第一話 奇跡的なタイミング
ーーーあれから2日が経ち、月曜日に。
今日は祝日となっているので、学校は休みだ。
「やっほ〜。」
「いらっしゃーい。」
「絡斗は?」
「中にいるよ。」
誰かが来たらしく、カナデが対応している。
「よお。」
「お、七香か。」
「おはよう、七香ちゃん。」
「お、竜那と竜佳はもういたのか。」
「うん。」
俺の家に、竜那、竜佳に加え七香がやってきた。
特別作戦会議とかそういうのではないが、皆暇だということで俺の家に来たのだ。
「今日は何する?」
七香が聞いてくる。が、
「お前たちが勝手に集まってきたんだろ。特にやることはねえよ。」
「じゃあゲームしましょ。絡斗、ゲームだして。」
「switcherやろ。」
竜那と竜佳がそう言ってくる。
「自分で取り出してくれ。そこのテレビの下にあるから。」
「よぉーし、負けませんよ!」
カナデとフランもやる気に満ち溢れている。
「賑やかなのはいい事だね。」
「エルはやらないのか?」
「うん。見てる方が楽しそうだからね。」
エルはそう言って、皆をがゲームしている所へ行き、その様子を見ているのだった。
少し経ったあと、事は起きた。
「ーーーラクトさんいますか!?」
バタンッ!と、大きな音を立てて、扉が開け放たれた。
「えっ、誰!?」
竜那たちも驚いて、ゲームをしていた手を止めてしまう。
「…ラクトさん!」
そんな切羽詰まった顔をして家に入ってきたのは、
「…フレイヤさん?」
『アルフセカイ』に戻っていたフレイヤさんだった。
「どうしたんですか?そんなに急いで。」
「今すぐって訳じゃないけど、新しい情報を手に入れたの。」
「なるほど。丁度皆もいるし、タイミング最高ですね。」
…奇跡的なタイミングだな。
そう思いつつ、皆にゲームを中断するように言った。
「その情報ってのは…」
「私の信頼できる人から聞いたものよ。」
と、前置きをしてからフレイヤさんが話し出す。
「…実は、私の兄と私自身を襲撃してきたのは、魔族の可能性が高いみたいなの。」
「魔族…?過激派ですか?」
「おそらくそうだと思います。」
…ここ『ヒュームセカイ』と言い、『アルフセカイ』と言いどうやら何かを企んでいる様子だな。
「魔族が何か企んでるわけ?」
「おそらくな。…竜那は魔族とは…」
「会ったことなんてあるわけないじゃない。」
「だよな。…フレイヤさん、魔族が襲撃したって何人くらいいたんですか?」
「えっとね…3人らしいよ。それと、神もいたんだって。」
「…!!」
魔族3人と神…それと同じ状況がつい先日あったばかりだ。
「マキナ…心当たりは?」
「ない…おそらく違う魔族か、あるいは私に接触する前の事かもしれない。」
「接触って?」
「エルの中にいた、アランが私に、魔族3人を接触させてきた。」
「…そういえば魔族は姿を現してなかったな。」
あのとき、俺たちは魔族の姿を見ていない。
「アランが魔族に…撤退の指示をしていた。」
「つまり、マキナじゃなく、アランと手を組んでいたのか。」
「アランが、その魔族3人を支配者とまとめて呼んでいた。」
支配者…
「それって、『マデレセカイ』の3人の支配者と同じ立場のやつか?」
「おそらくそう。」
「何だか意味が分かんないんだけど…『マデレセカイ』って何よ?」
竜那が意味が分からないと文句を言う。
「このまえ、魔族の一人が、高校を襲撃してきたって言っただろ?その魔族が住んでる『セカイ』で、基本的に友好的な立ち位置から穏便世界とも言われてるんだ。」
「な、なるほど…」
「今話してる魔族は?」
「今話してるのは過激世界と言われている『イクストセカイ』の魔族だろうな。」
「私の兄と私を襲った魔族の一人が、自分の事を『礼賛者』と名乗っていたそうです。」
「『礼賛者』?」
『イクストセカイ』の魔族だというなら、あまり詳しく知らないな。
「その『礼賛者』と言う人物は、支配者の一人だね。」
と、エルがそう言ってくる。
「それは本当か?」
「ああ。『イクストセカイ』の支配者も3人と聞いている。フレイヤを襲った残りの2人も支配者で間違いないだろう。」
フレイヤさんの『セカイ』と俺たちの住む『セカイ』を襲撃した3人の魔族…それが共通している可能性が限りなく高いな。…マキナとは別の、フレイヤさんを襲った神が気になるところだ。
「アランは有り得ない…となると、また違う神か。」
「どうして神がそういうのに加担しているの?」
七香が聞いてくるが俺も気になっている。
「神の中で、アランの復活を企んでいる者がいる?」
「そうなると厄介だね。」
だが…一つ、どうしても気になることがある。
「フレイヤさんを襲ったのと俺らを襲った魔族が同じと仮定しよう。そして、その魔族が支配者だという3人なら…どうして手を組んでいるんだ?」
「…確かに。」
支配者とは、誰が頂点に立てるか争いをしていると本で見たことがある。
なぜ敵であるはずの支配者同士が共闘を?
「考えられるのは、神が説得し、一時共闘するように促した…とかでしょうか?」
フレイヤさんが自分の考えを言う。
「おそらくそうですね。その可能性が高そうです。」
中々厄介になりそうだ。…しばらく、落ち着いた生活はできそうにないな。
「…もしかしたら、アランは再び『アルフセカイ』に向かうかもしれないな。」
「フレイヤさんを倒し損ねたから?」
「それもあるだろう。…あとは、自分の力を核に残してくる可能性だ。」
「それって、結乃ちゃんが言ってた…」
「ああ。」
もしそうなれば、今の俺達には、その核を破壊するしか方法が無いと言う。もし、すべての核に残されてしまったら…
「アランにとって、今更『セカイ』の隔たりは関係ないだろう…私たちを支配するために、容赦なく自ら『セカイ』を滅ぼしかねない。…どっちに転んでもアランの手助けになってしまうと言うことだね。」
エルが皆に分かりやすく、まとめて説明してくれる。
…実際、エルの言う通りだ。
「完璧な防ぎ方は、そもそも核に力を付与させないことだな。」
「そうなったら、次は『アルフセカイ』?」
七香がそう言うが、
「俺たちには、学校がある。…長居はできないからなぁ…」
どうしたものかと思うと、
「それだったら私たちに任せて!」
カナデがそう胸を張って言ってくる。その隣にフランもやってくる。
「絶対に危険なことはしません。それは約束します!」
「お前ら…」
「それならば、私も行くとしよう。」
エルもそう言ってくる。
「…本当に危険なことはしないでくれよ?」
「分かってるよ!」
「私も行こう。」
と、マキナが言う。
「良いのか?」
「もちろん。…ラクトに危険が起これば、《神呼》をすればいい。」
昨日一日、ずっと練習をしたおかげで、一日に3回までなら使えるようになった。
「そうだな。…ということで、フレイヤさん。危険かもしれないですが…」
と、全てを言い切る前に、
「ありがとうございます。…もちろん、危なくなれば撤退します。私と兄の問題解決は私たちに任せてください。」
決意を込めて、フレイヤさんが強く言ったのだ。
…次の日。
「ふぁ〜。おは…って、そうだった。」
俺はいつも通り起きて、学校へ行く支度を済ませ、リビングに向かうがそこには誰もいなかった。
「そういや、皆出かけているんだった。」
俺の家に居候しているミルは、先日レナさんたちの所に残り、手がかり探しの続きをしている。
他のエル、カナデ、フラン、フレイヤさんは昨日の夜、事件の真相を暴くために『アルフセカイ』へと向かっていったのだ。
…つまり、家に一人となるのは久しぶりとなる。
「…かれこれ、もう1ヶ月は経っているのか。」
時間の流れは早いんだなと、改めて実感した。
今日は超食が用意されていないので、適当に買い置きしていたパンを食べて、学校へ向かう。
「…最初は鬱陶しいと思ってたんだけどな。…なんだかんだ皆がいる方が楽しいな。」
俺はそんな感想を抱きながら、学校までの道のりをゆったりと歩いている。
「今日は皆に大切な話がある。」
朝のホームルームの時間。幸崎先生が、そう第一声を発したのだ。
「…急だが、今日は午後を放課とする。」
それを聞き、クラスの皆は嬉しそうに声を上げる。
「落ち着けお前たち。…実は、明日から特別授業を開始してもらう。」
その言葉で、急に驚きの声を上げる。
すごい急な話だな。
「実は、先日、校長の元に、「妖精族」からの接触があってな。…わだかまりを解消しないか?という名目で、交流をすることとなった。」
「妖精族」…!!?七香と結乃、竜那と竜佳が一瞬こちらを見てくる。
4人とも気になる所があるようだ。
「それを校長が了承してな。だが、生徒全員という訳にも行かず、成績の良い、お前たち…この「魔法科」Aクラスが選ばれたのだ。」
再び、周りから驚きの声が上がった。
「…交流と言うのは何ですか?」
1人の女生徒か質問する。
「簡単に言えば、その「妖精族」の住む『セカイ』を訪れ、おもてなしを受けて、お互いに仲良い関係を築きたいとのことだ。」
その声に、他種族ということから、嫌だという声、「妖精族」は美人が多いんだよなぁ〜という明らか男生徒の声など、様々な声が飛び交っている。
「今日の午後、準備を済ませて明日から出発する。金曜日までの3日間となる。」
皆納得したのか、先生の話をしっかりと聞いているな。
「それで…問題となる目的地だが、「妖精族」の中でもエルフの一部が住んでいる『セカイ』となる。」
エルフ……
また4人がこちらを見てくる。
クラスの男子は、「おお〜!!当たりじゃねえか!!」「やった〜!美人が多いやん!」などと、やけにはしゃいでいる。
「その『セカイ』とは…『アルフセカイ』だ。」
午前中の授業が終わり、皆明日の準備のために急いで帰っている。
教室に残ったのは、俺と七香、結乃、竜那と竜佳の5人だ。
「…言いたいことは分かってる。」
俺は皆の代わりにその思っている言葉を吐き出した。
「…本当に奇跡的なタイミングだな。」




