第十話 『冥王』
ーーーここは、とあるセカイ…『マデレセカイ』の中の一つ…『冥王』と呼ばれる者が住む屋敷だ。ワタシはそんなところに出向いていた。それは何故か…そんなのは簡単だ。
ワタシ以外、『冥王』を名乗る者は許されない。
「て、敵襲ー!?」
屋敷の目の前にやってくると、門の横に立っている片方の兵士がそう叫んだ。そして、もう片方は、
「たった一人か!?…舐めたものを!!」
怒声を上げながら、ワタシに突っ込んでくる。
「邪魔…「喰」!」
「なっ…なんだっ!!?」
兵士は、見たこともない攻撃に驚いたのか、踏み留まり距離を置こうとする。がーーー…
「無駄。」
それよりも早く、その兵士は、
「ぐっ、ぐがぁぁああーー!!?」
ワタシに『喰われた』のだ。
…数分かけて、屋敷の中、その奥の「玉座の間」にやってくる。少し、雑魚に手間をかけてしまったな。
「ん?なんだお主は…」
玉座の間に入ると、そこに座っている目当ての人物が声をかけてくる。
「まさか…ここがどこか分からずやってきた訳ではあるまいな?」
「もちろん…知ってる。」
ワタシがそう言うと、目当ての人物が立ち上がり、
「儂は、『冥王』ソドム・レイジだぞ。貴様は何者じゃ?」
威勢ある声でそう名乗った。
「…冥王か。」
「なんじゃ?」
「お前は…その名前は相応しくない。」
「…なんじゃと?」
二度目の質問には、やや声のトーンを落とし、まるで、敵と認識した者に発するような声で返された。
「お前のそれは自称か?」
ワタシは問う。
「…どこまで侮辱すれば気がすむ?」
その殺気を感じ取ったか、隣にいた数名の「魔族」たちは怯えていた。
「名を名乗れ、愚物よ。」
ワタシはそんな冥王もどきに言い放つ。
「…例外として数えられた悲しき存在。そんな存在の意志を継ぐもの。星神『冥府を司る神・ハデス』の継承者、プルート。」
「プルート…聞いたこともないな。それに、星ノ使徒か?名も知れぬ弱者が儂に挑もうと?」
ソドムはそう高らかに宣戦布告をしてくる。
「名が残らない者にも、強者はいる。…世間に知られる有名な者でも弱者はいる。」
「……何が言いたいのじゃ?」
「今の言葉は…それぞれワタシたちに当てはまるということだ。」
「ほざくのも大概にするんじゃな!!」
そう、怒りを放ち、ワタシに向かって、冥王は攻撃を仕掛けてきた。
〜〜〜〜〜〜
ーーー「魔族」というのは、俺たち「人族」とは今までずっと対立してきた存在だ。魔物の生みの親とも言われている。そんな「魔族」が複数人ならともかく、単独で攻めに来た?何か目的があるのだろうか。
「お前は?」
俺はその「魔族」に問いかけた。
「《ダーク・プリズマン》!!」
「なっ!?」
「…!!」
一瞬の出来事だった。いきなり、超高度の魔法を放ちやがった。その魔法は魔法の中と外を切り分ける、「除去魔法」の1つだ。
俺は、そのいきなりの魔法を躱すこともできず、飲み込まれてしまった。
「くっ…いきなり、なんだ。」
かなりまずいかもしれない。あの謎の魔族が敵意を向けているなら、おそらく俺は勝てないだろう。
「大丈夫か?」
「!!ユノか!?」
俺だけではなく、ユノも魔法に巻き込まれたのか?
「ラクト君一人じゃ危険だからね。私もとっさに魔法の中に入り込んだのさ。」
「……」
まるで、俺の手助けをしてくれるみたいだ。素直にお礼は言いづらいな。だが、一人じゃなく二人いればなんとかなるかもしれない。
「一体なんのつもりだ?」
もう一度対話を望んで、魔族に話しかける。
「…目的はない。近くを通ったら、魔物がやられてたから見に来た。」
そう、その魔族は答えた。
「…名前は?」
「先に名乗るがいい。」
魔族はそう返事をしてくる。
「なんか癪に障る態度だね。私は、結乃。」
文句を言いつつも、先に進まないと察したか素直に名乗った。俺はそれに続き、
「俺は、絡斗だ。」
自分の名前を名乗ったのだ。
「ワタシは、『冥王』プルート。」
そう、魔族は…プルートと名乗った。
「冥王…?」
その名前は少し聞いたことがある。
魔族の『セカイ』は2つあり、『マデレセカイ』と『イクストセカイ』があるらしい。
特徴として、『マデレセカイ』は穏便世界とも言われ、俺たち人族とも対立をしない平和な魔族たちだ。
一方、『イクストセカイ』は過激世界と言われ、俺たち人とだけでなく他とも争いが絶えない魔族たちが住むセカイである。
また、その2つのセカイも互いに争いをしており、「魔族」全てを支配しようとしている支配者がいるらしい。
過激世界は詳しく知らないが、穏便世界は俺たちとも対立をしないと聞き、珍しいと思い調べたことがある。
そのときに、その穏便世界には支配者が3人いると書かれていた。
それぞれ、『狂気の王』、『粛清王』、『冥王』と書かれている。
「その、『冥王』なのか?」
「そうだ…」
俺の問いにプルートは静かに頷く。
「…おかしいね。」
「なんだ?」
今のやり取りに、ユノが疑問を抱いている。
「確か、今の『冥王』はソドムと言う者ではなかったかな?」
「…ソドム?」
ユノはそう言った。
もしそれが本当なら、今、目の前にいるプルートが名乗った『冥王』というのは嘘になる。
「ソドムは昨日…殺した。」
「「…え?」」
いきなりの事で驚いてしまった。支配者と言われていた人物がそんな簡単にやられてしまうのか?今まで支配者の代替わりは、自分の直系に引き継いだり、認めた人物に授けるものだった。
しかし、今の「殺した。」という発言。上の二つには当てはまらない。
「何も不思議じゃない。ワタシの方が強かった。それだけ。」
俺たちの驚きは他所に、淡々と言葉を発してくる。
「ここに来た理由は、戦うためじゃないのか?」
「ワタシは『マデレ』に住んでる。過激派ではないからね。」
そう言い、俺たちには敵意を露にしなかった。
「…だけど、一応宣戦布告はしておく。」
「…なんだ?」
今までと雰囲気が変わり、身構える。
「いつか、もしかしたら戦うときが来るかもしれないから、そのときのために名乗っておく。」
「名乗る?…今、プルートって…」
俺の言葉を待たずして、告げた。
「ワタシは星神『冥府を司る神・ハデス』の継承者、プルート。」
今、プルートは確かに、星神継承者と言った。それはつまり、
「…お前は…「星ノ使徒」!?」
「……」
「そう。名も残せぬ悲しき逸話を受け継いだもの。ワタシはそんな星神の『使命』を全うするつもりでいる。」
「『使命』…?」
「そう。星神から与えられた力とともに、今自分のすべき行いが定められている『星ノ書』に従って行動する。」
また新しい言葉が出てくる。分からないことはユノに聞くとしよう。
「ラクト、ユノ、また会うときがあれば、『使命』に従い、友となるか敵となるか…楽しみにしている。」
そう言い残し、プルートは魔法解除の霧と同時に、姿を消したのだった。
「ちょっと!日向君、黒瀬さん大丈夫!?」
魔法が解け、俺たちが元いた所に戻ると南先生がすぐに駆け寄ってきた。
「はい、大丈夫です。」
「……」
「ユノ?」
「…ぁ、大丈夫、です。」
どうしたんだ?急に黙っていて。
「よし、みんな無事ね?他の先生と確認したけど、魔物がやってきたのはここだけだったみたいで。他のところはもう模擬戦闘が終わったって。」
ここだけだったのか。…何か目的でもあったのだろうか?
「私たちの班は特別に、明日、模擬戦闘の続きをやるから。朝来たらすぐにここに集まってね。もちろん終わってる人もよ。今日はここで解散となります。他の班も帰ってるから。気をつけてね〜!」
そういえば、今日は午後放課だったか。みんな教室にぞろぞろと戻っていく。先生もいつの間にかいなくなっていた。
「ねぇ、絡斗。さっきのは?」
七香が俺に聞いてきた。俺はさっきの事を七香に説明する。
「まじか。星ノ使徒だったなんて。それに、『冥王』を殺して自分が『冥王』になるって、やばくない?」
「正直言って、『異能』とか一切分からないからな。」
「ほんとによく生き残れたね。」
「ほんとだよ。…どうやら、プルートは俺らに敵意がないみたいだ。穏便派の魔族らしい。」
「へぇ。それは良かったわね。」
「ただ、『使命』によっては敵になるかもとは言ってたな。」
「何それ?」
「俺も分からない。…だから、今から聞くとするか。」
「聞く?誰に?」
そんな七香の疑問に答えるべく、俺はある人物に向かい合う。
「約束だ。教えてもらうぞ?ユノ。」
「ユノ?…もしかして、」
「ああ。黒瀬さんは…星ノ使徒のユノだ。」
「っ!!」
その言葉に七香は過剰に反応した。
「なら早く仇を!!」
「落ち着け。お前が取り乱してどうする。」
「な!?だって…」
七香は納得がいかないと俺を睨みつけてくる。
「俺も仇はとりたい。だが、それよりも重要なことがある。」
俺はそう前置きをし、改めてユノに問いかける。
「妹の居場所と、その他色々…教えてもらうぞ。」
「……」
しかしながら、ユノは先程から無言だ。
「おい、どうしたんだユノ?なんかおかしくないか?」
俺はそんなユノに近づき、肩を掴んで軽く揺すってみる。
「ちょ!?大胆すぎじゃ…」
確かに、「敵」に対する行動としては馬鹿すぎている。
「!!おっと、悪いラクト君。ちゃんと話は聞いていたから安心してよ。」
ようやく気づいたか、俺たちに向かい合った。
「ラクト君の妹の居場所…それと、君たちが今気になっている『使命』とやらのことだね?」
ソドム・レイジ
???歳、誕生日不明、血液型不明。『異能』は不明。魔族で、支配者の一人、『冥王』であったが、プルートにやられ、今は故人となっている。
プルート
18歳。誕生日は11月26日、血液型はA型。『異能』は不明。「魔族」である。名を後世に残すことのなかった星神の継承者で「星ノ使徒『冥府』継承者」。『継承』は不明。




