第二十話 世を統べる女神
ーーー能力者派遣組織『WFPWA』。
そこは政府に認められている正式な職場だ。
ここ、『ニホン』を守るために、『ヒュームセカイ』、『リュームセカイ』にそれぞれ1箇所置かれている大きな建物…「能力者精鋭本部」通称『BIGBANG』。それを中心に、それぞれの『セカイ』で4箇所に小さな建物として置かれているのが仮組織のようなものだ。ちなみに仮組織も正式に『WFPWA』の一部だ。
『WFPWA』…これは、「Wish for peace with ability」の略称で、「能力で平和を願う」という意味が込められている。
俺たちが住む『ニホン』を脅かす存在…それを倒し、平和を守るというのがモットーらしい。…ただ、その敵となる存在に「他種族」というのが含まれているのが疑問点だ。
「他種族」の悪者なら分かる。なのに、どうして「他種族」全般を敵としているのだろう。…何かあるのかもしれないな。
他にはもちろん、「魔物」や、同じ人でも悪いやつがいる。そういうやつや、「星ノ使徒」といったものを敵とさている組織だ。実力もかなり高い。また、その組織のトップに立つ者は「五豪」の一人と言われている。
政府直々に認めており、1つの職業となっているので、その組織に入っているものは多い。
〜〜〜〜〜
俺たちはすぐに、エルと合流するため、本部付近へと向かっている。
ちなみに、本部は俺たちの通う「上高」の近くにあり、走って10分ほどで着く。
俺たちの高校を卒業して、『WFPWA』に就職しようと考えているものは少なくない。…俺は違うけど。
「着いたわ!」
俺たちは初めて『WFPWA』の本部にやってきた。
「こんな建物なのか。」
意外と圧巻だな。
「来たか!?」
と、俺の姿を見つけたらしくエルが近づいてきた。
「エル!どうなってるんだ?」
「今、本部にいる能力者たちが戦っている。マキナだけでなく、魔物が一緒にいる。」
「なんだと!?」
魔物が神と一緒?そんなの聞いたことがなかった。魔物は魔族が生み出しており、魔族以外の言う事は聞かないはずだ。
「とりあえず行こっ!」
七香が先陣切って本部付近での戦闘現場に向かっていった。
「…!!優奈さん!」
俺は戦っている人の中で見知った人物を見つけ、近づいていく。
「《インフェルノ》!」
俺は優奈さんが対峙していた魔物に対して横槍となる攻撃をいれた。
「グワァァアアーーー!!!」
その魔物は呆気なく燃え尽きて灰と化した。
「!!?絡斗君!?」
優奈さんが俺に気づき声をかけてくる。
「どうしてこんな所にいるのっ!?」
「ここで魔物が暴れていると聞いて…雄二は居ないですから安心してください。」
雄二は能力者としてはまだ未完成。ここに居ては危険すぎるので連れてきていないことを報告しておく。
「それは…助かるけど、絡斗君も危険だよ!?」
「俺は戦えるので大丈夫です。…一応説明はしたじゃないですか。」
実際に戦闘してるところは見せていなかったが、何度も雄二の家で遊んでいるので、自分のことについては説明してあったのだ。
「嘘じゃないならいいけど…」
「それより、優奈さんこそどうして?」
確かに優奈さんは能力者だが…いつもの雰囲気を見ているとなんともパッとしない。
「言っていなかったっけ?私、『WFPWA』に所属してるのよ?」
「えぇ!?」
初耳だわ。
「とは言っても本部じゃなく、今は仮組織『MARS』に就職しているけどね。」
そう言ってはいるがそもそも『WFPWA』に所属してるだけでも中々凄いことだ。
「そうだったんですか。それなら魔物はなんとか抑えられるか…」
俺の真の目的は魔物ではなく、マキナだ。
「ここには魔物以外に敵がいますよね?」
「知ってるのね。「魔族」が3人と、「神族」が1人いるわ。」
その神が十中八九マキナだろう。
「その魔族と神の居場所は?」
「…そこに行くの?危険すぎるよ。…皆、魔物の処理で手一杯。誰もその4人の付近には居ないわ。…あなたたちも生徒でしょ?危ないから行かない方がいいわ。」
優奈さんが俺の後ろについてきている4人にそう言い聞かせている。
「問題ないわよ。私たちも絡斗と同じくらい強いから。」
と、竜那が前に出て優奈さんに言った。
「でも…」
「大丈夫です。危なくなれば、転移して逃げます。」
エルも一緒に連れていくとするか。
「…分かったわ。その4人がいるのはあの、崖の上よ。」
丁度、ここの建物の周りには、壁のように地形が高くなっている。おそらくその上からここを見ているのだろう。
「ありがとうございます!」
「気をつけてね。」
俺たちは、その崖の上を目指して走っていく。
そして、エルを連れ、俺たちは崖の上付近までやってくる。
「うげっ。何よ、この魔物の量!?」
竜那がそう声を漏らすがそれも仕方がない。見た感じ、下で戦っている大量の魔物と同等くらいの数がいるからだ。
「絡斗とエルは先に行って!私たちがこの魔物を処理するよ!」
と、七香が『異能』を発動し、弓を片手に持ちそう言ってくる。
「…分かった、よろしく頼む!行くぞ、エル。」
「了解。」
俺とエルは魔物を無視し、さらに奥に向かっていく。
「はぁ…仕方ない、やるとしますか!」
「うん!私たち双子の力を見せてあげる!」
「私も頑張るか。」
3人とも気合を入れた。
「行くよっ!さっさと倒して、絡斗の所へ向かうわよ!」
「っ!!」
俺は走る足を止めた。目の前には一人しかいない。
「お前が…マキナか?」
その目の前にいる人物の姿を見て驚きを隠せない。
それは、まるで常軌を逸している姿のようだった。
色素がない髪の毛、そして、そのマキナらしき少女は宙に浮いており、髪の毛は地面にまで伸びていた。纏っている衣服もほとんどが色の無い白の生地。そして、周りに4つ…まるで時計盤のような円盤がマキナを囲うように浮いていたのだ。
「私は…デウス・エクス・マキナ。…あなたは…誰?」
その少女が声を発する。
「……俺は絡斗だ。お前が来菜を襲った本人だな?」
俺は敵意を向けるが、目の前の少女はなんとも思っていない様子。
「…エル、どうなってんだ?」
まるで人形のように、意識がはっきりしてるのか分からないマキナを見て、俺は隣のエルに意見を求める。
「とは言われても。ボクもどうなっているのか分からないよ。」
「他にいるはずの魔族は?」
「ここにはいないようだ。…おそらく、逃げたか?」
「逃げた?」
不思議だな。魔族は俺たちより強いはずだ。逃げるということは何か事情があるのか。
「それより、お前は話を聞いているのか?」
俺は再びマキナに言葉を投げかける。
「聞いてるわ。…ライナ…という人物を…私は知っている。」
その言葉を聞き、俺は感情が溢れそうになるのをなんとか抑える。
「その娘を…意識不明にしたのは…私で間違いない。」
意外とすんなり言ってくれるものだ。
「なら、今すぐ来菜を元に戻せ!」
「それは…できない。」
「なんでだ!?お前の『異能』なら元に戻すことも可能だろ!?」
「確かに…私の『異能』なら…可能だ…だが…」
「…なんだ?」
俺は次の言葉を聞き言葉を失った。
「私は…アランに操られている。」
「…アランに…操られている?」
どういうことだ?そのアランというのはあの有名なアランか?
「アランによって…私の『異能』は…私の意思で使えない。全て…アランの指示で…勝手に発動する…」
そんなことがあるのか?それじゃあ…まるでアランは…
「…そういうことだよ。ラクト君。」
「!!?」
と、隣から…いや、マキナの傍に移動していたエルがそう声を出す。
「エル…?」
「すまないがボクはもうエルじゃない。この子の体を借りているのさ。」
体を借りている?
「お前は…まさか…」
「そう。ボクは…『世を統べる女神』アランさ!!」
…そんなまさか…
「長年かけて、この子に馴染むのに苦労したさ。君たちにバレないようにしていたからね。」
と、エルの姿をしたアランがそう淡々と喋っている。
「最も、ボクの姿はエルだ。つまり、ボクの力は使えず、エルの力となってしまうが…そこはマキナの出番さ。」
そう言ってマキナに触れる。
「…わざわざ俺を呼んだのは?」
なんとか冷静にならなくては。俺をここへ呼んだ意図が分からない。
「簡単だよ…君を力の糧にすれば、再び…この世界を征服できるのだからっ!」
何を言っているんだ。世界を征服…?
「ボクの伝承が偽りのまま受け継がれてくれて助かるよ。」
「…っ!!」
その言葉の意味が示すところ…それはつまり、
「お前が…この世界の敵だってことか!」
「それが分かってもどうにもならない。ボクの『異能』は、「始祖」。ボクが吸収した存在の『異能』が使えるのさ。」
「……」
「君の『異能』をボクは知っている。だからこそ、吸収しなくてはいけない。」
「マキナは吸収しないのか?」
「なるほど。だが、デメリットは無くならないのさ。それに、マキナを吸収すれば今までマキナとして使用された『異能』による事実改変…それらが元に戻ってしまう。そうなれば、世界事体に矛盾が生じ、ボクとて無事では済まないのさ。」
と、アランは意気揚々としている。
「…終わりさ、ラクト君。君の妹も帰っては来ない。」




