第二話 迫り来る危機
ーーー目の前には大きな和風と思わしき建築が建っている。おそらく、ここがウノさんの家なのだろう。
「それで?世界の構造って何です?」
「そう慌てなさんな。まずは中に入ろうではないか。」
ーーガラッ。
「あ、おかえりお爺ちゃん…ってあれ!?」
引き戸のようなドアを開けると中から、女の子の声がする。その声には聞き覚えがあり、確か…
「カナデか?」
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!?」
「うぇぇぇええ!!!!?」
何故か声をかけた瞬間に悲鳴が上がった。
「おやおや、嫌われてるのかい?」
「そうだとしたらかなり凹むぞ。」
会った瞬間驚かれるとは…
「いやいや、嫌いじゃないよ!!そ、そのぉ…久しぶりすぎて驚いたというか、恥ずかしいというか…」
最後のほうはかなりか細い声で喋っていたのでよく聞こえなかった。
「まぁ、嫌われてないなら良かったわ。」
そう言い、ホッと胸を撫で下ろす。確かにいきなりの来客には驚くよなぁ。と内心で思っていた。
「さてと、カナデも一緒に話を聞くかの?」
ウノさんがそうカナデに問いかけた。カナデは茶髪で背中まで伸ばしたストレートの髪が特徴的だ。獣人特有の獣耳としっぽが生えている。胸もそこそこあり、スタイルもかなりいい。と俺は思った。
「う、うん、ラクトが何を聞くのかわたしも知りたいからねっ♪」
ーーカナデとは、昔来た時にいろいろと世話になったからな。それにカナデはかなり俺に仲良くしてくれる部分もあり、こちらとしても助かっている。だから、これから大事な話だとしてもカナデが一緒に聞くことには何も問題を感じない。
「ーーーでは、本題に入ろうかの。先程も言ったようにわしの知っておる範囲で話すぞ。」
「はい。大丈夫です。」
円形のテーブルに俺から右回りにカナデ、ウノさん、エルの順番で囲むように座っている。
「まずは訂正じゃ。」
「訂正?」
「ラクト様のイントネーションだと「世界」の構造とはなんだ?と聞いてきたように思えたが…」
「は、はい、そうですけど?」
「これから話のは「世界」ではなく『セカイ』じゃ。」
「・・・はい?」
「漢字ではなくカタカナのセカイじゃな。」
いやいやいや、文章に書くならまだしも、話し言葉でその違いは分からんわ!てか、文字って全種族統一なの?漢字とか、カタカナとか、人族の文字じゃないの?
色々ツッコミたいことが頭の中でグルグル回っている。
一旦、落ち着こう。
「その…『セカイ』ってなんです?」
「なんだい、そんなことも知らないのかい?」
横からエルが口を挟んできた。
「いやいや、ここに来る前聞いたのに、後で話すとか言っただろうが。」
「んー、そうだっけ?」
コイツぶん殴ろうかな?
「今回はそのことについて詳しく話すつもりじゃ。」
ここからがやっと本題か。
「まず、『セカイ』というのは、この世界の中にある小さな世界だと思ってほしい。」
「世界の中にある世界?」
早速意味がわからん。
「そうじゃ、昔、約3000年前と言われておるの。その頃には『セカイ』というのは無かった。故に、種族間を隔てるものが何も無かったのじゃ。」
「・・・つまり、『セカイ』ってのは種族別に分けさせた世界ってことですか?」
「今はその解釈で充分じゃ。その『セカイ』が無かった時代は種族同士による戦争が絶えず行われていた。」
種族が違うと価値観も違うからな。それは仕方ないことだろう。
「だが、それを良く思わなかった者がいるんじゃ。」
「それは?」
「『世を統べる女神』アランじゃ。」
ーーーその名前は聞いた事がある。確か、唯一神とも言われていて、その時代を生きる者の中で絶対的な力を持つ者だったはず。
「その女神アランが己の力全てと引き換えに、この世界を分離する『セカイ』を生み出したのじゃ。ここ、『レッドセカイ』もその一つじゃ。」
なるほど。この世界にはそんな「秘密」があったのか。全然気にしていなかった。と、いうより…
「あれ?世界を分離したわりに他の『セカイ』へ行くのになにも条件とかないんですね。壁とかもない気がしますが。」
そう、分離したといっても実際に壁があったりするわけではない、名前だけのものではないか?という疑問が浮かんだ。
「確かに、そういったものはない。じゃが、『セカイ』の中には五つの『核』が存在しておるのじゃ。」
また、新単語だよ。そろそろ頭が痛くなりそうだ。
「えっと…核ってなんですか?」
「なんだい、そんなことも知らないのかい?」
ーーーお前はいちいち口を挟んでくるな。
「『核』というのは生き物でいう心臓みたいなものじゃ。」
「一つの『セカイ』に五つの『核』ですか?」
「そうじゃ。そして、その五つ全てが壊されたとき、その『セカイ』は消えるのじゃ。」
前にもエルに言われたな。『セカイ』が消える、か。
「もしかして、今ここが危険な状況にあるってのはそういうことなんですか?」
「ーーーいや、まだそうとは決まっておらぬ。だがそれに近い状態じゃろう。」
「それは…」
「その『核』のある場所を知った者がおってな。しかもそやつは悪者と聞いておる。」
ーーーなるほど。つまり、その悪者は『核』を人質みたいな形にして、何かを企んでいるということか。
「その悪者のいるところは?」
「ーーーわからぬ。」
「え?」
分かんないって、それじゃあどうするんだよ。
「分かんないってどういうことです?」
「わしらが、『核』の場所を知らぬからな。悪者の場所も分からぬ。」
つまり、『核』探しからか。
「分かりました。もともと恩もありますし、この『レッドセカイ』を助けます!」
そう。ここに来た時点で困っていることに対して必ず手助けすると決めていた。だから俺は何の躊躇もなくそう言った。
「ーーーあぁ、1つ腰を折るようで悪いんだけど。」
横からエルが申し訳なさそうに言い出してきた。
「なんだ?」
「ラクト君は、明日学校だよね?もう夜だよ?」
「・・・・・・」
「ん?どうしたんだい?」
「いやいや、この状況で学校に行くために戻るとか正気じゃないだろ!?一刻も早く探さなきゃいけないのに!!」
俺は少し強めに怒鳴った。ここで学校を優先するほど俺もクズにはなっていない。はず。
「そのことなら心配はいらないよ?」
ここまでずっと黙っていたカナデが口を開いた。
「え、どうしてだ?」
「『核』探しは他の皆に頼んでいるから。かなり大勢だし、ラクトが無理に探そうとしなくてもすぐに見つかるよ♪」
「そ、そうなのか?」
「うん♪」
まあ、カナデがそういうなら問題ないだろう。
「そんなに心配なら、また明後日来るとしようか?」
「明後日?」
「そうさ。今日は木曜だからね。」
つまり明後日は土曜ということだ。学校も休日ということになる。
「そうだな、うん、そうしよう。」
ひとまず俺の中で整理することができた。
「それじゃあ、今日はもう帰るとします。」
「おう、気をつけるんじゃよ。」
「はい。では…」
「あ…ちょっと待って!」
カナデが慌てた素振りで声をかけてきた。
「どうした?」
「え、えっと…Rine交換しよ?そうすればいつでも話せるよ!」
「あぁ、良いよ…って」
人族以外も使ってるのかよ!?と、心の中でツッコミを入れた。人族は非能力者も多いことからこういった機器に頼るのだが…魔法がある世界でRineの意義とは…。
ちなみにRineとはスマホのアプリの一つで遠くにいる人ともチャットで話したり、通話ができる便利な物だ。
「どうかしたの?」
いろいろと考えていたら、カナデが俺の顔を覗き込んできた。
「い、いや、なんでもないぞ。Rine交換するか。」
「うん♪」
これで俺のRine登録者が7人に増えたぞ。
ーーー少ないとか突っ込むなよ?しかもそのうち2人は親だからな!
「それじゃあ、戻ろうか。」
「ああ、じゃあな。」
「うん、バイバイ♪」
「気をつけて帰るのじゃぞ。」
ーーー俺たちはエルの「転移魔法」で帰還した。
「これからお前はどうすんだ?」
俺はエルに聞いた。
「そうだな、君の家に泊めさせてもらおう。」
「え、まじかよ。」
俺は一人暮らしだから別に問題はないが。
「早速帰って寝るとしよう。」
俺は結局エルを家に泊めることにした。
ーーーーーー次の日。
俺は学校へ向かい、エルは家にずっと居ると言う。
まだ2日目という事もあり、授業もたいして面白いものはなく、淡々と一日が過ぎていった。
「絡斗君。今日も家に寄っていかないかい?」
そう声をかけられた。
「あぁ、悪い。今日はちょっと用事があってさ。」
「そうか、じゃあまた今度だね。」
そう言うって雄二は先に教室から出て行った。
そして、俺も早く家に帰ろうと教室を出た。
「明日は、また『レッドセカイ』に行かないとな。」
ーーーーーー教室の中にいる誰かが俺をずっと見ていたとも知らずに。
どうも生贄さんです。ちょっと説明部分が長くなったかもしれませんが重要な部分ですので今回は許してください。ということでいつもの説明に参ります。
カナデ・トラン
16歳。誕生日は6月20日、血液型はO型。「獣人族」であり、ウノの孫にあたる。『異能』は「崩拳」。体の身体能力を大幅強化する。また、一部分のみ強化することも可能で手に集中させ、その力を放出するなどの応用も効く。
アラン
???歳。誕生日不明、血液型不明。「神族」であり、二つ名は『世を統べる女神』。『異能』は不明。容姿も不明。
「神族」については後ほど紹介します。




