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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第2章 『神の契約』
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第十五話 小さな一歩

歩くこと数十分。

目の前には、一際目立つ建物がそびえ立っていた。

「…でかいね。」

「ああ、神殿みたいな形だな。」

俺たちはそれぞれ率直な感想を述べる。

「さて、中に入ろうか。」

結乃が先頭を切って、その建物の中へと歩き出した。



中に入ると、そこにはたくさんの神々と神使(かみつかい)が慌ただしく動き回っていた。

「結構いるんだな。」

見ただけでも10人は超えている。

「あの真ん中ら辺にある囲いの中にいるのが受付とかなのかな?」

「おそらくそうじゃないかな?」

3名の神が、おそらく神使であろう者たちとそれぞれ話している。

その中の一人が、サインをしている所を見ると、おそらく受付で間違いないだろう。


「んー。ここに来たはいいけど、どうやって探す?」

七香にそう言われ、俺も改めて考え直す。すると、

「…ん?あれ?」

「どうしたん?」

「いや…ちょっと行ってくる。」

「ちょっと…!?」

俺は真っ直ぐに…ある見知った神の元へと歩き出した。


「…あれ?ラクトじゃないか、久しぶりだな。」

「お久しぶりです…オーディンさん。」

そこにいたのは、ミルやラプラスさんから散々酷い言われ方をされていたオーディンさんがいたのだ。


「おいおい、なんでここにいるんだ?ニンゲンには関係ない場所だぞ?」

「少し神探しをしていまして。それで、神が集まっているここに来たんです。」

「なんだそういう事なのか。」

俺の説明を聞き、オーディンさんは納得したようだ。


「オーディンさんは役割とかそういうのがあるんですか?」

ここに居るということは関係者の可能性が高いからな。

「そうなんだよ。審判役の一人に選ばれちまってよ。ったく、めんどくせえ。」

そんな話をしていると、七香と結乃がやってきた。


「…なんだなんだ。女連れかよ、お前。」

「いや、人聞きが悪い言い方しないでください。」

と、2人に反応して、オーディンさんが変なことを言ってきた。

「絡斗…あんたまだ神の知り合いが居たの?」

「ああ、お前たちラプラスさんと会う前に会っていたんだよ。」

「良い女じゃねえか。お前らなんて名前なんだ?」

「なんか、この神嫌いなんだけど…」

面と向かって言えるその度胸はすごいな…

「はっはっはっ!おもしれえな。だが、安心しろ。俺は同じ神にしか欲情はしないんでな。」

「「……」」

2人とも、オーディンさんの言葉に引いてるな…しかも、心の中で「うわぁ…」とか思っていそうな顔をしている。

「で、冗談は置いといて、名前はなんて言うんだ?」


「…七香です。」

「結乃だ。」

2人とも嫌がりながら、自己紹介を軽く済ませた。






「…で、3人揃って神探しか。」

軽く、ここまで来た経緯を説明した。

「それで、あまり大声で言えないんですけど…」

「なら、場所を変えるか。」

そう言われ、俺たちは建物から外に出て、裏の人目の少ない場所へ移動した。


「で、探してる神の名前は分からねえんだろ?『異能』とか見た目は分かるんか?」

「『異能』は、事実を書き換えることができるらしいです。」

「……」

「知ってますか?」

事実を書き換えられていれば、オーディンさんの中からもその神の事は消えてるかもしれない。

「知ってるな。」

「!!ホントですか!?」

すごいな。流石は古神なだけはある。

「できれば教えて欲しいんだけど。」

てか、結乃はオーディンさんに対してもタメ口とは…


「別に構わねぇ。だが、少し待ってろ。」

「待つってどういうことです?」

「口で伝えても、また書き換えられたら忘れるだろ。だから、メモとして教えてやるってことよ。」

「……」

その言葉を聞いて、少し不思議な感覚を覚えた。

書き換えられたら忘れる…

つまり、俺たち全員から来菜の「事実」が書き換えられたことにより忘れたのだろうか。

…それなら、何故、『結乃だけ』覚えていたのだろう。


「どうした?」

「いや、なんでもないです。メモという事は、一度戻るんですか?」

「いや、受付に行きゃ紙とペンくらい貸してくれるさ。ちょい待ってな。」

そう言われ、俺たちはここで待つことに。

…今の疑問は後で、結乃と2人の時に聞くとしよう。






すぐに、オーディンさんは戻ってきて、メモに文字を書いて渡してくれた。

「そいつが、俺の知ってる範囲での事だ。」

「なんでオーディンさんは忘れてないんですか?」

「ちょっと前…と言っても、1ヶ月も前だが、そいつと会ってるんだよ。だから分かるんだ。」

「え!?」

それはすごい衝撃発言だった。

「なのに、なんであまり覚えてないの?」

七香が真っ当な疑問を口に出す。


「もちろん、その後、事実を書き換えられたからだよ。」

「なら、なんで覚えてるんです?」

「ミルにそういう奴が居るってのを聞いた時によ、出会ったやつ全員の事を、ムニンに記憶させてるんだよ。」

「…ムニン?」

なんだそれは。

「俺の力の1つみたいなもんだ。…前に、フギンは見ただろ?それのもう片方だ。」

なるほど。神ともなると、力も単純ではないな。


「そのムニンってやつの効果は?」

結乃が興味ありげに聞いてくる。

「まぁ、ムニンってのは記憶を司っていてよ。1つとして、絶対記憶があるな。見たもの、聞いたものを忘れない。しかも他のあらゆる力の範囲外に存在してるから事実書き換えも効かないのさ。」


「恐ろしい力ですね…」

俺は思ったことを口にした。

「ちなみに、ここでは読まねえほうがいい。誰が見てるか分からねえからな。」

「分かりました。」

一度、結乃のアジトに戻って見るとするか。

「こんなところで良いか?仕事に戻んねえといけねえからよ。」

「はい、ありがとうございました!」

「おうよ、またよろしくな。」

そう言って、オーディンさんは建物の中へと戻っていった。






「…一旦戻る?」

「そうするか。」

オーディンさんが戻った後、俺たちはこのあとについて話していた。

「皆のこと集める?」

「そうするかな。」

俺は一度、エルに《コンタクト》で連絡をとってみることにした。


『エル、聞こえるか?』

『ああ、何か収穫があったのかい?』

『もちろんだ。一度、アジトに戻りたいんだが。』

『分かった。少し時間がかかるかもしれないけど。』

『それは大丈夫だ。じゃ、来れるときに戻ってきてくれ。』

『了解。』


「エルたちとは連絡がついたぞ。」

「こちらもだ。すでにレナは戻っているみたいだ。」

と、いうことはミルも起きているか。

「よし、戻るか。」

そう言って、俺たちは結乃のアジトに戻ることにした。


と、思ったところで、

「そういや、なんで俺たちは「転移魔法」が使えないんだ?」

気になったので言ってみた。あれだけ便利な魔法を何故習得しないのか。

ちなみに俺はただ単に苦手だからだ。

「私は苦手だから…」

七香がそう言ってきた。

「それに、「転移魔法」は便利だが、その分使うのは難しいんだ。」

と、結乃が説明してくる。

「そうなのか?」

「基本的に、「転移魔法」は自分の魔力の流れと転移先の地形の魔力の流れを一致させないと発動しないんだ。大きく変わることはないとしても、地形の魔力の流れとは少しずつ変化している。一致させるのは困難な業なんだよ。」

「まじか。初めて知ったわ。」

そこまでの技術が必要とは。毎回、エルは転移を使っているが…凄いやつなんだな。

と、誰もできないと言われ、仕方なく歩いて戻ることに。






それから暫くして、俺たちは結乃のアジトに戻ってきた。

「疲れた…」

早速アジトの中へ入ると、すでに他のみんなは集まっていた。

「お帰り。」

「ああ、ただいま…」

「どうしたんだい?」

「どうもこうも、疲れてるんだよ。」

と、俺だけでなく、七香と結乃も疲れた素振りを見せながらやってくる。

「レナ…コーヒーを…いや、紅茶を出してくれ。」

「かしこまりました。」

と、レナさんは無駄のない所作で紅茶を注ぎ始めた。



暫くして、紅茶を入れ終えて、全員が椅子に座り直したところで、

「それじゃあ、本題だ。」

俺は1つの紙を取り出した。

「口ではなく、紙に書く…か。しかし、事実書き換えでその紙に書かれている内容が消えない保証はないんじゃない?」

と、エルが皆が心配しそうな部分を聞いてきた。

「そこは大丈夫だ。オーディンさんがムニンの力を使ってくれた。」

「ムニン…?」

「この紙に、ムニンの力が働いているらしくてな。だいたい、30日間の間、この紙は他の力の影響を受けないらしいんだ。」

オーディンさんもこの事を心配して、わざわざ力を使ってくれたのだ。


「30日間か…」

「ああ、期日付きだ。…だから、絶対に30日以内で、決着をつけるぞ。」

俺たちの目標はこの神を倒す。または、来菜を元通りにしてもらうことだ。短い期間だが、できるかできないかではなく、やるしかない。


「それじゃあ、紙を見てみるか。」

その紙には次のように書いてあった。


「ラクトが探している神の名前は、『機械仕掛けの神』デウス・エクス・マキナ。『異能』は「舞台装置(ぶたいそうち)」。ある条件の下で発動し、己の思うがままに物語を完結させる。連続的に発動する際に何らかの代償が生じる。」


「デウス・エクス・マキナ…」

初めて聞く名前だった。古神では無さそうだ。

「それが、私たちの敵なのね。」

「思った通り、『異能』が厄介だね。」

「そうだな。」

「…もう遅い時間だ。私たちは帰らないといけないね。」

結乃に言われ、今日が日曜日だということを思い出す。

「そうだな。マキナ探しは後でか…」

「それなら、ミルが残って探しておくか?」

「いいのか?」

「もちろんだ。時間がないことは承知の上だしな。」

「私も、残って手伝います〜。カルマも気になりますしね〜。」

と、ラプラスさんもそう言ってくれる。

「レナ、悪いけど2人と共に行動してくれ。何かあれば伝えるように。」

「分かりました。」


「それじゃあ、戻るか。」

エルに言われ、俺と七香、結乃は一度、『ヒュームセカイ』に戻ることに。


ほんの少しだけ…前に進めた気がするな。

デウス・エクス・マキナ

???歳。誕生日は不明、血液型は不明。『異能』は「舞台装置(ぶたいそうち)」。「神族」であり、二つ名は『機械仕掛けの神』。

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