第十二話 儀式
会場へ向かうと、そこには質素な表彰台のようなものが置かれており、周りに人だかりができていた。
「結構にぎやかだね。」
「そうだな。」
「ボクたちもあの人の集まりに混じればいいのかな?」
俺たちが近くまで来ると、カナデが走ってやってきた。
「やっと来た〜。もう始まっちゃうよ。」
「おう。」
「こっち来て〜♪」
カナデに言われるままに、俺たちは後を追った。
人だかりの中に混ざり、式が始まるのをみんなで待つ。
「それでは、簡単にではありますが儀式を始めたいと思います。」
そんな風に、アナウンスが流れ周りは静かになった。司会は「討伐隊」の隊長マルクが務めていた。
「この度、非常に悲しき事態となってしまいました。結果、「討伐隊」からも負傷者が多く出て、長であったジャイ二様がお亡くなりになってしまった。」
その言葉を聞き、現実なのだと再認識させられた村の人々がざわめき始めた。
「だが、いつまでも過去を引きずってはいられない。『セカイ』を消されてしまった我々はいつか他の『セカイ』を奪う側にならなくてはいけない。」
残酷な世界だ。奪われたら、関係のない者から奪ったりする。それが繰り返される世界を誰が作ってしまったのか。アランが世界を隔てたと聞いたが、こうなることを予想していなかったのだろうか。
「ここで、次期長を決めることとした。さあ、来てください。」
そうマルクが言うと、後ろから一人の少女が現れた。
「ジャイ二様の唯一の血縁関係であるフラン様だ。」
服装もドレスを着ていてオシャレしていた。
「フランちゃん可愛いね。」
「そうだな。」
俺もカナデの意見に賛成だ。年下を思わせない気高き姿をしている。
「次期長をフラン・レッド・ウールガンド様とする。」
その瞬間周りから拍手が起きた。
「それではフラン様、一言を。」
マルクに促され、フランは前に出る。
「改めて、長になったフラン・レッド・ウールガンドです。早速で悪いのですが、この村の人々の平和はマルク団長に委ねたいと思います。」
その予想外な発言により、周りが驚き出した。
「フ、フラン様!?」
マルクも同様に驚いている。
「私は、この儀式を終えたあと、そちらにいるラクトさんのもと、つまり旅に出たいと思っています。」
俺の方を指さしながらフランがそう口に出す。瞬間、ほぼ皆が俺の方を見る。
「ちょっ!?」
さすがにこれは俺も驚く。
「ラクトさんは私たちを救ってくださいました。」
その言葉に誰かが、
「救ったって…何をだよ?」
長に対する言葉遣いではないが、それを気にとめず
「もし、ラクトさんがいなければ私たち自身も死んでしまったかもしれません。「討伐隊」の方たちに聞いてみてください。」
それを聞き、声を発した人は押し黙った。
「それに、おじ様の仇を取りたいのです。そのためラクトさんの後をついて行き、強くなりたいのです。」
小さな女の子が話しているにしては、やけに力強い言葉に周りの者たちが一斉に押し黙る。
「ですので、皆様のことはマルク団長に任せたいのです。お願いできますか?」
フランはマルクに向き直ってそう言った。
「…そこまで言われては仕方ないですね。ラクトさんの元ならばこちらも安心できます。…村の人々は私に任せてください。」
マルクも強い意志で、フランの言葉を受け取った。
「私からの言葉は以上です。」
一礼し、後ろへ下がっていった。
そして、儀式は終わりを告げた。
ーーー皆が儀式の後片付けをしている中、俺たちは帰る準備をしていた。
「七香、忘れ物とかないよな?」
「ん〜、あるとすればお土産を買ってないな〜。」
「それは、もう無理だろ。」
『セカイ』が消えてしまったので、お土産も何も無い。
「んじゃあ、一応大丈夫かな。」
「よし、俺たちはもう帰るとするか。」
「え?もうちょい残んないの?」
「あまり長く居ても迷惑だしな。今、カナデとフランが皆に挨拶して回っているから。それが終わったら帰るぞ。」
「はーい。」
俺も、とっくにウノさんや「討伐隊」の皆、メイには挨拶を済ませてある。
暫く経ったあと、カナデとフランが戻ってきた。
「準備できたよ♪」
「私もできました。」
2人とも準備ができたようだ。
「よし、戻るか。エル、よろしく頼む。」
「はいよー。じゃあ行くよ?」
そして、エルの魔法により俺たちはここ元『レッドセカイ』を後にする。
「おお〜♪」
俺の家の前に着き、カナデが驚いたように声を出す。
「ここが違う『セカイ』か。なんか雰囲気が違うね。」
「確かに、私も初めて違う『セカイ』を見ました。」
「そういえば、俺たちのここって名前あるのか?」
俺はずっと『ニホン』と呼んできた訳だが…
「?ああ、ここは正確には『ヒュームセカイ』と言うのさ。」
エルが俺の疑問に答えてくれた。
「初めて聞いたな。」
「私もー。」
俺と七香は初めてここの『セカイ』の名前を耳にする。
「でもなんか広くない?ここが丸々『セカイ』なら。」
カナデが疑問に思う。確かに、『レッドセカイ』に比べて、俺たちの住む『ヒュームセカイ』はかなり広い。
「それは、アランによって決められたみたいだよ。数が多い種族はそれに合うように『セカイ』が大きいのさ。」
なるほど。だが、大きいほど危険性も高いわけだが。
「私たちの『セカイ』も消されないように気をつけないとね。」
「ああ。」
七香に言われ改めて認識する。この世界のルールに。
「ここがラクトの家か〜。」
ずっと外で話すのもあれなので、皆を俺の家の中にいれさせた。
「俺らの『セカイ』広くないか?かなりやばい気がするんだが。」
「そこまで心配する必要はないと思うよ。そもそも『ニホン』と呼ばれるここは2つの『セカイ』がある。」
「まじ?」
さらに初耳だった。
「東側が『ヒュームセカイ』、西側が『リュームセカイ』となっているのさ。」
「へぇ〜。初めて知ったわ。」
「東西で分かれてるのか。」
それにしてもエルはなんでも知っているんだな。かなり頼りになる存在だな。
「私たちはここに住めばいいんですか?」
「えっ?」
フランの言葉が無視できない内容だったので思わず聞き返す。
「他に家がないので…それに、ラクトさんの家なら問題ないですよね?」
「お、おう…」
まあ、さすがに問題ない…よな?
「いざとなったらボクがいるから心配ないさ。」
「そ、そうだな。」
俺の家にはエルも住んでいるから問題ないだろう。
「えっ…と、私もいいの…かな?」
カナデが恐る恐る聞いてくる。
「まぁ、エルがいるし、一緒に居たほうが安全だろうから、別に問題ないよ。」
「そ、そう?そらは良かった♪」
少し、うれしそうに笑顔を見せた。
「私もここに住もうかなー。」
「えっ!?」
まさかの、七香が変なことを言ってきたので本気で驚いた。
「皆いるし、なんか仲間はずれ感が強いし。」
「そうは言ってもな。同じ家から同じ学校に行くのはさすがにやばいだろ。」
それに、七香も家はこの近くなので毎日俺の家に来ることくらい問題ないのだが。
「まぁ、考えておきなよ。ボクたちはむしろ一緒にいるほうがうれしいからね。」
「分かったわ。」
「ちょ…」
エルが余計なことを言いやがった。
「そろそろ暗くなるかもだし、私は帰るとするかね。」
七香が立ち上がり、荷物を持って外に出た。俺も後を追い外に出る。
「明日からまた学校だな。」
「ほんと。休日らしい休日を過ごせなかったね。」
この2日間かなり忙しかった。
そして、明日から普通に学校が始まる。
「じゃあ、また明日学校でね。」
「おう。七香も気をつけて帰れよ。」
そう言い、お互い手を振って七香が見えなくなるまで俺は外にいた。
「ボクたちもお風呂に入って寝るとするか。」
そうエルが言い、3人はお風呂に入っていった。
……ちなみにお風呂イベントなどというものは何も起きていない。
俺も風呂から上がると、3人はゆったりとくつろいでいた。
「寝るんじゃなかったのか?」
「いやぁ、お風呂に入ったら目が覚めてしまってね。まだ、いつも寝てる時間になっていないし問題ないさ。」
「そうか。俺は先に寝るぞ?」
俺はそう言い部屋を後にする。
「そうか、おやすみラクト。」
「おやすみ〜♪」
「おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
皆と一言を交わし、俺は自分の部屋に戻った。
「はぁ、また明日から大変だな。」
疲れからか、ベッドに入り目を瞑るとすぐに寝てしまった。
こんにちは、生贄さんです。今回は魔法の説明の続きをします。
「転移魔法」
…対象者(一人でも複数でも)を今いる場所と違う座標の位置に移動させる魔法
・《ホールゲート》…闇と土の「複合」




