだ。その効力によって、下からポーション、レア、ハイ、ネオとなっており、最高級のポーションとなる。
「…雄二、少しは頭を冷やしたか?」
「……」
「意地張って無理しなくていい。」
「無理だなんて…一つも…」
「どうせ、一度抜けると言ったから、戻ることはできないと思っているんだろ?」
「……」
雄二は口を閉ざす。まるで図星であるかのようだ。
「…強くなりたいなら、俺たちと一緒に進んでも良いんじゃないのか?」
「……」
「また、置いていかれるとか言うのか?違うな。…本当は、間に合わないと思ってるんだろ?」
「…っ!」
図星だな。
「…早く、家族を守れるくらい強くなりたいんだろ?だが、俺たちと居たらいつ強くなれるか分からない。」
「…絡斗君の…言う通りだ。」
「一度、お前の父親に面と向かって言ったらどうだ。」
「何をだい?」
「それは自分で決めることだ。…お前が今思っていることを口にしろ。」
「……」
「そこまで憎いのなら、一度面と向かって罵声の一つくらい言えなきゃ口だけになるぞ。」
「…口だけ?」
「お前は強くなったら見返すつもりでいるんだろう。だが、その強くなったらはいつだ?」
「……」
再び雄二は黙っている。だが、少し考えた後に俺の顔を見上げてくる。
「…お前は自分が強いとは一言も言っていないな?…つまり、いくら周りから強くなったと言われてもお前の中では弱いということ。」
「それは…」
「いつになってもお前は家族を守れない。」
「っ…!」
「…今、お前がすべきことは決まっているんだ。」
「…一体…何だい?」
「クラスに戻り、俺たちと一緒に強くなること。俺や七香の力が劣っているとは思わないだろ?」
「……」
「それともう一つ。…お前の、家での価値を見出すんだ。」
「家での価値?」
「お前の父親は優奈さんと同じで、『WFPWA』に所属しているんだろ?」
「ああ…」
「家に戻るのは少ないんじゃないのか?」
「…来週の金曜日に一度戻ってくるとは言ってたね。」
「なら猶予はある。家族で話し合いをするんだな。お前の父親のことを皆がどう思っているか、その本心を聞くんだ。」
「本心か…」
「それを聞いて、お前がすべきことを考えるんだ。」
「……ずいぶんと難しいことを言うね。」
「それくらいできなきゃ、強くなどなれない。…それに、俺たちを忘れてないか?」
「え?」
「家族関係のことだ。部外者が関わるのは良くない。…だが、それでも助けられる部分はある。もっと俺たちを頼っても良いんだぞ?」
「ッーー!!」
それを聞き、何かを思い出したかのように雄二は目を見開いた。
〜〜〜〜〜
ーーー僕は昔から負けず嫌いだった。
例え細かな事でも負けることは嫌いだった。…いや、正確に言うならば、負けるのは怖かった。
だから、友達などというのは一人もできたことがない。
いや、要らないと思っていたのかも知れない。
いつも父親は僕を怒鳴りつける。些細なミスなどで僕は毎日のように心身を削られていった。
…僕だけじゃない。母親も、姉さんも毎日のように罵声と暴力の日々。
それなのに、僕の前では平気な顔をして、挙句の果てには僕を慰めてくる。
唯一の救いは、妹は暴力を振るわれなかったことだ。
…そんな毎日は嫌だった。
だから、僕は強くなって…家族を守れるようになる。
そのために、この学校を選んだんだ。
〜〜〜〜〜
「…なるほど。親友ってのは…良い関係なんだね。」
雄二はそう言いながら、瞳に涙を浮かべていた。
「…絡斗君を信じて良いのかい?」
「もちろんだ。」
俺はそんな雄二に手を差し伸べる。
「…絡斗君は僕を信じれるのかい?」
「もちろんだ。お前は親友だからな。」
そして、俺と雄二は互いに手を取りあった。
「…大丈夫か?お前を止めるとはいえ少し力を出しすぎたかも。」
「ポーションのおかげで大丈夫だよ。…やっぱりまだ力は隠してるんだね。」
「今は使うことができないってのが正しいがな。」
「これからどうする?」
「早く館へ戻ろう。」
俺たちがこうしている間に、『帝の王』と交戦しているクラスがどうなったか心配だ。
「…流石に転移魔法は覚えてないからな。地道に戻るか。」
「そうだね。」
俺と雄二は館の方角へ走ろうとしたときーーー…
「待ちな!」
「っ!?」
「何だっ!?」
突如として、目の前に一人の女性が立ちはだかった。
容姿を見るに、魔族だった。
「…一応、妖精の住む『セカイ』なのにな。妖精より魔族の方が多くないか?」
「…気のせいだと良いけどね…」
「あんたら、館から出ていった人間でしょ?…悪いけど、ガウエル様から命じられているの。ここで、仕留めるようにって。」
そう言い放ち、魔族の女は強い殺気を出している。
「…ガウエル?」
「館を襲ってきた主犯の『帝の王』ってやつだ。」
「なるほどね…」
さっきまで館側に居た魔族とは一つ頭抜けて強いオーラを発している。
「お前は…誰だ?」
「…私はサーガ・ヴェインよ。」
「ヴェイン…?」
それは確か…
「ええ。ガウエル様は私の美しき夫よ。」
ガウエルの妻か。
「さあ、時間をかけたくはないからね。さっさと死になさい!」
サーガは長い槍を構える。
ーーーこれはやばいな。俺は、さっきの『力』である程度体力を消耗している。さらには、魔力も心もとない。
雄二に至っては、ネオポーションで癒したとはいえ、疲労はなくなってはいないだろう。
また、さっきの様子を見れば…
「雄二は、まだ『異能』を使いこなせていないな?」
「バレてたか。…長時間は持たないね。」
短時間で決着がつけばいいが…それも、
「こっちが勝つっていう条件か。」
「…厳しいね。」
「…さあ、そろそろ行くわよっ!」
そう言い、サーガは槍の先端をこちらに向けてくる。
「…《ディザストスピア》!!」
オーラとなって、俺たちに向かって放たれた。
「くっ…やるしかないか!」
「…そうだね!」
俺と雄二は戦うべく、飛んでくる武技に対して防御をしようとしたところに……
「…《オーロラプロテクト》!!」
「「なっ…!?」」
「…!?」
ーーー上から声がした途端、目の前には俺たちとサーガを隔てるように七色の薄い光の壁が現れた。
そして、サーガの武技は、謎の魔法により閉ざされて消滅した。
「…!お前…」
降りてきた人物に心当たりがある。それは、
「…加我…」
「…全く。仕方ないから助けに来たわ。」
そう言って、加我は俺たちを守るように、サーガの前に立ちはだかった。
サーガ・ヴェイン
???歳。誕生日不明、血液型不明。『異能』は不明。
魔族で、『イクストセカイ』の支配者の一人、『帝の王』であるガウエル・ヴェインを夫に持つ。




