第十一話 『礼賛者』
ーーー竜佳は《ダウジング》の術式を見て、そして覚えたと呆気なく答えた。
「…え?覚えたのか?」
俺は確認のために竜佳に聞き返す。
「うん、覚えた。たぶん、使えるはず。」
と、竜佳は答える。
「今のって…『異能』?」
七香は今の竜佳を見てそう質問をする。
「うん。今まで隠しててごめん。」
「い、いや。謝らなくていいよ。『異能』は戦いの要だからな。」
むしろ『異能』を惜しげも無く使用するカナデや七香の方がおかしいのだ。
「私の『異能』は「神眼」。見たものを自分のものに書き換えて使える。あと、想像で組み合わせもできる。」
と、竜佳が説明してくれた。
「それじゃあ早速試してみる。」
そう言い、竜佳は《ダウジング》を発動した。
「どのくらい先まで見えます?」
グリナさんが確認を取る。
「うーん…500メートル先くらいかな。」
「初めて使う魔法でそこまで見えれば充分ですよ〜。」
目を閉じながら竜佳は集中して周りを探している。
それから数分後、
「なんか、集団を追いかけている集団がある。」
「人数は?」
「…追われてるのが5人で、追ってるのが…4人かな。」
「追われてるのが5人ならおそらくフレイヤさんたちだろう。」
確か、フレイヤさん、エル、カナデ、フラン、マキナで行動してるはずだからな。
「よし、その方角へ向かおう。」
俺たちは、竜佳の案内のもと、反応のある方へ向かっていった。
案内のする方は今まで行っていない方角だった。
どんどんと森の中を進んでいくと、わずかながら店の数が増えてきた。
「…市場のような場所だな。」
そんなことを思いながら進んでいくと、竜佳が足を止めた。
「この辺のはず…」
「よし、少し探してみるか。」
それから、かれこれ2時間程周辺を探したがそれらしき人物は見つからなかった。
「見つかりませんね。もう一度使って確認してみましょう?」
グリナさんからの申し出を、しかし竜佳は首を横に振っていた。
「…無理。魔力が足りない。」
「…あら、それは仕方ありませんね。初の魔法ですから。」
慣れていない魔法は無駄に魔力を消費したりしてしまうからな。
「うーん。どうしましょうか。また、手分けして探すしか…」
グリナさんが言い終わる前に口を挟む。
「いや、グリナさんの言うようにもう一度使ってみましょう。」
「…いや、絡斗聞いてないの?竜佳はもう使えないのよ?私たちだって使えないんだし。」
竜那が少し当たり強く言ってくる。
「俺が使う。」
俺はそう言い、魔力をこめる。
「…え?絡斗使えるの!?」
竜那がそう反応し、竜佳たちが驚いている。
「いや、ずっと魔法の術式見てたからな。流石の俺でも0からの習得は3時間弱はかかるからな。」
それを聞いてもまだ納得がいかないようだ。
「ラクトさんは本当にすごいですね…」
何故かグリナさんまで若干驚いているが。
そんなことはお構いなく魔法を行使する。
「《ダウジング》」
俺を中心に円形に範囲が広がっていく。
「…ちなみに、絡斗はどのくらいまで見れるの?」
竜那が聞いてくる。
「…たぶん、3キロが限界かな。」
「…3キロ!?」
再び全員が驚く。
「…いた。おそらくこれだろう。ここからまだ遠くない位置だ。急ごう!」
目的の人物たちを見つけ、俺たちは急いで移動を開始した。
そして、しばらく目的の方へ走っていくと、
「ーー!!あれか!?」
目の前に黒い服装をしている者が4人いる。
「念の為隠蔽しよう。《レオネル》」
結乃が視認魔法で俺たちの魔力を隠した。
「その先には、フレイヤさんたちがいるかもね。」
「とりあえず見失わないように一定の距離を保って追いかけよう。」
もう少し森の奥の方へ行ってから仕掛けるとするか。
しばらく経つとだいぶ奥の方までやってきた。
「あ、止まりましたね!」
グリナさんが俺たちに向かって言う。
見ると、前にいる4人が立ち止まっていたので俺たちも距離を置いて止まり、茂みの中に身を隠した。
「くっ…」
「追いかけっこはもう終わりにしましょう?」
黒服の1人がそう声を発し、フードを外した。
中からは頭の左右から横に伸びた長い角が姿を現した。
どこからどう見ても魔族であった。
「…仕方ない!皆さん、下がってください。」
追われてる側からも声がする。フレイヤさんの声だ。
「大丈夫です!私たちも戦います!」
「そうです!大丈夫です!」
「…2人とも…」
「ボクも援護はするさ。」
「私も手伝おう。」
これは戦いになるだろうな。
「絡斗、私たちも加勢するわよね?」
「ああ。不意打ちしよう。竜那と竜佳は融合魔法の準備をしてくれ。」
「分かったわ。」
「うん。」
俺は黒服たちの様子を確認しながら、竜那と竜佳に指示を出した。
「…仕方ない。これも契約だしね。殺るかっ!」
フードを取っていた魔族が構えをとると、他3人も戦闘準備に入る。
「くっ…!」
それに対して追われていたフレイヤさんたちが構えをとる。
…絶好のタイミングだ。
「よしっ!竜那と竜佳、準備は良いか?」
「おっけーよ。」
そして、魔族側がフレイヤさんたちに襲いかかる瞬間を見計らい、
「放て!」
「っーー!!?」
魔族たちが俺の声に後ろを振り返った。
「…あ!」
「えっ…!?」
フレイヤさんたちも驚きこちらを見てきた。
「融合魔法…《ルクス・デフォン》!!」
そして、黒服の魔族向かって2人は特大を撃ち放った。
黒服目掛けて放たれる魔法よりも先に、俺はフレイヤさんたちの方へ向かっていた。
「念の為にな!《アイアンウォール》!」
俺は飛び火がかからないよう、念の為に防御魔法を張る。
「くっ!このっ!!」
魔族の1人はそれを真っ向から受け止めようとする。
「ぐぁぁ!!」
「うわぁぁ!!?」
だが、他の3人はそれに巻き込まれると大きく後方へ吹き飛ばされた。
地面には魔法の道筋の跡が残っている。
そこには1人の魔族だけが立っていた。
「…あいつだけ別格か。」
他3人は今の魔法ですでにリタイアと言ったところか。
「ラクトさん!来てくれたのですね!」
フレイヤさんが俺に言ってくる。
「はい。…なんとか間に合いましたね。」
「ラクトがいれば勝ったね!」
ずいぶんとカナデは気が早い。
「…まさか追っ手がいるとは。私も衰えたねえ。」
立っている魔族がそんな事を言う。
「…お前は…」
「私は、『礼賛者』ゾミア・ディールットよ。」
「…こいつが、『礼賛者』か…」
フレイヤさんとその兄を襲ったと言われていた人物だ。
「…それじゃあ他の支配者は…」
あの3人は『礼賛者』ゾミアの配下と言ったところだろう。
「他の支配者なんて知らないわ。…協力はしても仲良く一緒にいる訳ないじゃない。」
と、ゾミアは答える。
「それはそうと、折角のチャンスを邪魔されちゃあ黙っていないわ!」
再びゾミアは戦闘態勢に入る。
「人数差なんて気にしないわっ!」
そして、一気にこちらに距離を詰めてきた。
「《クリアシールド》!」
俺は目の前に防壁を展開する。だが、
「《ランド・ウェアー》!」
ゾミアは付与魔法により、それを殴って破壊した。
「くらえっーー!《エアストーム》!」
背後から七香が魔法を放つ。
「…ふっ!」
《ランド・ウェアー》を纏った両手で《エアストーム》を真っ向から受け止める。
「…今よ!」
「行きますっ!」
そこへ、カナデとフランが突っ込んでいく。
「…!!いや、待てっ!?」
ーーーこんな人数不利を気にしないと発言した意図は、人数差を無くせるだけの力があるということだ。
たとえ、隙ができようとも迂闊に近づいたら……
「《アースバスター》!」
突っ込んできたカナデ、フラン目掛けて地面から光が放出した。
「きゃぁぁぁああーー!!?」
「わぁぁあああーー!!?」
「カナデさんっ、フランさんっ!!?」
「くっ!?フレイヤさんは2人を守ってください!」
大きく飛ばされた2人の元へフレイヤさんは駆け寄る。
「…ラクト、どうする?」
エルが近くに来る。
「…戦ってみて無理そうなら一度引いた方が賢明だな。」
「そうだな。ボクもそう思うよ。」
そのためには隙を作らないといけない。
俺は《スピーカ》により、皆に伝える。
『フレイヤさんとカナデとフランは待機で。フレイヤさんは2人を守っておいてください。』
『了解です。』
『竜那と竜佳はまだ撃てそうか?』
融合魔法は魔力消費が多いからな。
『あと1発くらいなら大きいの叩き込めるわ。』
『とっておきがある。』
『分かった。ならばそれの準備をしてくれ。』
『分かったわ。』
『それから、エルと七香は俺と一緒にあいつの気を引く。』
『分かった。』
『了解。』
できれば俺たち3人で倒し切りたいがそれは不可能だろう。なんとかこっちに意識を持ってこさせたい。
『そのために、俺たちは絶対に負けられないな。』
『そうだな。』
『…マキナと結乃はグリナさんと待機で。』
『フレイヤたちと合流はした方がいいだろうか?』
『1箇所に集まると危ないから、なるべく別で待機してくれ。』
『分かった。』
各々のやるべき事を話し終え、『スピーカ』を解除する。
「ふふっ。なんとしても今終わらせるわっ!」
ゾミアが俺に向かって突っ込んできた。
「よし、皆ーーー行くぞっ!」
ゾミア・ディールット
???歳。誕生日不明、血液型はA型。『異能』は不明。
魔族で、『イクストセカイ』の支配者の一人、『礼賛者』。血気の盛んな女性で、男性よりも肝が座っている。




