第十話 大切なもの
ーーー再びユノと対峙する。
こちらにはパウロとライニがいるため、人数で言えば先程よりもやや有利か?
「フッーーー!!」
「おっ…と。」
ガチンッーーーと、不意にユノの後ろから攻撃をした何者かの武器とユノの腕がぶつかり合う。武器にも負けないほど硬いのか…
そして、後ろから攻撃した人物とは…
「ラーチス!」
「間に合ったか?ついさっき、他の奴らを癒し終えて、避難させたところだ。」
周りを見ると、いつのまにか倒れていたものたちがいなくなっていた。
「ここからは俺も戦うぞ!」
これで、ラーチスも加わり、4対1の状況だ。
「少々、力を出すとするか。」
次の瞬間、ユノが俺たちの目前まで迫ってきていた。
「やばいっ…!!?」
「くらえ《ネオテンペスト》!!」
「「「ぐっーー!!!?」」」
「《ランド・ウェアー》!!」
俺たちはユノの魔法により、大きく吹き飛ばされる。
まるで、そこは災害後の中心地かのように地面が抉れていた。立っていたのはユノだけだった。
俺たちはかなりの深手を負った。
ラーチスは咄嗟に左半身で身を守ったせいか、左腕が吹き飛んでなくなっていた。
パウロとライニは、ラーチスが盾となったため目立つ傷はないが、それでも重い一撃を受けたせいか気を失ってしまった。
俺は、直前で「付与魔法」で身を守ったため、なんとか意識を保つことができている。
《ネオテンペスト》…かなり強力な攻撃魔法だ。この魔法をも使えるのか…
「ほんとに、すごいよ君は。」
「くっ…!!」
なんとか膝をつきながらも立ち上がった。
「いい戦いぶりだ。尊敬するよ。だけど、もう手遅れのようだ。」
「なん…だと?」
そう言いながらユノは指を鳴らす。すると、二人の途中でこの場を去ったはずの黒服が現れた。
そして、その片方が、何かひし形のような形をしていて青白いものをユノへと差し出した。
「それは…?」
「これかい?これは『核』だよ。この『セカイ』のね…」
「ーーー!!!」
『核』…それは、手に収まるほどの大きさだった。
初めて見たが、ここまで小さいものなのか。
そしてーーー、
もう片方も、何やら手に収まる大きさの、黄土色で鉱石のような歪な形をしているものをユノに渡す。
「何!!?そ、それは…秘石じゃないか!!?」
意識はかろうじて残っていたラーチスが、それを見たとたんに驚きを露わにする。
「秘石」…たしか、ユノが交換条件として提案していたもののはず。
「それを入手したから…人質は必要ないって…」
「あー、聞こえてたのね。まぁ、そんな感じかな?」
「な、なんで貴様が秘石を持っているんだ!?どうやって探した!?」
「それは秘密〜。」
俺は未だに、秘石の効果を知らないが…それでもこの状況はかなりやばい。『核』と「秘石」がユノの手にある。それに、いつでも奴は『核』を壊すことが出来る。すでに残り4個を見つけている可能性もある。このままでは…俺はまた……
「ーーー大切なものを失うことになるね。」
「ッーー!!」
確信を突かれる。だが、それはつまり…
「やっぱり…お前は俺の事を知っているんだな?ユノ。」
「そうだよ、ラクト君。」
俺の質問に肯定するかのように、明かしていないはずの俺の「名前」を口に出した。
「また、大切なものを失うことになる……か。」
ユノの発した言葉を反芻して、少し考え込んだ。
どこまで、俺の事を知っているのか?
「ふふっ。ラクト君の情報をどれくらい私が知っているのか気になるのかな?」
「……」
まるで心を読んでいるかのように言葉を発した。
「教えてあげよう。私が知っているのはたった一つさ。」
「たった…一つ?」
「ーーー君に、『双子の妹』が存在していることはね。」
「ッーーー!!?」
それを聞いた途端、俺はまるで撃たれたかのように、固まってしまう。
ーーー俺の、双子の妹……それは……
「なんで…知っている…」
「当然だろう?私は君を昔から知っていた。」
「そういう…ことじゃない!」
俺は、違和感を感じ、ユノに言う。
「俺の、妹のことは…誰も知らないはずだ。」
「……」
「七香や、一緒に戦っていたはずのエルでさえ、『あの日の出来事』をきっかけに存在ごと忘れてしまったんだ。」
「そうかーーー。」
「俺だけは…覚えていた。忘れちゃいけないから…。でも、皆には…妹の存在がなかったかのように接してきた。」
「それでも、私は覚えている。」
「ーーーー」
「何故、覚えているのかは今は言えないけどね。」
「もう…いいだろう。お前が妹を覚えていたことは分かった。」
「?なんで、それだけで話を済ませようとするのかな?何故、君の妹の存在が消えたか、知りたくないのかい?」
「もう、知る必要はないだろ…俺の事を知っているなら分かるだろ…妹は、『あの日』…死んだ。」
「ーーー本当にそうかい?」
「なっ!?いつまでこの話を続けさせる!?あれから、三年も経っているんだ。戻ってきていないのがその証拠だろ!」
俺は執拗に、妹の話をするユノに、ついに怒鳴りかけた。
「でも、死体を見た訳でもないだろう?」
「何が言いたい!?」
「君の妹はーーー生きているさ。」
「!!?な、何を根拠に…」
「私はそれを知っている。私は、君の妹と…面識がある。」
「なに!?」
驚くべき情報に、俺は怒りが消え、冷静になっていた。
いや、それどころか、
「本当に…妹は、生きているんだな?」
妹が生きていると知り、喜びと感動で胸がいっぱいになっていた。
「あぁ。生きているよ。」
「どこにいる!?」
「おいおい、敵に聞いちゃうの?」
「そんなことは関係ない!」
「うわ〜強引だね!そういう所が君らしいよ〜。」
「いつ…まで、話し込んでいる…。はやく、秘石を返してもらうぞ!」
俺たちの会話の途中で治癒をしていたのか、ある程度回復し終えたところでラーチスがユノに斬りかかる。
「邪魔だよーーー。」
「ぐはっー!!?」
ユノはラーチスに向かい、腕を払った。そして、ラーチスがその衝撃波か何かによって、大きく飛ばされる。
「大丈夫!!?」
突然、違う声が聞こえ振り向くと、カナデと七香とメイが来ていた。
「ま、間に合った!?」
「間に合ったとは…言い難いかな。」
七香の質問に、俺はこの場を見ながら答える。
「あ〜。人が集まっちゃったなぁ。」
「ーーー!!」
ユノの呟きに、カナデたちが視線を向ける。
「仕方ない…少し早いけど、終わってもらおうか。」
そう言い、ユノは手に持った『核』を握りつぶし、破壊した。
「あ、あれは?」
七香が聞いてきた。
「あれは『核』だ。」
「えぇっ!?あんなに小さいの!?」
七香も初めて見る『核』に驚きの声を出す。
「ちっ、『核』が一つ壊されたか…残りを見つけられる前に倒さないと!!」
俺は先程の情報も聞き出すため、ユノに敵意を出す。が…
「もう、後はないよ?」
「どういうことだ…?」
「ーーー誰が、この『核』が一つ目だと言ったかな?」
「「「「ーーーッ!!!?」」」」
ユノは驚くべきことを言いやがった。
確かに、俺が勝手に一つ目だと決めつけていた。が…
「まさか…すでに他の4つが壊されていたのか…!?」
「そうだよ〜。あー、そろそろこの『セカイ』も終わりが近いね。」
「!!?」
そう言われ下を見ると、地響きを起こしながら、地面にヒビが入っていってる。
「ーーーラクト君。」
不意に、ユノに声をかけられ振り向く。すでに、ユノはこの場を離れるためか、魔法によって浮遊していた。
「妹のことを知りたいならーーー私を見つけてごらん。」
「見つける…?」
「そう、私を見つけられたときには、教えてあげるよ。」
そうユノは言い残す。「妹」という単語に七香とカナデが俺を見てくるが、今はそんな状況ではない。
「やばい、どうする!?浮遊できるやつは!?」
「で、できないわ!」
「わ、私も無理〜!」
「同じく〜!!」
どうする!?『セカイ』の崩壊に巻き込まれたら、おそらく…死ぬ。まだ、俺は死ねない!!
「皆!!《ホールゲート》!!」
ーーー空から、エルが魔法を唱えた。瞬間、俺たちは魔法のバリアのようなものに囲まれて宙に浮かんだ。
「え、エル!?」
「なんとかギリギリだったね。」
そう言われ、下を見てみると、
この『レッドセカイ』だけにヒビが入り、そして、まるでガラスが砕け散っていくかのように地面が、崩れていった。
ーーー俺たちは、近くにあった少し高めの山の上に着地した。
「ここが消えてないってことは、ここは『レッドセカイ』の外ってことよね?」
「おそらくね。」
さっきまでいた方を見てみるが、何も残っていない。
地面すらなく、そこだけが切り取られたかのように闇に溶け込んでいた。
「本当に…消えたのか…」
俺は、未だに『セカイ』が消えたことの実感がなく、ただただ闇を見つめていた。
「ーーー他の…皆は?」
「!!」
カナデのその一言でさらに、嫌な予感を感じる。
「そ、そうだ。皆を探さなきゃ!」
俺は、振り返り山を降りて探しに行こうとする。
だが、皆を見た時、俺がいかに冷静で…頭がおかしかったのかが分かる。
カナデとメイは、泣いていた。
当たり前だ。故郷が、自分の住んでいた所が一瞬にして無くなってしまう。普通涙を流してしまう。エルも、七香もそれを見てか、少し悲しんでいるのが分かる。
ーーー俺は、どうなんだ。
生贄さんです。引き続き魔法の説明いきます。
「付与魔法」
…自身や、自身の持つ武器に魔法を付与することで色々な効果を出す。
《ウェアー》…自身の身体全身、または一部に魔法を付与する。魔法の「属性」によって効果が多少変わるが、ほとんど威力の上昇などの強化がメインとなる。
《ヒート・ウェアー》
…火属性を付与する。自身を炎で纏うことで、木製のものなどを燃やすことができる。
《エアロ・ウェアー》
…風属性を付与する。付与したものを遠くへ飛ばすことで、風の弾を放つなどの応用も効く。
《ランド・ウェアー》
…土属性を付与する。一部に集中して付与することで、より強度が増し、敵の攻撃を防ぐ盾の役割にもなる。




