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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第2章 『神の契約』
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第二十一話 未神

ーーーある日のこと。

「フレイヤさん、ちょっと良いですか?」

俺は我が家に増えた居候のフレイヤさんに質問をする。

「はい、何でしょうか?」

フレイヤさんは椅子に座りながらそう答えてくる。

俺は目の前の椅子に座り、話を続ける。

「さっき、『契約』の話があったじゃないですか?」

「ええ。」

「それで思ったんですけど、『契約』は複数とできるんですか?」


そこについて説明されていなかった気がした。気になっていたので今聞いてみることに。

「通常では無理です。」

「通常と言うのは?」

それは通常でなければ複数とできると言っているようなものだ。

「契約には、多少なりとも魔力が必要です。本来であれば一対一で契約することになります。もちろん、相手が精霊の場合でも人の場合でもです。」

「なるほど…」

「契約には主と従になることは言いましたよね?」

「ああ、聞いている。」

「その主と従の力の差…つまりは魔力量の差がほとんど無かったり、主より従のほうが魔力量が多い場合は、他のものと契約できません。」

「なるほど…」

「ですが、従になっているものが他の者と契約をするとします。この場合、その者との契約においても従であれば契約を行えます。」

少しややこしくなってきたなぁ。


「つまり、従になるのであれば複数と契約できる?」

「はい。その考えで大丈夫です。そして、通常ではない場合の説明ですが、先程の例で、主が従よりはるかに魔力量が多いとします。その場合、主であっても他のものと契約を交わせます。」

「その場合、主にならないといけないとか、従じゃないといけないってのは?」

「ありません。魔力が足りれば可能です。」

なるほど。

「それと、契約において忘れてはいけないことがあります。」

「何だ、それは?」

「契約で主の者の魔力が従と同じ、または従より少ない場合は他の者と契約できない。と、言いましたが正式には違うのです。」

「えーと…つまり?」

「その場合でも主は他の者と契約できます。ただし、その前に契約していたものとの契約が破棄されます。」

「つまり、契約相手が上書きされるのか。」

「はい。ここで問題なのは、契約が解除ではなく破棄されるという点です。」

「何か違いがあるのか?」

「解除はお互いに了承を得て、契約を終わらせることです。それと違い、破棄は片方が一方的に契約を終わらせることです。その場合には、代償がつきます。」

「まじか…」

なるべく破棄はしないようにしないと。そのためにも契約相手は考えないとな。


「とりあえずありがとうございます。」

「いえいえ。お話は楽しいものですからね。また何かあれば聞いてください。」






〜〜〜〜〜






…それは衝撃だった。

今までアランを復活させ、悪者を無くそうと努力してきたはずが、まさかそのアランが最大の悪者だったとは。


「さぁ、マキナよ。降りてくるがいい。」

そう、アランがマキナに指示を出す。

頭上、約1m程浮いていたマキナが、まるで今の言葉に強制力があるかのように体が光ながら地面に足をつける。


「…それでは、ラクト君を倒すために『異能』を使用してもらおうか。」

アランがそうマキナに言う。その瞬間、まるでマキナが寂しげな顔をした。が、すぐに元の顔に戻る。

だが、俺はそれを見逃さなかった。


ーーーもしかしたら、マキナは嫌がってる?


そんなことを思い、もし違っていれば誰も信用できなくなるほどその時のマキナの顔が脳裏に焼き付く。


「くっ!」

アランがマキナに対して『異能』を発動させようとするのを防がなくては。


「…おいおい、もしかしてやる気かい?」

俺が接近するも、拳が当たる寸前アランは一歩引いていた。


「確かに、今のこの体が出せる力しか出せないが、それでもラクト君はこの体の主に勝てたことがあるのかな?」

「……」

確かにアランの言う通り、俺はエルと特訓のため何度か打ち合ったことがあるが、一度として勝ててない。

だが、

「それが、戦わない理由になるかよ!」

戦わなくてはいけないのだ。


「《インフェルノ》!!」

俺の手のひらから灼熱の球体が放出され、アランに襲いかかる。

「《ホーリーカーテン》」

アランの目の前に、まるで空から地上まで隠しきるほどの大きな光の透明な壁が生まれる。そして、《インフェルノ》と真正面から激突する。


「《ピリア》!」

俺は自分に補助魔法を使い、素早さを強化する。

「《ランド・ウェアー》!」

立て続けに魔法を行使し、自らの両腕に土属性を付与する。


「無駄な足掻きだよ。」

そうして、あらんに接近し攻撃を繰り出すが、一つとして当たる気配がない。

「くっーーー!!」

圧倒的な力の差を感じる。

「《デグリア》!」

「なっーーー!!?」

アランの突き出された左手から、禍々しいオーラが拡散状に放出された。俺は、それをかわそうとするが、

「《グライデ》」

「ぐっ!?」

重力操作により、俺の足が地面に埋まり、動けなくなる。

「ぐっーーーー!!!」

そして、直撃とはいかずとも、左半身をもろにくらってしまい大きく吹き飛ばされた。


「…これで終わるわけないだろう?」

アランはまるでこちらを知ってるかのように問いかけてくる。

「くっ…」

左側に力が入らない。おそらく、かなりの衝撃を受けたのだろう。

「おやおや…治癒しなくてはまともに動かせないんじゃないかな?」

アランは俺に向かって歩き出した。

「でも、残念だね。治癒ができなくて。」

やはり知っているか。

「…お前が、俺に弱化魔法をかけたのか?」

「…弱化魔法?それはボクではなく、ルードにやらせたさ。まぁ、すでに死んでいるようだがね。」

つまり、ルードとアランは手を組んでいたのか。

「それと、それは弱化魔法ではないよ。」

「何…?」

「教えてあげよう。…それは『呪い』さ。」

「呪い…?」

初めて聞く言葉だ。

「ボクが吸収した者の中に、「呪いをかける」という『異能』持ちがいてね。その能力さ。「呪い」は魔法と違い、治す方法は異なるのさ。」

なるほど。昔ユノと戦っていたときは回復されては困るという理由で『異能』を俺に使用しなかった。

だが、その後、味方となったあと、試してみたのだが結乃の『異能』でも解除できなかったのはこれが理由か。



「呪いの解除方法は?」

「そこまで教える義理はないさ。自分で探し出すことだ。…まぁ、そんな心配はいらないさ。今吸収してあげるよ。」

そう言い、アランはマキナの元へ歩いていく。

「仕方ない…こちらを優先しよう。」

やばい、このままだと取り返しが付かなくなってしまう。


「マキナよ、命令だ。『異能』を行使してもらおう。」

そうアランがマキナに発すると、マキナの周りに浮いていた4つの時計盤が光輝き、そこについていた長針と短針が激しく回り出す。



「アラン…本当に…するのか?」

「マキナ…君は口答えする義理はない。ボクと『契約』してるのだからね。」


「…!!」

『契約』…アランはマキナとも契約していたのか。


「…ぁ…」

そこで俺は昔フレイヤさんと話していたことを思い出す。

マキナはアランに強制させられている。それは、契約によるものだろう。そして、おそらくアランが主、マキナが従だろう。

基本的に、契約の一方的な破棄は従には行うことができない。


「マキナ…!お前は、どうしたいんだ!?教えてくれ!」

俺はマキナの真意を探るために、力を振り絞って声を出す。

「…無駄だよラクト君。そんな言葉は届きやしない。」



「「融合魔法《ルクス・デフォン》!!」」

「…!!?」

その時、アランに向かって、白と黒…光と闇の砲撃が撃ち放たれた。その威力、速度は申し分なく、アランは避ける動作をせず、防御に徹した。

「《ホーリーカーテン》!」

大きな爆発音を立てて、煙が舞い上がった。アランは完全ではなくとも、ほとんどの威力を殺しきったようでかすり傷がついた程度だった。


「今の魔法は…なんだい?」

アランは魔法が放たれた方角を見る。そこにいたのは、


「遅くなったわね、絡斗。ずいぶんボロボロじゃない。」

「エルが…裏切った?」

竜那と竜佳だった。

「違う…あいつは、エルの体を乗っ取っているアランだ。アランは…俺たちの敵だ。」

それを聞き、2人は驚きの表情を見せる。

「まじで?それは驚きだわ。」

「心配しないで。ここからは私たちが相手する。」

2人は構えを取る。

「何人いても無駄さ。…消えてもらおう!」


アランと2人の戦いが始まった。そして、

「絡斗。この状況を打破する方法ないの?」

七香が遅れてやってきた。

「あるには…ある。可能性は分からないが…」

「なら早く試して。こっちが時間を稼ぐから。」

そう言い七香も2人に混ざり、アランに攻撃を始めた。


「ありがとな。」

俺は3人に礼を言い、マキナの側へと急ぐ。






「マキナ!今は他に誰もいない。だから…本当のことを言ってくれ。」

俺はマキナに対してそう言う。

「不可能…私は…己の意志を…貫けない。」

「いや、できる。お前が本心を伝えてくれれば、お前自身の意志を貫ける。『異能』もアランの通りにしなくていい。命令を聞かなくて済む。」

「ほん…と…?」

「ああ。俺は、お前を…マキナを信じたい。だから俺を信じてくれ。」

先程の表情…おそらく、マキナは強制的に「契約」を交わされた可能性がある。だから、マキナの本心さえ聞くことが出来れば…


「私は…未神(みしん)の始祖…古神(こしん)の始祖…アランの誤ちを知っている。」

マキナが未神の始祖とは驚きだ。

「だからこそ…誤ちを繰り返さないために…私は…皆を…平和にしたい…守りたい。」

そう、淡々とマキナは自分の思っていることを一つずつ声に出している。


「私は…アランを…倒したい。…『異能』を好き勝手に…使いたくないっ…」

マキナの目から涙がこぼれ落ちてきた。必死に訴えかけてきた言葉は、俺が期待していた通りのことだ。

だからこそ、この期待は裏切れない。なら、




「マキナ…俺と…『契約』をしてくれ。」

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