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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第2章 『神の契約』
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第十三話 事実は書き換えるもの

ーーーそれは聞き間違いだろうか。


「ラプラスさんが、来菜を?」

俺は恐る恐る聞き返す。

「いや、正式に言えば違ういます。」

「え?」

「私とユノ様が戦っていた神がラプラスであって、ライナが意識不明になった原因は他の神です。」

「そう…なのか。」

確かに、俺の聞き間違いと言うか、勘違いではあった。だが、結局ラプラスさんが関与しているのは間違いない訳で…

「その考えも少し違っているわ。」

レナさんに再び訂正を受ける。

「今、一緒にいるラプラスのことではないのよ。」

「え?同姓同名?」

「みたいなものね。詳しくは本人から聞きなさい。」

それ以上は何も言わなかった。結局、来菜の意識を取り戻すのに謎のラプラスさんが関係しているかも知れないということだけが分かった。






再び結乃たちの所へ戻ってくる。

「お帰り。何とか説明は終わったよ。」

あの後、エルとミルに説明をし、なんとか納得してもらえたようだ。

「まぁ、ラクト君のしたいようにすればいいさ。ボクは何も言わないよ。」

と、星ノ使徒と協力することを肯定してもらえたことに感謝をしている。

「…それで、ラプラスさん。聞きたいことがあるんですけど。」

「なあに?」

俺は先程レナに言われたことを聞く。


「ラプラスさんには、結乃たちとしか共有していない秘密がありますね?」

「……」

「それを聞かせてください。俺の…妹を助けるための必要なことかもしれないのです。」

しばらく、ラプラスさんは無言だった。そして、

「…分かったわ。今から話すわ。」

そう言い、俺とレナさんは椅子に座り、改めてラプラスさんに向き直った。


「…実はね、私、今『異能』が使えないのよ。」

「「え!?」」

俺もそれは驚きだ。まさか、俺みたく誰かに呪いでもかけられているのか?

「本当か?いつからだ?」

エルが聞き返す。おそらく、親密な関係でいたエルにさえも言っていなかったのだろう。

「結構前…だいたい2年前?ユノたちと出会う前からかな〜。」

かなり長い時間使えていないのか。

「…ラプラスさんの『異能』って何です?」

今まで一度も話してなかったからな。聞いておいた方が良いだろう。


「私の『異能』は〜、「因果(いんが)」よ〜。」

「と、いうのは?」

「これは〜、説明が難しいから割愛させて〜?」

…名前だけ分かっても意味がない気が…


と、ここまでじっと聞いていた七香が、

「『異能』が使えないって、絡斗みたいに誰かに「弱化魔法」でもかけられたの?」

と、俺みたいな状況だと思っていた。

「いや〜?そういうんじゃなくてね?…私の『異能』が私から逃げちゃったのよ〜。」

……

「どういうこと?」

思わず言ってしまった。


「実はね、私の『異能』は、対象者との因果関係によって、変わる力なのよ〜。」

「そうなんですか。」

おそらく簡単に説明したのだろう。

「それでぇ、私自身との因果率が増えすぎたせいで、私の1つの感情が暴走しちゃったの〜。」

なんか平穏と話しているけど結構やばい内容だな!?

だいたい、自分自身との因果関係とか…俺には難しすぎる『異能』だな。


「そしたら、その力が私の体から出てきちゃって〜、それで肉体を持っちゃったのよ。それで、どっかに行っちゃった訳〜。」

「な、なるほど。その力って…」

「ええ、私の『異能』そのものよ。」

それが原因で今は『異能』が使えないということか。


「てことは、結乃たちと戦ったことラプラスさんってのは…」

「うん。目の前にいるラプラスから出てきた『異能』のラプラスということだよ。」

結乃が肯定する。それにしても暴走とは…

「そのラプラスさんの『異能』って悪者って感じ?」

「そこにいるラプラスが善10とするなら、私たちが戦った『異能』は悪10と言ったところね。」

と、レナさんが俺の疑問に補足してくれる。


「その、悪のラプラスさんって、来菜の意識を取り戻すのに関わっているのか?」

俺は最もな疑問を持つ。そもそも、ラプラスさんの秘密を聞いたのも、来菜を救う手がかりになるのか判断するためだったのだ。

全く関係ないとなれば、また振り出しに戻ってしまう。

「もちろん関係してると思うわ。ちなみに、私の『異能』から生まれた私は、ラプラス=カルマって言うみたいよ〜。」

「ちなみに、そのカルマと一緒にいた神が来菜が意識不明となった元凶だ。だから、関係していると私は思っているんだよ。」

と、結乃が説明をしてくれる。


「それで、その来菜に関係している神はなんて言うんだ?」

その神の名前も分かれば探すのは簡単になるだろう。

だがーーー、

「実は、分からないんだ。」

「え?」

来菜が意識を奪われる瞬間、結乃たちは一緒に居たという。なのに、名前が分からない?

「ど、どういうことだよ?」

「…その神は事実を書き換えられる力を持っている。それで、私たちと会った事実を隠蔽したのかもしれない。そのまま、自分の名前も偽ったのかも。」

「事実を書き換えられる…?」

そんな力、ミル以上にチートじゃねえか。


「…お前の、『継承』でその効果を消すことは出来ないのか?」

確か、結乃の『継承』はありとあらゆる能力を浄化するはずだ。

「それは人物にしか効果がないんだよ。この『異能』は、世界の事実そのものを書き換えられている。だから、無理なんだ。」

「じゃあ、なんでそんな神が持ってる力を言いきれるんだ?」

結乃の話は矛盾している。俺がそこについて、聞こうと前のめりになると、


「それは、私が言ったんじゃよ、ラクトよ。」


ミルが俺に向けて、そう言ってきたのだ。






「ミルが…?」

「私の『異能』は伝えたじゃろ?…私自身が、その『異能』の力を認識した瞬間をセーブしていたんだよ。」

それは、おそらく何年も…いや、何千年も前の事だろう。

「そのセーブ地点をロードしたとき、もちろん、意識など全てがそのときの記憶を引っ張り出してくる。だから、その後に起きた出来事に関係なく、私は居られるんだよ。」

「…そうか、だからその神が事実を書き換える前にロードしたことで、その神のことが分かるのか!」


前言撤回だ。ミルもその神と同等にチートだった。


「…その神の居場所を探さないとな。ちなみに名前は?」

「すまないな。会ったことがないから、聞いた話でしか知らんのだ。」

「そうか。」

それでも、その神がいることが分かったことで、話が繋がった。


「これからどうする?もう、今日は午後になってるし。」

確かに、なんだかんだかなりの時間を費やしている。

「また、明日来る?」

七香からそんな提案がある。が、

「正直、もう少し妹のそばに居たいって気持ちがあるんだ。」


「……」

皆も俺の気持ちを察してくれただろうか。と、


「なら、絡斗君は今日泊まっていく?」

と、結乃から言われた。

「え?」

「皆泊まるとなると、家に置いてきた人たちが可哀想だからね。」

「どうするんだい?」

エルからそう言われ、俺はどう答えようか一瞬迷ったが、


「……」


「…そうだな、今日は泊まるとする。明日好きなときに来てくれ。」

俺は、2つの視線をもらい、泊まることを決めた。






ーーー俺とミルが残り、他の者たちが帰ったあと。

ここには、俺、ミル、結乃、レナ、来菜が残った。

ちなみに、何故ミルが残ったのか…その前に、俺に視線を送っていた2人は誰なのか説明していこう。


「で、ミル、結乃、なんだ?俺に泊まれって目で訴えてきてよ。」

ミルと結乃から視線をもらっていた。そのため、ミルも残る理由があるのだ。



「それで、何を話したいんだ?」

わざわざ、俺以外(ミルはいるが)を帰らせたのだ。他の者には言えないことがあるのだろう。

「それは、私と言うより、ミルからの話だよ。」

と、結乃には違うと言われミルに向き直る。


「…あの、エルってやつ。なんかが体の中にいるぞ。」

「え?なんかって…?」

「と、言うか、ラクトの中にもいるぞ?」

「…は?」

いきなり何を言い出す。俺には全くもって自覚がない。


「そんなこと言われても…てか、それが言いたかったのか?」

「そうだぞ。」

「いや、それならエルの前でも言えば…」

「ラクトよりも強い力を感じた。変に意識させると、危険な目に合うかも知れなかったからな。」


それ、俺にも言わないでほしかった…


「ラクトはまだ弱いから、気にしなくていいと思うぞ。なんなのかは不明だし。」

「不明ってのが逆に怖いわ。」


とりあえず話したいことはこれだけだったらしい。とはいえ、折角、妹と再会できたのだ。結乃たちに言ってから、俺は1人で来菜のいる部屋に。






……来菜は意識を失っている。つまりは、起きることはない。だが、目が覚めてくれないかなと何度も思っている。

「来菜…」

俺はやさしくその頭を撫でる。


結乃に言われるまで、妹を忘れていた。


俺はそのことを毎日のように思ってしまう。なぜ、


『たった一人の唯一の理解者が忘れてしまったのか』


そんなことはあっていいのだろうか。もし、来菜が目覚め、俺が忘れてしまったことを告げれば、きっと悲しませてしまう。




…だからこそ、来菜の意識を奪い、事実を書き換え、自分の存在を(くら)ました…神が許せない。

ラプラス=カルマについては後ほど紹介します。

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