第八話 「魔法科」Aクラスの模擬戦闘
「それでは一番目の人、準備してね〜。」
私は、先生にそう呼ばれて準備のため先生の元へ向かう。
「んじゃ、行ってくるよ。」
「おう。」
しっかりと、絡斗に挨拶を交わしてから向かう。…これが、私の落ち着くための行動の一つでもあるのだ。
「よろしくね、七香ちゃん。」
「よろしく!戦闘だからね、手加減はしないよ?」
「分かってるわ!」
私の相手となるのは、クラスの中でも明るく元気に振舞っており、クラスのムードメーカー的存在である、倉木舞子ちゃんだ。
「それじゃあ、泉エリアの戦う場所に転移させるからね。転移し終えたらすぐに戦闘開始となるからね。」
南先生が、最終確認として丁寧にもう一度説明を繰り返していた。
「2人ともがんばってね!《アカンパニー》!」
南先生が、指定した範囲にいる者全てを転移させる《アカンパニー》を使い、私と舞子ちゃんは転移した。
「…よし。」
転移が終わり、目の前の視界が徐々に開けてくる。
そして、転移が終わると同時に戦闘が開始と言っていたから、この時点ですでに始まっている。
まずは、舞子ちゃんの位置を…
「え?」
周りを見渡すが、どこにも舞子ちゃんの姿が見当たらなかった。
転移の失敗はありえない。だとすると…
「くらえー!《サンドランス》!」
なっ…!?どこからともなく声が聞こえ、魔法の詠唱が終わる。この声の居場所はーーー…
「背後の…上空!」
いつのまにか後ろに回られ、上へ飛び出たタイミングでの魔法だろう。
「《フレイム》!」
私はなるべく強い魔法を使わないよう注意をしながら魔法を選ぶ。私の魔法《フレイム》は遅れて放ったが、ギリギリ間に合い、舞子ちゃんの《サンドランス》と衝突する。
「くっーーー…!!」
「うわぁ〜!?」
大爆発を起こし、舞子ちゃんは防ぎきれず飛ばされる。
それにしても、
「…思ってたより強くない?」
舞子ちゃんは今回の測定で土属性が 18 だったはず。
「くっ…流石だね。」
舞子ちゃんが私に素直な言葉を放つ。私も測定では今回、 16 にしていたので人のことは言えないけどね。
それにしても、
「《サンドランス》は、中級並の魔法じゃん。」
そこまで習得してるとは思いもしなかった。
「これは、中々手強いね…」
私は、まさか学校でここまで戦闘に燃えることになるとは思いもしていなかった。
「はっー!」
舞子ちゃんや、クラスの人はまだしっかりとした魔法を習得した者は少ないだろう。現に、魔法の元…「元素」を放出しての攻撃となっている。
「《フレイム》!!」
私はと言えば、さっきからずっと《フレイム》を連発している。舞子ちゃんはおそらく、初発の《サンドランス》で大方の魔力を消費しただろう。以降、未だに魔法は使用していない。その分、私の魔力量は舞子ちゃんたちと比べれば天と地。このまま《フレイム》を連発し続けられる。
「くっ!…こんなに連発できるなんて…!!」
舞子ちゃんも上手く躱してはいるが、全てとは行かず、時々当たってはいる。…このまま連発すれば、さすがに力がバレちゃうかも?先生も、危険と感じたら終了すると言っていたし、この戦闘は泉エリアで戦闘する人たちには見られていると考えたほうがいいわね。
「うおーー!!」
私は、《ヒート・ウェアー》に似せた、火属性「元素」を両手に纏い、舞子ちゃんに突撃する。
「ッー!!《アース》!!」
残りわずかの魔力を消費して、目の前に土の結晶を生み出し攻撃してくる。
「はぁぁ!!」
私はそれらを正面から打ち砕く。
「くっ!?」
そして、一瞬にして舞子ちゃんの懐へ。
「くっ!」
「おりゃあ!」
私に対抗するように、舞子ちゃんも「元素」を纏って打ち合う。…まさか、見ただけで真似たのだろうか?そうだとしたら、本当に、このクラスは優秀な人の集まりなのかもしれないね。
…あれから、数十秒打ち合った。たった数十秒、しかし私にとっては何分も打ち合ったかのように思えた。
「そこっ!」
「くっ!?うっーーー…!!」
打ち合いの中、わずかな隙ができた。そして、そこを見逃すことなく私はストレートを決め込んだ。
舞子ちゃんは大きく後方に飛ばされる。
さすがにこれなら、私の勝ちかもしれないね…
「……ッ」
「!!…嘘、タフ過ぎるって…」
それでも、もう一度戦おうと、舞子ちゃんは片膝をつき、体を起こしたのだ。だがーーー…
「戦闘終了よ〜。10分経ったのでね。」
空から、南先生の声が聞こえる。
「はぁ〜。私の負けかぁ。」
「ものすごく強かったよ。私も危なかったよ。」
「いやいや、七香ちゃん強すぎるよ〜。」
私たちは互いに手を取り合い、転移してきた南先生と一緒に元の場所へと戻ってきた。もちろんそこで、2試合目が始まるまでの準備時間中、私と舞子ちゃんは南先生から「治癒魔法」をかけてもらっていた。
〜〜〜〜〜
ーーー凄いな。一応手加減として、見た感じ中級以上の魔法を使わず戦ってはいたが、それでも七香といい勝負をするだなんて。あの…なんだっけ、倉木さんだっけ?…まぁ、今七香と戦ってる子でもおそらくクラスの真ん中あたりの実力だろう。今、雄二がいる上の方の実力者たちはどれほどの力を持っているのだろう。
まぁ、今は皆未熟と変わらないも同然。ここからの伸び代はまだたくさんあるからな。俺も七香もいつまでも余裕ではいられない。
「おかえり。」
「ただいま〜。」
七香が戦闘を終え、「治癒魔法」も終わり俺の元へやってくる。
「強かったな、相手。」
「ほんとよ。私たちも結構危ないかもね。…手加減やめる?」
「今やめたらものすごく怪しいだろ。…まぁ、それでも誰か一人でもものすごく強くなれば俺たちも手加減しなくていいかもな。」
自分たちと同じくらいの実力者がいれば、力を隠さなくても不思議ではなくなるからな。
「次は?」
「聞いときなよ。確か、河井君と柚木さんだったかな。」
「あれ?男と女で戦うこともあるのか?」
こういった授業では男同士、女同士を想定していたが…
「先生が、実戦形式でやるためにもその差はつけないって。だから、戦う相手はたぶん、先生の独断か、くじ引きとかで決めてると思うよ。」
「なるほど。」
全て本番を想定しての模擬戦闘ということか。
「どっちが勝つんだろうね。」
「うーん、こういうのは男が有利に思えるけどな…」
河井光輝は体格もしっかりしている。さらには、魔法の適性も火属性が 20 もある。ここにいる10人の中では2番目に高い。実力もかなりあるだろう。
一方、柚木咲貴は、女の中では結構大きめでどちらかと言えば男勝りな部分が多い。魔法の適性も水属性が 19 もある。
どっちが勝っても不思議ではないだろう。
…ちなみに、これらの情報は全て七香から得た情報であることをお忘れなく。七香がいて助かるな。
「雄二の方も気になるね。」
「それな。雄二の事だ。姉から特訓を受けてもらってるだろうし。ぼろ負けはないだろう。」
こことは別のところで戦っているであろう雄二の事を考えながら、モニターのようになっている…《リネクト》と呼ばれる、対象者付近を大きく見ることのできる魔法により、戦闘風景を見ていた。
暫くして、戦闘が終了する。勝ったのは予想外にも柚木さんの方だった。
「すごいね、柚木さん…男に勝っちゃうんだもん。」
七香も素直に褒めていた。
「はいは〜い。では、3試合行くわよ〜。」
南先生がそう言い出す。
「では、3試合目は〜、日向君と黒瀬さんですね。」
「っーー!!」
「まじか。」
俺と七香は互いを見る。…黒瀬さんとはあれから話してはいないから実力は未知数だ。
「そういや、黒瀬さんは…」
確か、最初名前が同じだからと言う理由で、一度「星ノ使徒」ではないかと疑いをかけていた。
「いや、違うんじゃない?私も調べてはいたけど、変なところなんてないし。」
「そうか。」
でも、なんか黒瀬さんとは戦いにくいな。いや、勝手にこっちが意識しているから申し訳ないんだが…
「とりあえず、行ってくるよ。」
「行ってらー。」
七香から激励(?)を受けて、俺は南先生の元へ。
「それでは、始めますよ〜。」
そして、俺と黒瀬さんは転移の魔法に包まれて、
「…え?」
俺は、目の前にいる黒瀬さんを何故か凝視していた。
転移が終わり、戦闘が始まった。が、俺も黒瀬さんも互いに向かい合い動こうとしない。音までは聞こえないので、会話内容は漏れないのが唯一の救いだ。なぜなら、今から俺が聞こうとしていることは誰にも聞かれてはいけない。それはーーー…
「黒瀬さん…あんたは、「星ノ使徒」の…ユノだな?」
「……」
黒瀬さんは何も答えない。もし、全く違うのなら質問の意図すら分からないだろう。
だが、何故だろう。
俺は今、つい先の言葉を確信を持って質問したように思える。
だって、そうだろう。前会った時と、今では力が全く違う。猛特訓をしたのか?いや違う。まず、根本が違っている。まるで、そう……
「ふふっ。力を根本から隠しているのによく気づいたね。ラクト君。」
「ッ!!」
最初から力などないかのように隠していたのだ。
「根本的な力を隠すことはできないと思っていたね?」
「……」
「それは間違いさ。上級者は完璧な手加減ができるんだよ。」
黒瀬さんは…いや、ユノはそう俺に告げてきた。
「…よく、気づいたね?強くなったのかな?」
俺は今目の前にいる人物に対して複雑な感情を抱いていた。
今回からクラスメイトの紹介入ります。
哀川実
17歳、誕生日は4月18日、血液型はAB型。『異能』は不明。
倉木舞子
16歳、誕生日は2月4日、血液型はB型。『異能』は不明。
河井光輝
16歳、誕生日は1月2日、血液型はAB型。『異能』は不明。
柚木咲貴
16歳、誕生日は9月23日、血液型はB型。『異能』は不明。




