第九話 交流の恩恵
ーーー僅かな期間で大幅に強くなっている。僕は、それを実感している。
そして、強くなっていると分かっている時が一番楽しく、嬉しい時間となる。
ーーーだが、この世はそんなに甘くはないようだ。
折角仲良くなれて……初めてできた親友は僕よりもはるかに強い人物だった。
僕は、そんな人物に対して様々な複雑な感情を抱いている。
僕が強くなりたかった理由の1つは、その親友を超えたいからだ。だが、今のままではいけない。
…親友と同じことをしても追いつけない。
だから、僕は他のクラスメイトの元で努力した。
そして、今…僕の親友にどのくらい近づけたのか、後どのくらい足りないのかを知りたくて、早朝に勝負を申し込んだんだ。
……家族以外でできた初めての大切な人を……憎みたくないために。
〜〜〜〜〜
「《サントネアフォース》!!」
「おお…」
これは、「複合魔法」だな。土と風だ。
「《クリアシールド》」
俺は再び防御魔法を使う。
「それは囮だよ!《サントネアフォース》!」
背後に回り、再び魔法を放つ。この威力の魔法を連発するとは、思っている以上に強くなっている。
「…《ランド・ウェアー》!」
流石に、背後に防御魔法を張る時間はないため、付与魔法により、土属性を全身に付与する。
激しい音がするが、《ランド・ウェアー》により、雄二の攻撃魔法を打ち消す。
「くっ…やるね。…《サンドランス》!」
地面から土でできた棘が突き出して、俺を襲う。
「《ピリア》!」
自分に補助魔法を使い、《サンドランス》を次々と避けていく。
「……」
雄二は再び魔法を行使するのかと思ったが、一度魔法の連発を止めた。
「…やっぱり絡斗君は強いね。…ここまで遊ばれるだなんて。」
「…遊ぶ?何言ってんだよ。別に遊んでなんか…」
「絡斗君は僕を気遣って反撃してこないのかな?そんな遠慮はいらないよ。実戦経験をしたいんだ。ちゃんと反撃してほしい。」
雄二が俺の目を見て言う。
「…これから、交流会があるんだぞ?」
「遠慮はいらないっ!…絡斗君の力が見たいんだ!」
雄二が叫ぶ。いつもは感情的にならないのだが、一体どうしたんだろうか。
「…やられても、治癒魔法で治せばいいんだ。」
「お前が治癒魔法を使えるほど、体力が残るとは限らないぞ?」
本当に実戦経験を積みたいのなら、自分の思ったようにならないことを想定しなくてはいけない。
「絡斗君がしてくれればいいよ。」
「…!!」
そう言えば、雄二には言っていなかっただろうか。
「…悪いが雄二、俺は今、治癒魔法が使えない。」
それを聞くと驚いた顔をする。
「…え?…絡斗君でも使えない魔法があるのか。」
「それとは違くてな、呪いによって治癒魔法が使えなくされてるんだ。」
今はまだ詳しく説明しなくてもいいだろう。
「……それでも、構わないよ。」
「…え?」
「君の本気がみたい。今の…自分とどのくらい差があるのか!」
雄二が突っ込んでくる。
もしかして…正気じゃないのか?
「…くっ。」
「…《エアストーム》!!」
雄二が連続して3発、《エアストーム》を放つ。
「こうなったら…!」
俺は、それを完璧に避けて、魔法を溜める。
雄二は、実力の差が気になると言っていた。
ならば、当てずとも、自分の力を証明すればいい。
「…《ヘルシオン》!」
火属性の最上級の魔法の1つ…《ヘルシオン》を雄二目掛けて放つ。
「…!?…くっ。《クリアシールド》!」
雄二は咄嗟に、目の前に防御魔法を張る。
だが、《ヘルシオン》が《クリアシールド》に直撃した瞬間…
「なっ…!?」
まるで《クリアシールド》などなかったかのように、その威力は弱まることなく雄二に襲いかかる。
「うっ…!?」
だが、《ヘルシオン》は雄二の真横を通り過ぎ、奥の木々に衝突した。瞬間、周囲が赤く燃え盛った。
その様子を見て、雄二は声を失っている。
「…今のが一応力を出した魔法だ。雄二はそれをくらってもいいって言ったよな?」
「……」
「今のをくらったらどうなってた?雄二でも分かるだろ。」
今の雄二では、あれをくらっていては即死だろう。
「少し冷静になれよ。確かに、力は必要だけど焦る必要はない。皆と一緒に成長してもいいだろ。…それが嫌なら裏で少しだけ自主特訓をすればいい。」
今ので雄二が正気に戻ってくれれば良いのだが。
「…僕は…」
雄二は何かを言いかけて、だが何も言わずにこの場を走り去っていった。
「おい…!?」
声をかけるも反応はなかった。
「…何もなければ良いんだけどな…」
そして、朝9時となりクラス皆が館のロビーに集合している。
「全員いるか?」
委員長がクラスの人数確認をしている。
雄二はいつものように、掌也と一緒にいる。
「…雄二のこと見張った方がいい?」
「いや、そこまではしなくていいだろう。何かあれば言ってくるだろうし。」
朝のことについて、七香には一通り説明しておいた。
「それでは、これから交流会を始める。その前に…」
後ろから一人の女性が歩いてくる。
グリナさんだ。
「皆さん、この交流会において、本来は私たち『アルフセカイ』の代表である妖精姫が挨拶しなくてはいけないのですが、諸事情により顔を出せません。」
…その事を何故グリナさんが知っているのだろう。
考えられることは一つだな。
「…ですので、私グリナが代理をするよう頼まれたので挨拶をさせていただきます。」
と、そう言いこれからの流れなどを大まかに説明してくれた。
「それでは、交流会を行う場所へ移動しましょう。」
グリナさんを先頭に、クラス全員が館を出ていった。
「…グリナさん、少し良いですか?」
俺はグリナさんが歩く真横に位置取りした。
他の皆はしっかりとついてきてはいるが、それぞれ会話をしていたり、周りを見ていたりなどで少し距離がある。聞かれる心配はないだろう。
「あなたが、ラクトさんですよね?」
先に言い出してきたのはグリナさんの方だった。
「…俺の事を知っているんですね。」
「はい。あなたの思うように、私はフレイヤさんの側近なのです。」
つまり、フレイヤさんが言っていた信頼できる人なのだろう。
「…今どんな状況ですか?あと、フレイヤさんの居場所は…」
これで聞くことができればフレイヤさんたちと合流ができる。
「…それが、今は良いとは言えない状況みたいです。」
「それは…」
「今日の朝、私の元に一通の手紙が届きました。…フレイヤさんの使役する精霊からです。」
と前置きをして、俺に話を続けてくれた。
「…ここに着いて、しばらくは問題がなかったらしいのですが今、とある者に追われているらしくて…」
「追われてる!?それは助けないとやばいのでは…」
「そうなのですが、手紙によるとなんとか逃げ回れているらしくて…それで、逃げるために《ブラインド》を使用しながら逃げているので申し訳ないのですが自力で見つけてほしいです、とのことなのです。」
《ブラインド》…確か、魔法を付与した者は他者から認識されなくなる魔法だったはず。光と闇と無属性の3つの「複合」のため、使用者はかなり少ない。
「…だから、《神呼》もダメだったのか?」
《神呼》は契約した神の、魔力の流れを掴んで呼び出す神業だ。《ブラインド》により、隠されていたのなら使えなかった理由となる。
「…ラクトさん、神と契約してるだなんてすごいですね。」
「まあ、色々と成り行きでなったものですから…」
「この交流会の後、お時間を頂けますか?」
「もちろん。…他の仲間にも言っておきます。」
俺たちはそんな会話をして、交流会が行われる場所へとたどり着いた。
「…それでは、こちらにいる方がはるばる遠くからやって来て頂いた人族の皆さんです!」
グリナさんが、交流するべく集まった他の妖精族に俺たちのことを紹介している。
「まずは、お互いを良く知るために、いろんな方と交流をしましょう!」
その言葉を区切りに、妖精族の皆が、俺たちに近づいてくる。
皆、少しだけ驚いているが、誰か一人が仲良く話し合うと…
「なんだ、お前いい人じゃねえか!」
「あなたも面白い方ですね。」
「魔法はね、こうやるんだよ。」
「わぁ…ありがとうございます、」
などと、わいわいと交流を始めた。
「…ラクトさん、良いですか?」
グリナさんが飲み物を両手に持って近づいてくる。片方を俺に差し出してくれた。
「ありがとうございます。」
俺はそれを受け取り、近くにあった椅子に腰掛けた。
「…ラクトさんは私たちを恐れたりしないですよね。」
「恐れる必要がないですし。なんなら、フレイヤさんと会っていますから。」
俺は基本的にアランの思想とは真逆だ。自分勝手な行動で種族間に隔たりができてしまった。
特に俺たち人族は弱い生き物のため、他種族に対する嫌悪は大きい。
…そうなってしまったこの世界を直したいと思ってはいる。だが、
「俺一人でできるわけがない。…だから、俺は他種族と手を取り合いたいんですよ。」
「良いですね。」
「俺は昔から、違う種族の者と接触する機会が多かったのも、理由の1つかもしれません。」
「…どうして、昔から他種族と関係を?」
「……」
俺はその一言で思考が止まった。
「…あれ?どうしたんですか、ラクトさん。」
「い、いえ…なんでなのか、自分でも分からなくて。」
「まあ、成り行きでってのもありますしね。」
「…そうですね。」
今はそれで落ち着いたが…果たして、どうして昔からカナデたちと知り合っていたのだろう。
覚えてはいないが、俺の父親が関係しているような…
そんなことを思いながら、皆の交流会を眺めていた。
グリナ
年齢は不明、誕生日不明、血液型不明。『異能』は不明。エルフ属「妖精族」であり、妖精姫であるフレイヤの側近。




