第一話 魔法と魔物
今回から第2章となります。
ーーーここ、上岡高校…通称「上高」と呼ばれる高校は、俺の住んでいる街の中でもそこそこ有名で、偏差値もそれなりには高い高校だ。俺はそんな高校に通っている。もちろん偏差値の高さだけでなく、有望な能力者を多く卒業させた所としても話題になっている。ここの校長は王庵蓮弘と言う。実力もかなり高い。また、彼の兄は幻藏と言い、五豪の一人である。
五豪と言うのは俺たち「人族」の中で、5本の指に入る実力者のことだ。王庵幻藏は60代にも関わらず、腕が全くと言っていいほど衰えていない人物だ。彼は、剣士としての道を歩んでいる。愛刀は「斬岩刀」と呼ばれるものらしい。だが、その幻藏の弟であり、俺の通う高校の校長先生…蓮弘先生は剣術より魔法を得意としている。同じ環境に生まれ、同じ家庭で育ったとしても、全く同じく育つことはないということなのだろう。
一時間目の「国語」は何もなく淡々と授業が進み、休み時間に入った。
「次はやっと魔法の授業ができるんだね。楽しみだよ。」
休み時間になるなり、俺の席にやってきた雄二がそう言ってきた。
「早く魔法を試したいって顔してるな。」
俺はそんな雄二を横目に答えた。ちなみに、七香はトイレかどこかに行ったようで席にはいなかった。
雄二は席が空いていたとしても、紳士だからなのか座ろうとはせずに立ったまま話を続けた。
「そもそも僕たちは魔法の概念とか、そんなことは一年で習ったけど実戦的なものは何も教わってないからね。自分がどのくらい魔法を扱えるのかが分からないんだよ。」
「あ〜確かにな。」
一年のときはあまり実戦に向けた内容は多くなかった。そのため俺や七香みたいに、前から「魔法」やその他について詳しく知っていない人は「能力者」と言っていいのかすら怪しい状態だ。現に、
「そういや、雄二の『異能』って…」
「まだ使えてないんだよね。」
こちらが『異能』について説明していないので、もちろん雄二からも『異能』について聞こうとは思っていない。だが、雄二が言うには雄二の持つ『異能』は自分自身の強化系に近いものらしい。ジャイ二さんやカナデみたいなものだと思っている。実戦がないのだからそういった『異能』は使い道がないのだろう。
「あんたたち、そろそろ始まるよ?」
「あ、そうだね。おーし、楽しみだな。」
戻ってきた七香に言われ、雄二は自分の席に帰っていく。
「楽しそうにしてるね、ほんと。私たちの苦労も知らずにさ〜。」
そんな雄二を見て七香があきれたような顔をする。
「ま、まあ、俺たちも最初はあんな感じだったんだよ。たぶん。」
「そうかな〜。『あの場所』でうきうきしていられたような気がしないんだけど。」
『あの場所』とは俺たちが昔、今の雄二みたく「魔法」や「能力」に詳しくなかったときにある理由で通った所だ。今はその話はしなくていいだろう。
「そうだ。」
「ん?」
七香が何か閃いたような顔をした。
「雄二が上手く能力を使えるようになったらこっち側に引きずり込んで勢力を強くしよう。」
「やめとけ。雄二が可哀想だ。」
なんてことを思いつきやがるんだコイツは。
「今の私たちの目的はあんたの妹?と例の星ノ使徒探しだよね?」
「…あぁ。ほんとに妹のこと覚えてないんだな。」
「ぁ…ごめん。」
「いや気にするな。何か訳があるんだろう。」
そうでなきゃ、俺と何故かユノは知っていたが、それ以外全員が存在を忘れるなんてことはおきないだろう。
「そのことを聞くためにも土曜日、神に会いに行くんだからな。」
「そっちの目的もあったんだね。っと、授業が始まるね。」
幸崎先生がクラスに入ってきた。
いよいよ、始まるな。
「まずは、今日から本格的に実戦向けの訓練を始めていく。」
幸崎先生が目の前に魔法陣のようなものを展開した。
これは、《マナチェック》だな。
戦闘では全く役に立たず、こういった教育の施設に通うものが習得するような魔法だ。
「これは《マナチェック》と言います。対象者がどれほど魔法を使えるかの確認をとる魔法です。この魔法を使い、皆さんの現状での力を把握したいと思います。もちろん、ここでの測定は成績や今後には影響はしません。…それでは、端から順番に並んでください。」
そう言われ、全員がおもむろに立ち上がった。
「ねぇ、これってあえて手を抜いた方がいいの?」
「そうしたほうがいいかもな。ただ、あの魔法の効果って、自分が発した力を確認するのか、体内の力を確認するのかによるんだよな。」
「あぁ、確かにね。」
もし後者であれば、隠すや手を抜く、騙すといったことができないため俺たちの力がバレてしまう。
俺たちは、一番最初に並んだ人のことを凝視した。
「では、この魔法陣に向かって手をかざし、今、自分の出せる最大の力を放出してください。」
先頭の、風野さんが先生にそう言われ、その通りに動いた。
そうすると、魔法陣が淡く光り輝いた。
全員が今起きた出来事に感動を示している。
「OKです。では次。」
先生がそう言い、風野さんは席に戻り、次の人が進んでいく。個人情報のため、周りには秘密ということだろう。
「これなら、手加減できるね。」
「そうだな。」
わざわざ、ここで自分が力を使えると教える必要は何もない。俺と七香は手加減することを決めた。
スムーズに事が進み、クラス30人全員の確認が終わった。残り時間は約20分。
「それでは、まずはこれから学ぶものについて説明しようと思う。」
先生がそう前置きをする。
「最初に言ったようにも、私たちの目的はこの『ニホン』の平和だ。そのために、その平和を脅かす「魔物」を倒すことが最大の目標でもある。もちろん、それ以外にも「他種族」という立場の危うい者もいるのだが、今は後回しで問題ない。」
生徒たちは真剣に聞いてはいるが、「魔物」と実際に対面したものはいないだろう。ほとんどが考え込む姿勢をしている。
「その「魔物」を倒すためには戦う力が必要だ。そこで、皆にはこれから「魔法」をより強力に扱えるように授業をしていく方針にあります。」
説明が終わる頃には、もう二時間が終わるというところだった。
「三、四時間目は「実習」となる。休み時間の内に、体操着に着替えて校庭に集合してくれ。また、ある程度魔法を上手く使えるようになった場合には、戦闘向けの衣服を用意しておくといいぞ。」
そう言い残し、先生はクラスを出ていった。
「ねえねえ、戦闘服ってどういうのがいいかな?」
体操着に着替えるため女子は更衣室に向かい、男子は教室で着替えることとなった。雄二が着替えながら近づいてくる。
「どうって言われてもな。自分に合うやつだろ。」
「うーん。難しいね。」
「てか、戦闘服の話、気が早くないか?」
「やっぱりこういうのは早めから考えるべきだよ。」
前向きなところが雄二の良いところだな。
俺たちは着替え終え、校庭に向かいながら話を続けていた。
「何をやるんだろうね?」
「さすがに基礎を覚えさせられるんじゃないか?」
魔法の基礎…それはつまり、魔法を自在にコントロールすることだ。これは意外と難しい。魔法を放出、纏う、そして解除…最初のうちは覚えるのが大変だが一度覚えれば、自転車のように忘れることはまず無い。
女子たちも着替えが終わったのか、ぞろぞろと校庭にやってきた。
「筋肉痛だからあんま動きたくなーい。」
「そうは言っても、今日はあまり動かないだろ。」
やって来るなり、七香は不満を口に出す。
「全員集まっているな?」
幸崎先生が校庭にやって来た。先生は戦闘服と言うような、いつものスーツとは違う姿をしている。
「では、まずは基礎として「属性」というのを知ってもらう。」
先生は説明を始めた。
「魔法には7つの属性がある。火、水、土、風、光、闇、無だ。」
雄二がとなりで「闇属性…なんか、かっこいい響きだな…」と、謎に感心しているが気にしないことにしよう。
「7つの内、光、闇、無は習得が難しいため、今はあまり説明をしないことにする。今回は火、水、土、風の4つを学んでもらう。」
「丁度いいな、七香も苦手な水属性を克服できるんじゃないか?」
「学校の授業で克服できればいいね。」
「仮にもトップだぞ、ここの学校。」
確かに、トップとは言っても苦手なものを克服させるのは容易くないだろう。
「てか、絡斗のほうはどうなの?」
「どう、とは?」
顔を寄せ、小声で話す。
「今、「治癒魔法」が使えないのって、「治癒魔法」っていう魔法の種類が使えないの?それとも水属性か光属性が使えないのか、その2つの「複合」が使えないのか。どれなのか確認した?」
「……」
「どうなの?」
「完全に忘れてた。」
「馬鹿でしょ。」
確かに、いま七香が言ったようにどういう状況なのかをはっきり把握してなかった。
「ま、まぁそのうち確認しとくよ。」
「なるべくなら土曜日までに確認しときなよ。」
「なんでだ?」
「ついでに、そのことも聞いちゃいなよ。」
「あぁ〜なるほどな。」
七香の言う通りだな。近いうちに確認しておかなくては。
「では、今日はそれぞれ得意とする属性を探して欲しい。もちろん、適性が全くなくても、ある程度使えるようになるくらいなら頑張ればできる人もいるだろう。だが、今は得意なものを伸ばす期間にしてほしい。」
いよいよ本番になるわけだな。
「ーーーでは、属性魔法のやり方を教えよう。」
人物紹介をします。
王庵蓮弘
57歳で誕生日は1月18日、血液型はA型。『異能』は不明。絡斗が通う上岡高校の校長先生である。
王庵幻藏
61歳で誕生日は12月30日、血液型はA型。『異能』は不明。蓮弘の兄であり、「五豪」の一人である。
「鬼の亡者」という異名を持つ。




