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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第十六話 敵

ーーーここに来てから、雄二とは2度目の戦いとなる。

「…絡斗君。僕は、どうすれば良かったんだ?」

「……」

俺はすぐに答えることができなかった。

…雄二の異変に気づいたのはつい先日だ。

それまで、俺に何も伝えてくれなかった。


それを今更聞いてくるなんて卑怯だと思う。

だが、


「…行くよっ!《エアストーム》!」

…それでも俺の大切な親友で、優奈さんに任された大事な人なんだ。


「…戻ってきてくれ。雄二。」

だからこそ、考えを改めさせて、以前の雄二に戻す。

それが俺のやるべき事だ。


「…《アイアンウォール》!」







…雄二を冷静にするためにはどうすれば良いか。

まず、冷静さが欠けることとなった原因を聞くしかないな。


とりあえず、倒さない程度に応戦しながら話を聞こう。

「…やはり、絡斗君は僕とは戦う気がないんだね?」

俺に向かって、魔法を連発しながら言ってくる。

「お前を『敵』と認識してないからな。」

「今更そんな言葉はやめてくれ。僕は君を裏切った。」

だが、俺の話には耳を傾けるつもりはないらしい。


「…これならどうだ!《サンドカッター》!」

これは、土と風の複合魔法か。


「…《デグリア》!」

俺は雄二の魔法に、闇属性の魔法で対抗する。

2つの魔法は衝突した途端に、大きな音を立てて爆発四散した。


「くっ…」

見ると、雄二は何か焦っているようだった。

「…何をそんなに焦っているんだ?」

俺が問いかけると、雄二は目を見開いた。


「…僕が、焦っているように見えるのかい?」

「…ああ。」

俺が答えると、一度目を瞑ってからこちらに向き直った。

そして、

「…そうさ。僕は焦っている。皆に置いていかれないか心配さ。」

「…置いていかれるも何も、お前はクラスの中でも上位じゃ…」


「…絡斗君は上位なのかい?」

「っ…!」

その言葉には怒りか、憎しみか、またはそれ以外の感情が含まれているのを肌で感じ取った。


「…絡斗君みたいに他にも力を隠している人がいるんじゃないかい?…愛条さんとかさ。」


ーーーある意味では冷静だな。


「…僕は強くなくちゃいけない。そうじゃなきゃ…皆が傷つくんだ!」

雄二は叫びながら接近してくる。

「…《エアロ・ウェアー》!!」

両手に風属性を付与し、肉弾戦を仕掛けてくる。

雄二が悩んでいること…それは一度だけ、優奈さんから聞いたことがあった。

雄二の父親がかなり厳しくて…そして、


家庭内で暴力を振るうということ。


「…僕は強くなって、母さんたちを守らなくちゃいけないっ!」

雄二の勢いが増し、躱し続けるのが困難になってきた。

「…《ランド・ウェアー》!」

「くっ…!!」

俺は雄二の攻撃を付与魔法で迎え撃つ。


…雄二の家は5人家族だ。そして、暴力が振るわれるのは雄二の母親と優奈さんが多いらしい。

そして、そんな最低な父親でさえも、


「あいつは…最低なクズ野郎なのに、それでも有名な能力者なんだ…今の僕じゃ勝てないんだ…!」

雄二の父親は、『WFPWA(ワフプァー)』に所属しており、仮組織『VENUS(ヴィーナス)』で活動していると優奈さんが言っていた。

…確かに、ある程度強くなければ所属することはできないからな。


「…だからって、『ブラックリスト』に入る必要はない!」

「だったら!…どうすれば良いんだ!?」

雄二は強い意志でそう答えてくる。

俺が戦う手を止めると、雄二も突っ込んでは来ずに少し離れて止まった。

…少しは冷静になっただろうか?


「…俺たちと一緒に強くなれば良いんじゃないか?」

「だから何度も言っているだろう!?それじゃあ僕は置いてかれる…」

「だからどうしたんだ?」

「ッーーー!?」

俺の言葉を聞き、雄二は刺激されたことに怒りを覚えている。

「…俺たちに置いていかれるだと?例え置いていかれたとしても関係ないんじゃないのか?」

「関係ない…だと?」

「雄二は、父親から家族を守れるくらいに…そして父親を倒せるくらいに強くなりたいんだろ?」

「……」

俺の核心を突く言葉に、雄二は返事をせずに黙ってこちらに顔を向けている。


「…俺たちクラスメイトと比べている時点で強くはなれねえよ。」

「…何…?」

雄二は意味が分からないとばかりに疑問を言う。

「…確かにクラスの中で俺を含めて実力を隠している者はいる。そうは言っても俺が知ってる中では3人だけだ。」

「その3人は…絡斗君と愛条さんと黒瀬さんかい?」

「そうだ。だが、他のクラスメイトはどうだ?」

「どうって言うのは?」


「お前が置いていかれると思うか?」

「……」

「雄二の成長はかなり早い。置いていかれるどころか、他よりも先へ進めるんじゃないか?」


「…本当にそうかい?」

「一度くらいは自分の力を信じてみろ。」

「信じるも何も…力がないから欲しいんだって言ってるじゃないか。」

雄二は少しイラつき始めたか、構えを取る。


「…『異能』を試してみろ。」

「…絡斗君にかい?」

「力の話をするなら、全力を出してから言うんだな。」

「…『異能』を使えば強くなれると?」

「多少は強くなるだろう。」


「…人に向かって使うのは初めてだけど?」

「逆にその力をお前の父親に使えば良かったんじゃないのか?」

「自分の力が信じられなかったからね。…だから、絡斗君との戦いで自分の力を試すよ!」

そして、雄二は一歩後ろに下がり、


「…『異能』、「滅刻(めっこく)」!!」

そう言うと、一気に体から黒いオーラが溢れ出した。






…思っていたよりも強いパワーだな。

「…この力は姉さんも見たことがない。」

そう言いながら、オーラが少しずつ控えめになっていく。

「…絡斗君は、まさかこの力でも倒せないのかな?」

「俺を倒せればお前の父親を超えたことになるのか?」

「最低ラインにはなるだろうね。…この力で絡斗君を倒せなかったら僕としても傷つくけどね。」

そう言って、瞬時に俺の懐に飛び込んできた。


「いくよっ!」

そして、右手を下から振り上げてくる。

「…っ!」

俺はそれを躱すために後ろに身を引くが、

「…ぐはぁぁっ!!?」

ーーー躱すことができずにその拳に打ち上げられた。


「どうしたんだい?」

雄二は真っ直ぐにこちら見据えてくる。

…確かに拳自体は躱したはずだ。

「これが『異能』か?」

「そうなんだろうね。…どうやら、近距離において距離を消すことができるみたいだ。」

「…距離を消す?」


「どんどん試すよ!絡斗君なら…死なないよね?」

そして、再び見た瞬間に横に現れていた。

「くっ!?」

「『異能』…「空滅(くうめつ)」!」

雄二が拳を突き出してくる。

それを、一歩後ろへ飛び、ギリギリで躱したーーーはずだった。

「がっ!!?」

またしてもその拳は確実に腹を抉っていた。

俺は大きく後方へ吹き飛ばされ、木にぶつかった。


「…そう言えば、絡斗君も『異能』を使ったことないよね?」

倒れている俺に雄二はゆっくりと近づいてくる。

「…もしかして、それも手加減しているということかい?」

「…くっ…」

「『異能』を使った僕ですら、全力で戦う必要はないということか…」


このままでは、確かにきついな。『異能』を使用している雄二は動きは単調だが、その一つ一つの威力が桁違いだ。

ーーーおまけにその力のせいでほぼ必中だ。

意外とこっちが不利な状況だ。

いや、話の流れ的には俺が負けた方が雄二もクラスに残るんじゃないか?


……いや、それではダメだ。雄二が、変にクラスを出ようとしている。まずは、その心を折らなくては。


「まずは、戦意を喪失させないとな…」


少し力を出すことにしよう。







「…良いね、この『異能』。これなら絡斗君の言うように、あいつにも勝てるかもしれないね。」

そう言いながら雄二は拳を振りかざしてくる。

そして、それは再び『異能』の力で躱し切れずに当たるーーー…

「っ!!?」

ことはなく、俺は雄二の背後に避けていた。


「…まさかまだ本気を出してなかったのか…」

雄二はそう言いながら振り向いてくる。


「…雄二には悪いが、負ける訳にはいかない。」

「負けた方が僕も考え直すんじゃない?」

雄二もその考えに至ったようだ。


「わざと負けるのは嫌いだからな。…お前を倒す。」

「そうしたら、強くなるためにクラスを出ていくよ?」

「それもさせない。お前には負けてもらって、それでいてクラスに残ってもらう。」

「……」

雄二は返答の代わりに攻撃を仕掛けてきた。


「…「滅裂(めつれつ)」!」

雄二は手を剣に見立てて、俺に振りかざしてきた。

瞬間、手に集まったオーラが消え、目の前に現れた。


「……どういうことだ…」

雄二は俺の体を見て驚きを露わにする。


雄二の『異能』により、確かに俺の腹は抉られて血が吹き出た。


…だが、今雄二の目の前には傷一つついていない俺が見えている。

ーーーそして、俺の体は紅く光輝き、体の一部からオーラのような炎が溢れていた。

「…何が起きているんだ…?」

「…悪いが詳しくは言えない。想像に任せるよ。」

「…もしかしてそれが君の『異能』かい?」

俺は答えない。


「…僕だって負けられない。今の君にどれくらい通じるか試すのにいい機会だっ!」

雄二は臆することなく、俺に向かって突っ込んでくる。




「…必ず、雄二の暴走を止めてみせる。」

俺は雄二を『敵』と見なして、返り討ちにするべく構えをとった。

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