第二十四話 許された者
ーーー地下深く、そう、日が届かず真っ暗闇の中を一人、悠々と進んでいる。
ここへ来るのは二度目となる。
歩き続けると、目の前には大きな扉が現れる。
「…来たカ?」
中から声が聞こえる。ワタシは、中へと入るためにその扉を開ける。中は光が灯っており、眩しいくらいだ。
「…契約、する気になったのカ?」
そう問われる。獰猛な瞳が私のことを見据えてるかのようだ。
「書に導かれた結果…あなたと契約したほうがよりよい未来となる。」
ワタシはそう答えると、突然と笑いだした。
「ハッハッハ…面白いナ。それで、契約するカ?」
「契約しよう。…『因果より生まれし鬼神』ラプラス=カルマ。」
「良いだろウ…『冥王』プルート、お前と契約を交わス。」
〜〜〜〜〜
「これからどうしよう。」
七香が聞いてくる。
目的のマキナは見つけたが、ライナを『異能』で治すのは危険だ。そのため他の方法を探すしかない。
「カルマは…」
「引き続き探すわ。」
と、レナさんが言ってくれる。
「本当ですか?有難いです。」
「ならば、私ももう少し残るとするか。」
ミルもそう言ってくれた。とても助かるな。
「私たちは、戻ってから他の方法を探す?」
竜那がそう提案をする。
「そうだな。」
俺たちにできることはやらないとな。
「それじゃあ、レナ。よろしく頼むよ。」
「かしこまりました、ユノ様。」
俺たちは僅か3時間程で、『ヒュームセカイ』に戻ってきたのだ。
「…そろそろ言うとするよ。」
結乃が決意を決めたようだ。
「分かった。」
「えっと…私たちはどうする?」
「…絡斗。私たちはどうすればいい?」
竜那と竜佳に聞かれる。
「2人も来てくれ。七香もな。」
「りょー。」
そして俺たちは俺の家に入っていく。
「お帰り〜…わぉ、お客さん多いね。」
カナデが出迎え、皆を見てそう言ってくる。
ちなみに、結乃以外とは知り合いだ。そのため、
「…えっと、あなたは?」
もちろんこの反応になる。
「…話があるんだ、カナデ。あとフランにも。」
結乃が口を開く。何故自分の名前を知っているのか?と言った風な顔をするが、俺たちから聞いているのだろうなと納得し、すぐにリビングへ案内する。
「私たちに話…?」
フランが首を傾げる。初対面の人にそう言われてもよく分からないだろうな。
「ここからは大事な話だからな。俺たちは部屋を出よう。」
「…いいの?」
「ああ。」
そう、俺は皆を促しつつ、リビングを出ていった。
「えっと…」
カナデは名前も分からない人を見て、どうすればいいか悩んでいる。
「2人とも。落ち着いて聞いて欲しいんだ。…できるかい?」
私は2人を落ち着かせるためそう声を発するが、
「その前に、名前を教えて欲しいんですが…」
フランに言われてしまう。確かに、そうだった。
「私は黒瀬結乃。よろしく頼むよ。」
「…ユノ…?」
フランが反応する。
「いや、それとは違うと思うよ。」
それに対してカナデがそう答えた。
「だって、ラクトたちと一緒にいるんだから。失礼になるよ?」
「あ…確かにそうだね。…ごめんなさい。」
フランは私にそう謝る。
本当に謝らなくちゃいけないのは私なんだけどね。
「…謝らなくていい。本当は…私が悪い。」
この言葉に、2人は意味がわからないという顔をしている。
「私は…星ノ使徒のユノだ。…『レッドセカイ』を滅ぼして…君のおじさん…ジャイ二を殺した本人だ。」
「「ーーーッ!!?」」
2人は同時に驚きの表情を浮かべる。
それは、思考が追いついていないかのように固まって動かない。
暫くして、カナデが声を出す。
「…嘘…じゃないのよね?」
「もちろんだ。…今日は…謝りに来たんだ。」
すると、フランが私に近寄って来てポコポコと叩いてきた。
「どうして今言うのよ!!…どうっ…して…おじ様を…殺したんですっ!!!」
激しい怒声だ。その勢いには、私も驚いてしまう。
「ちょっと…!!」
カナデがそのフランを抑えようとする。
「…危険だよ!」
確かにな。敵に迂闊に近寄ることなどしてはいけない。
「安心して欲しい、カナデ。…私はもうきがいを加えたりはしない。」
「…なんで今更なんですか!?『レッドセカイ』を滅ぼす必要があったんですか!?」
カナデは私を睨みつけながら言ってくる。
「『レッドセカイ』の核そのものに、アランが力を残していたんだよ。」
それを聞き、2人は不思議に思う。
「アラン…?なんでその人が…」
普通ならそう疑問に思うだろう。
「アランは…本当の敵だ。私たち星ノ使徒よりもね。」
「えっ…」
「もちろんこれも嘘ではない。私たち星ノ使徒の使命は、アランを復活させること。…アランが仕向けたことさ。」
それを聞いても、未だに信じ難いという顔をしている。
「それは…本当なの?」
「ああ。ジャイ二も…アランに操られていた。もう、手遅れだったんだ。」
フランはそれを聞き、叩いてくるのをやめた。
「…ッ……」
「…信じてもらえるかどうかは分からない。この後、絡斗君たちからも説明をさせるつもりではいる。」
2人は黙って私に耳を傾けている。
「私をどうするかは…その後に決めて欲しい。」
俺たちはリビングに戻ってくる。
「核に力を残したってどういうことだ?」
俺は入るなり、結乃に質問する。
「…聞いていたの?中々いやらしいね。」
「おいおい…」
「あのままだと、『レッドセカイ』の存在がアラン復活の後押しになってしまっていたんだよ。」
その力を無くすために消したのか…
「それでも…消す必要なんて…」
カナデが悲しい目をして言ってくる。
「ここから真実を話す。…覚悟して聞いてほしい。」
俺は前置きをして、カナデとフランを見る。
「「……」」
2人はしっかりと、強い眼差しで俺を見据える。…覚悟はできてるみたいだ。
「…事の順を追って説明するよ。」
俺は、今回起きた出来事、それからマキナから聞いた事を話す。
「「……」」
2人はそれを聞き、各々考えている。
「…どうだろうか?」
結乃はそんな2人に声をかける。
「…一発、殴らせてください。」
フランがそう言う。
「…ああ、分かった。」
そして、
「とりゃあーー!」
結乃を思いっきり殴ったのだ。
「…思っていたより痛かった…」
結乃がいらん感想を抱いているが、
「フラン、カナデ…俺も最初は許せなかった。…だが、皆を救うためには仕方ないことなんだと分かったんだ。だから許してやってくれ。」
俺は2人にそう言う。
「大丈夫です、ラクトさん。…もう許します。」
フランがあっさりと許した。
「…いいのかい?」
「今殴って恨みを晴らしたので。…前を向かないといけない時がある。そう、おじ様によく言われてきたので。」
…成長したもんだな。
「私も…許します。」
カナデもそう言ってくる。
「…ありがとう。2人とも。」
結乃は2人に感謝する。
こうして、結乃は自分の行いを許されたのだ。
〜〜〜〜〜
ーーー地下深く、そう、日が届かず真っ暗闇の中。
ここへ来るのは三度目だろうか。
「…何ダ?」
ワタシは、再び、ラプラス=カルマ…カルマの元へやってきた。
「頼みたいことがある。」
ワタシは、『星ノ書』の通りに物事を進めている。
そして、今日、新たな未来が記されたのだ。
「…ワタシ以外にも神と手を組んだ魔族がいたらしい。」
その魔族と神が、魔物を使い人族の住む『セカイ』を襲撃したことを知った。
「…ほぉー。その神ってのは誰だか分かるのカ?」
「デウス・エクス・マキナ。だが、共闘と言うより、マキナの元へ勝手にやってきたようだ。」
「それで、その魔族ってのハ?」
「…『イクストセカイ』に住む、『礼讃者』、『帝の王』、『賢王』たちだ。」
『イクストセカイ』を支配している3人の魔族。
「ふーむ。…それで頼みというのは関係してるのカ?」
カルマがそう聞いてくる。
「もちろん。…3人を泳がせること。それが記された。」
「…不意を突いて倒すというわけカ。」
「そう。」
この3人を泳がせ、隙を見せた所を倒す。
そして、『マデレセカイ』の他の支配者を屈服させる、または倒しさえすれば、
「ワタシが「魔族」を支配できる。」
そうすることが、『使命』…アラン復活の近道だ。
「…泳がせるってどうするんダ?」
「再び、人族の住むセカイを襲撃させ、戦争を起こす。その、仲介を手伝ってほしい。」
「…良いネ。」
カルマはワタシの頼みを前向きに取ってくれた。
「…ラクト、どうやら敵になってしまうようだ…」
ワタシは、少し残念そうに呟いた。
ラプラス=カルマ
年齢は不明(約2年前に生まれた)、誕生日不明、血液型不明。『異能』は「因果」。二つ名は、『因果より生まれし鬼神』。ラプラスより、悪の塊が具現化し生まれた神。
これにて、第2章は終わりです。次回を楽しみに待っていてください。




