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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第2章 『神の契約』
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第二十三話 使命

それぞれが家に着き、慌ただしい一日が終わろうとしていた。


「ーーーん……ここは…」

「お、目が覚めたか?」

「…ラクト…?」

つい先程まで、アランにその体の自由を奪われ、無理やり魔力を消費されながら俺たちと戦わされていた本人ーーーエルが目を覚まし、意識を取り戻したのだ。


「……」

「…アランに乗っ取られたのは皆知っている。」

ここにいるカナデやフランにも帰ってきたあと、説明をし終えている。


「…ラクト。本当に申し訳ない。」

エルが俯いたまま顔を合わせようとしない。

「エルが謝ることは無い。これはアランが悪い。俺たちはエルを責めていないさ。…だから顔を上げてくれ。」

そう優しく言ってやると、エルはおずおずと顔を上げる。


「…本当に、許してくれるのかい?」

「ああ。お前のことを俺はよく知っている。お前は優しいやつだってな。」

「っ……ありがとう。」

そう言い、エルは俺に抱きついて嗚咽を漏らしていた。






「…それで、どこから記憶がない?」

エルが落ち着いたところで、改めて聞いた。

「記憶は完全にない訳ではない。意識はありつつも、体を動かせない…金縛りにあっていた感じだ。」

「なるほどな。」

つまりは、説明しなくてもある程度のことは分かってはいるのか。

「私のことを…あなたは分かる?」

マキナがエルに言う。

「ああ。確か、君がマキナかな?」

「そう。」

「マキナは…悪い神ではなかったのか。」

「ああ。マキナはアランに強制的に操られていたんだ。」

「なるほど。」


おそらく、アランは再び俺たちの目の前に現れるだろう。

アランの目的は、

「おそらく、俺を吸収することだろう。」

「何故ラクトを吸収するんだい?」

エルが聞いてくる。

「どうやら俺に契約を交わした時、俺の『異能』を知ったらしくてな。アランは吸収すると、その者の『異能』が使えるんだ。」

「それは厄介な相手だね。」


「なんか大変ですね。私たちも強くならないとね!」

「そうだね!」

カナデとフランは話についてこられてないだろうが、アランが敵だということは分かっていた。それさえ分かっていれば充分だ。

「今日は遅いし、次の土曜日、また『ドラードセカイ』に行くとしよう。」

と、ひとまず話し合いは終わり、今日は寝ることに。







ーーーそれから何事もなく、授業が進んでいく。

七香と結乃、竜那と竜佳にも伝えており、土曜日は皆で『ドラードセカイ』に向かうことになっている。


そして、当日。

「…ここが、神の住んでるところ…」

「言葉に出ないくらい…すごい。」

竜那と竜佳は初めて訪れ、俺たちのいる所と全く違う『セカイ』に興味津々のようだ。

転移してきたのは、結乃のアジトの目の前だ。


「それでは、入ろうか。」

結乃が扉を開け、中へと案内する。



「お帰りなさい、ユノ様。…本日はまたずいぶんと客が多いですね。」

待っていたのは、結乃の傍付き、レナ・アルカードだった。

俺たちは、それぞれ椅子に座る。

「お、ラクトじゃないか。そいつがマキナか…」

声を発したのは、レナさんと一緒にマキナとカルマの手がかりを探していたミルだ。隣にはラプラスさんもいる。


「そっちはどうだ?」

「…今のところ何もわからずじまいじゃよ。」

「なるほど…」

手がかりなしか。それでも、マキナの方が見つかっただけでも充分だろう。


「その前にいいかい?」

エルが手を挙げ、そう声を発する。

「まずは…皆に謝ることがある。」

そう前置きをして、七香たちに改めて謝り、ラプラスさんたちには事の事情を説明したのだ。






「…まさかそんなことになってたなんて。エルも大丈夫〜?」

「ああ。ありがとう。」

2人は長く付き合っているからな。それだけ心配も多いことだろう。

「…これからどうするん?」

結乃が俺に聞いてくる。

「そうだな。…マキナ。」

「何?」

短く呼ぶと、俺の近くへやってくる。

「マキナは、アランに操られて仕方なく『異能』を使わされていたんだろう?」

皆に理解してもらうために、もう一度聞き直す。

「そう…本当は…世界を救いたい。」

「アランは私たちの敵ってことは確定ね。」

七香が頷いている。


「マキナ…まずは、『異能』の代償を教えてくれないか?」

そのことを聞いてからではないと、マキナに『異能』を使わせられないからな。



「…そこまで大したことではない。…『異能』を使ったあと、使った対象に二度目の『異能』使用が条件だ。」

「えーと?」

竜那が分からないと頭を悩ませる。

「要するに、俺に対して『異能』の効果を使った後、もう一度俺に使ったら代償が起きるのか?」

「そう。」

何度も事実を書き換えられないと言うことか。

「その代償はマキナにくるのか?それとも対象者?」

そのどっちかにもよるだろう。

「代償は私が受ける。」

やはり、思った通りか。


「…その代償の内容は?」

結乃が俺の代わりに聞く。


「…それは、私の…事実が消えること…」


「事実が、消える?」

どういうことだ。

「…代償1回につき、私の事実…記憶や持つ力、存在意義…その全てのうちのどれかが消えてしまう。」

ある意味、予想しない事実改変が起きるということだろう。


「その消えた事実は分かるの?」

竜佳が疑問点を上げる。

「分かる…だが、詳細までは分からない。元々合った事実を知ることはできない。」


「…それじゃあ、ライナは…」

ライナはマキナの『異能』により、周りから忘れられてしまった。つまり、すでに力が使用されている。

元に戻すために『異能』を行使すれば、マキナに代償がきてしまう。

それだけは、やらせたくはない。


「…他の方法を探そう。」

俺の決意に、誰も反対意見を述べる者はいない。


「マキナは、すでに事実が消えている?」

「1つ消えてしまった…」

つまり、二度使用してしまったことがあるのだろう。

「何が消えたんだい?」

「私の記憶の一部…ラクトの…父親のこと。」

「…!!?」

俺の…父親。

それは、生まれてすぐにその行方を知らなかった存在だ。

「マキナは、俺の父と会ったことがあるのか。」

「そう…だが、ラクトの父と会った記憶はあれど…その時の話した内容、名前を忘れてしまった。」

俺も父親の名前は分からない。

母からも聞いていなかったし、家のどこにもそれが分かるような物が1つもなかったのだ。


「絡斗の…父…」

「そうか…だが、今は気にしないでいいだろう。」

十分気になるが、今考えなくても良いことだろう。






「丁度良いころだ。私から皆に隠していたことがある。」

と、ひと段落ついたところに、結乃が立ち上がり皆を見回す。

「隠していたこと?」

七香が聞き返す。皆も不思議に思っている。もちろん俺もだ。


「竜那と竜佳は知らないだろうが、獣人が住んでいた1つのセカイ…『レッドセカイ』を滅ぼしたのは私だ。」

と、まさかその話をしてくるとは思わなかった。もちろん、竜那と竜佳は知らないことだが、『セカイ』を滅ぼしたと聞き相当驚いている。


「そして、何故滅ぼしたのか、殺さなくても良かったはずのジャイ二を何故殺したのか…」

それは俺が思っていたことだった。

「気になっている人がいるようだからね。ここで、その真意を話したいと思うよ。」

わざわざ聞く手間が省けたのは良かった。

ただ、ここで話される内容次第で、俺はまた結乃に対する意識が変わってしまうかもしれない。


「実は、私は最初からアランが敵だと知っていた。」


……

「え。何…だって…」

最初から知っていた?

「マキナ。アランに言われ、『異能』で『十二星神』とアランの事実を書き換えたね?」

「その通り…言われたから…書き換えた。」

『十二星神』とアランの事実?


「それって何のことよ?」

竜那が食い気味に聞く。

「アランと『十二星神』が対立し、アランがその力で『セカイ』を生み出し、争いを途絶えさせた。…と、この時代まで伝わっていること。これは、マキナによる「事実改変」の影響だ。」

「えっ!!?」

それは俺にも驚きの新事実だった。

「そうなのか?マキナ。」


「言う通り…本来は、アランと『十二星神』が手を組み、世界を征服していた。」

まさか、そんなことだったなんて。マキナと結乃、レナさん以外には初の事実に驚きの表情を隠せない。


続けてマキナが告げる。

「アランを倒すため立ち上がった一人の「人族」がいる。…『剣神』と、そう呼ばれた者…」

人が、神に立ち向かったのか。

「その『剣神』の実力は異常だった。…十二星神全てを滅ぼし、あまつさえアランも滅ぼす手前までいったのだ。」

「何だ、その化け物…本当に人なのか?」

「3000年前は、さほど弱いわけではなかった…」


「それで…その後は?」

「アランは『剣神』から逃げるために、『セカイ』を創ったのだ…」

『セカイ』の生まれた理由が、まさかそんな理由だったなんて…


「…そして、私たち『星ノ使徒』…『十二星神』の意志を継ぐ者はアランによって受け継がれたのさ。」

言葉を引き継ぎ、結乃が説明する。


「私たちの使命…それは、アランを復活させること。」

「…!!」

話の流れから察したが、やはり星ノ使徒はそういう存在だったのか。


「…もちろん使命を果たそうとする者が多いが、そう出ない者も中にはいるよ。」

自分を指さしながらそう言ってくる。

「結乃は、どうしてアランが敵と知っていた?」

「色々と、レナと一緒に調べてきたからね。使命を果たす気もなかったのもそれが理由の1つだよ。」


「…それで、結乃ちゃんがジャイ二さんを殺したのは?」

七香が質問する。俺も気になっていたことの一つだ。


「エルと同じさ。アランに乗っ取られかけていた。」

「なっ!?」

俺と七香、エルは驚いた。他の者はさっきの話を整理しようとしていて反応は薄い。


「しかも、エルよりも手遅れに近かった。だから、殺すしか方法がなかった。…そのことは後でしっかりと謝るつもりでいるさ。」

「まさか、ジャイ二さんもだったのか…」

「…許してくれるかい?」

結乃がこちらを見てくる。

「…許す…ことは難しい。だが、それでもお前のことは味方だと思う。…それで良いか?」

納得のいく答えだったのか、微笑みながら頷いていた。


「星ノ使徒も敵には間違いないか…」

それでも、結乃みたいに話ができるならば…


俺はそんなことを薄らと思っていた。

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