第十二話 隠しごと
…あれから何事もなく時が進み、今は土曜日となった。
「…よし、今日か。」
約束の日となる。ちなみに、エルには結乃の正体を隠して説明してある。
「おい、エル。出かけるぞ。」
俺は準備を終え、エルに呼びかける。
「ラクト、どっか出かけるの?」
リビングに向かうと、エルより先にカナデが反応する。
「ああ、また一日かかるかもしれない。」
「なんか最近出かけるの多いね。もうちょっと遊びたいよ。」
「そうです。」
カナデとフランが文句を言ってくる。別に連れて行っても構わないが、さすがにリスクが高いからな。
「…どこに行くんだい?」
同じくリビングにいたミルが言ってくる。
「あ…そういえばお前神だったな。」
「扱いがひどいな。」
ミルがずっと俺の家でぐうたらとしているのが悪い。
「また神の所行くんだけど…ミルも行くか?」
「ついて行っていいのか?」
「良いんじゃないか?一応聞いてみるわ。」
俺はそう言って結乃にRineで聞いてみる。…すると、ほんの数秒後に『別にいいよ。』と返事がきたので、ミルにも準備をしてもらうことにした。
「待った〜?」
「遅くなってごめんね。」
七香と結乃が一緒に校門前までやってきた。仲良くなるの早すぎだろ。俺とエルとミルはすでに準備をして待っていた。
「それにしても、ラクト君の妹の居場所を知っているだなんて。君も中々強いのか?」
エルが結乃を見てそう感想を言った。
「そこそこかな〜。」
結乃も適当に相槌を打っている。
「それじゃあ行くか。」
「向かうは『ドラードセカイ』だね。《リーヴ》。」
俺たちは再び、神の住まう地へと向かったのだった。
「ーーー。どこに転移した?」
「ラプラスの居る建物の目の前さ。」
しばらくして、周りが見えるようになり、今回は全員しっかりと転移していることを確認する。
「お邪魔するよ、ラプラス。」
エルはラプラスの居る建物の中に入っていく。俺たちもその後をついて行った。
「あれ?エルじゃない〜?」
中にはラプラスさんが椅子に座ってくつろいでいた。
「どうしたの〜?」
「ラクト君。ラプラスは連れていくかい?」
エルに言われる。
「わざわざ入った後に言うなよ。連れて行ってもいいか?」
俺は結乃に聞く。
「別に人数が増えるのは問題ないからね。構わないよ。」
「と、言うことだ。ラプラスさん、一緒に来てくますか?」
「ん〜?別にいいけど、どこに行くの〜?」
「それは移動しながら説明します。」
俺はそう言って、ラプラスさんを連れ、6人で結乃の指示の元、移動することに。その際に、ラプラスさんとついでにミルにも今回の目的の話をした。
「へぇ〜。妹さんがいたなんて。」
「なるほどな。」
ラプラスさんとミルはすぐに話を理解した。
そして、数十分歩くと、
「着いたよ。この先だよ。」
結乃が足を止め、俺らも止まり前を見る。
「よし、行くか。」
俺はそう言い、その不思議な建物の中へと入っていく。そして、そこはーーー…
「っーー!?」
「どこ…ここ…」
結乃は知っている場所だからなんとも思わない。七香やエルたちが不思議と思う中、俺は、ある場所に似ていると思った。
そう、アランと会ったあの「無の空間」に。
ーーーそこは、ほとんどが白色で構造された建物だった。あの、アランと会った場所とは違うと分かっていても、落ち着きづらい。
「結乃…妹は…来菜はどこにいるんだ?」
俺は少し急かすように、結乃に聞く。
「…会うことは簡単だが、ここからは中々厳しいよ。それでも覚悟の上かな?」
こちらを試すようなことを聞いてくる。
「当たり前だ。…そのためにもここへ来たんだ。」
「分かった。こっちだ。」
力強く答えると、それが聞けて安心したのか、俺たちを建物の中のさらに奥へと案内する。
そして、いくらか歩いた後、目の前に大きな扉を見つける。
「もしかして…」
「ああ。その奥に君の妹はいるよ。」
「っ!!」
ついに、ついに会うことが出来る。俺も結乃に言われるまで思い出せなかった、妹の存在。何故、忘れてしまったのか…それを解明するためにも、俺はこの先に進まなくては。
「ここまで、誰とも会わなかったね。」
ふと、七香が言い出した独り言。だが、俺もそれには違和感を感じていた。
「確かにな…見張りとかいないのか?」
「いないよ?ここは私と私の傍付きが住んでいるアジトみたいな所だからね。他の者は一切いないよ。」
「は?」
…なぜ今のタイミングで言うんだ。
「いや、もうちょい早く言えよ!?なんで今になって…」
「…どちら様です?人の家の前でうるさいわね。」
「!!」
俺らが扉の前で騒いでいると、中から人がやってくる。
「…ユノ様じゃないですか。戻られていたのですね。」
「ああ。こいつらは皆、私の客人だ。紅茶を用意してくれ。」
「かしこまりました。」
そう言われ、その人物は中へと引き返していく。
「さあ、皆も入ってよ。」
俺たちは結乃の後に続いて、中へと入っていく。
「ここって…お前のアジトなのか?」
俺たちは席に座り、結乃の傍付きさんから頂いた紅茶を啜りながら質問をする。…この紅茶美味いな。
「そうだよ。誰も中には入れないよう命令してあるから私たち以外ここにはいないからね。」
なるほどなあ。誰も入れないようにと言われているなら、結乃を連れてきて正解だったな…てか、
「お前、なんで一緒に行くのを悩んだんだ?お前いなかったら…」
「そこは大丈夫だよ。…君が自分の名前を言っていれば、会ってすぐ斬られるということにはならないからね。」
「それ俺が自己紹介忘れたら死んでたんじゃねえかよ!?」
こいつ、中々ひどい考えを持っていたようだな。…紅茶美味い。
「で、ここに来るまでのあの白い空間は何なの?」
七香が結乃に質問をする。
「…人の家で考えるなら、あそこは庭のようなものだよ。」
「へぇ、そうなんだ。」
なるほどな。…てか、
「この紅茶美味いな。」
「さっきからずっと飲んでるよね…」
エルにそう言われるが、あまり自覚はない。
「そう言ってもらえると光栄だわ。ラクト。」
「あれ?俺の名前知ってるのか?」
「ええ。ユノ様から聞いているのでね。」
そういえば、傍付きさんが神を殺したと言っていたので、てっきりゴツイ男かと思っていたが、どちらかと言えば幼さが残っている、ちょいお姉さん的な女の子だったなんて。
「…変なことを考えないでください。斬りますよ。」
「いやいやとばっちりだわ!?後、発想が怖すぎる。」
いきなり斬るだなんて言うか普通。
「そういえば、あなたの名前は?」
「あ、言っていなかったね。」
結乃にも促され、その傍付きは一つ、咳払いをしてから
「星ノ使徒『純潔』継承者、ユノ様の傍付きです。」
と、名乗った。…名乗った?
「いやいや、名前は!?」
ついツッコミを入れてしまう。
「ほんと、レナは冗談が好きだね〜。」
「ユノ様ほどではないですけどね。」
そして、再び咳払いをし、
「改めて…ユノ様の傍付き、レナ・アルカードです。どうぞお見知りおきを。」
と、今度こそ名乗った。
「えっと、レナさんって…」
見た目が「人族」ではなかった。
「はい。私は「魔族」です。」
「えっ!!」
七香が大きく反応する。つい先日、同じ「魔族」に襲われたばっかりだからな。
「私は一応、穏便派なので悪しからず。」
と、俺たちに敵対意識は無いと言ってくる。
「そう、なら大丈夫だけど。」
七香もそれで全部とはいかないが、少し警戒を解いただろう。
「ちょっと、いいかな?」
エルが手を挙げる。
「なんだ?」
俺はエルの方向を向く。そしてーーー…
「結乃が、「星ノ使徒」ってどういうことかな?」
「「「…あ。」」」
俺と七香と、結乃は、完全にそのことを忘れてた。
「…私、何かまずいことでも?」
レナさんがそう言ってくる。
「いえ、大丈夫ですよ。…こっちの責任です。」
ミルは何とも思っていないようだが、エルたちには説明をしないで隠していたことをすっかり忘れてた。
「絡斗君。レナと二人で妹の所に行ってきな。」
結乃がそう言ってくる。
「え?…いやだって、」
「ここは私と結乃ちゃんで説明しておくよ。だから行ってきちゃいな。」
と、七香と結乃からそう言われる。
「そうか。分かった。」
「こちらです。ラクト、ついてきなさい。」
「丁寧な話し方は良いが、俺には敬称ないんだな…」
と、俺はレナと一緒に妹の元へ。
「…ここの先か。」
さらに奥の小さな部屋の前にやってくる。
「開けていいですよ。」
レナさんにそう言われ、俺はドアを開ける。すると、
「…来菜?」
俺は、結乃に言われ、妹の存在を思い出したが、姿までは思い出すことがなかった。だが、今この瞬間その姿を見ると、間違いなく妹だと、言いきれる自信があるほどに、鮮明に思い出していた。
「…寝てるのか?」
来菜は目を閉じ、まるで意識がないかのようにベッドに横になっていた。
「いえ、意識がないのです。」
「…え?」
「詳しく説明します。」
俺はそう言われ、レナさんから詳しく事を聞いた。
…要約するとこうだ。
約二年前、レナさんと結乃が神と戦ってたとき、俺の妹…来菜を見つけたと。そして、来菜は神に追われてたことから、結乃が来菜を保護。そして、身を隠すため、ここにアジトを設けたこと。
そこで、来菜から俺のことや、神の『真実』、そして、昔の『ある一件』の話を聞かされたと。
そこからしばらく経ち、ある神の元へ出向くが、その神の力により来菜が意識不明になり、一時撤退し、今に至るまで、ずっとその神と睨み合いが続いていると。
「つまり…」
「ラクトの妹…ライナの意識を取り戻すには、その神を倒さないといけないってことね。」
レナさんが分かりやすく説明してくれた。…俺たちが神を倒すのか。
「……」
いや、ここまで来たのだ。引き返すなんてことはしない。
「…その、神は誰だ?」
レナさんから神の名前を聞き、皆と力を合わせその神を討つ。そして、妹を救い出す。その覚悟はできた。
「…それは、ラプラスだ。」
「…え?」
その覚悟はすぐに揺らぐこととなる。




