第八話 『継承』の力
俺は、ユノの元へ向かう途中、考え事をしていた。
ーーー果たして、このメンバーで勝てるのか?
いくらなんでも急すぎた。例え、長の言うことだとしても、落ち着かせる必要があったのではないか。ろくな準備もせず向かった俺たちは…
……ーーー俺の悪い予感が的中してしまうことに気づいていない。
そして、再びユノの元にやってきた。
「ーーー10日間も待つとは言ったけど…意外と早かったね。私的にもそっちのがうれしいけどさ。」
「答えは決まった。秘石は…渡さぬ。……もちろん、そちらも貰えるとは思っていなかったようだな。」
ユノの問いに、ジャイ二さんが答える。
…昨日来た時には、ユノ含め4人だけだったが、さらにその下っ端とも呼べるような真っ黒のロングコートでフードを被っている人物が20人ほどいる。
それはつまり、向こう側にも戦う気があったということだろう。
「私があの星ノ使徒と戦う。」
ジャイ二さんがそう言い出す。
「俺も一緒に戦います。」
「ふむ、それは心強いな。」
「他の敵は我々に任せてください!」
こちらも、かなりやる気充分といった感じだ。
「行くぞっ!」
ジャイ二さんの掛け声で、今、幕が上がる。
ーーー俺とジャイ二さんはユノと戦うことになった。
黒服の3人は、エル、メイ、カナデ、七香、ラーチスが引き受けると言い、「討伐隊」が下っ端と思わしき20人と戦うこととなった。
「くっ!!」
ーーー数分経過したが、はっきり言って状況は分が悪い。2対1だというのに、余裕そうな態度をとっている。
「くらえ!!!」
「おっ…と、危ないな。」
ジャイ二さんも『異能』を発動し、ユノと戦っている。さらには、武器として「大剣」を握り、豪快に振っている。「活性化」…かなり強い『異能』だと、俺はジャイ二さんの戦いぶりをみて思う。
「す、すごいな。歳をとった者の動きじゃないぞ…」
現役と言っても差し支えないほど、その実力は確かなものだった。
「俺も…!《ギガボルト》!」
《ギガボルト》は光と風の「複合魔法」である。さらには、そこそこ威力の高い魔法でもあり、体力の消耗がやや多い。
「ふっ…!」
だが、ユノはジャイ二さんとやり合っているにも関わらず、俺の横やりすらも読んでいるかのように簡単に躱されてしまう。
「ちっ…!当たらないか…!」
「流石だね。まだ若いから、まともに「魔法」については教育が行われていないだろう?よく、そこまでの「魔法」が使えるものだね。」
ユノが俺にそう問いかけてくる。
こちらの事情を知っているかのような口ぶりだな。俺の援護はほぼ無いに等しい。
「ーーだったら!」
「…へぇ。」
俺も接近戦に移ればいい。俺は武器を持たないため、接近戦には向かない…と、思うだろうが、「魔法」の応用を効かせればいい。
「バフも大したものだね。」
ユノが俺の「魔法」を見て、面白そうに言う。
バフーーーそう言われた魔法は「付与魔法」の一つだ。自身の全身または一部に魔力を付与し続ける魔法…
「《ヒート・ウェアー》!!」
自身に「火属性」の魔法を付与した。
「さぁ、ここからが本当の2対1って状況だ!」
ーーージャイ二さんとは、ぎこちないが多少連携が取れる。俺が、後ろからの攻撃じゃなく、接近をしたことにより、ほんの少しだが互角には持ち込めた気がする。
「くらうがよい!《ギガントテイル》!!」
俺が混ざることにより、ユノが同時に2人を気にしなくてはいけなくなった。ユノが完全に俺の方に注意を向けた、その一瞬のすきにジャイ二さんが大技を叩き込む。
《ギガントテイル》は「大剣」の技の一つである。
大剣に力を込め、それを一気に放出するかの如く、目標目掛けて振り下ろす大胆な技だ。
「ーーー!!」
「そうは、させるかー!」
ユノがすぐさまジャイ二さんの殺気に気づき、躱そうと身を翻す。が…
「《グライデ》!」
「なっ…ーー!?」
《グライデ》、闇属性の魔法で、周囲または自身の重力を増やす魔法だ。急に自分の重力が増えたことにより、動きが一瞬止まるユノ。そこへ、ジャイ二さんの《ギガントテイル》が炸裂する。
「ぐっーーー!!!」
大きな爆発が起き、その爆風によって俺は少し飛ばされてしまう。
「痛っー!?」
岩にぶつかったことで、俺は大きく飛ばされずに済んだ。
「こ、これは…」
かなりの威力だ。まだ煙が舞っているため、様子が分からないがかなり傷を負ったのではないか?
そして、煙が消えたと同時、見えた景色にはーーー…
「嘘だろ…?」
「ぐ、ぐはっーーー……はぁ。はぁ。」
ーーー身体中に傷を負い、血を流すジャイ二さんの姿があった。
「ジャイ二さん!?」
「まだ、大丈夫じゃ…それより、やつは?」
「ーーーここだよ。」
「「!!?」」
少し、離れた位置にユノが立っている。まさか、《グライデ》を喰らったにもかかわらず、あの大技を避けたのか!?
「いや…これは…」
違う。ロングコートとフードにより、その中までは見えないが、傷は確かに負っていた。所々、ロングコートも破れており、その間からは生々しい赤い色の液体が見えていた。
「ーーー大したものだよ。君は、本当に弱体化してるのかい?」
「ーーー!!?」
俺を見据えるその目は、見えないが、それでも鋭さを感じた。そして、確信する。
ーーーこいつは俺の事情を完全に知っている人物だ。
「まさか、お前が…」
「いや、それは違うよ。まぁ、君を弱らせた人物のことは知っているけどね。」
「ーーー。」
やはり関係はあるのか。
「…もう、疲れたし、遊びは終わりにしようか?」
「なっ…」
まだ、本気ではないのか。こんな強い人物は……
ーーー昔にはいただろうか?
「あまり図に乗らないことだなっ!!」
ジャイ二さんが一気に近づく。かなり、傷を負っているので無理はさせたくないが…
「ふふっ。すぅーーー……はぁぁぁーーーー。」
なぜか、構える素振りもなく、大きく息を吸い、そして、吐いた。
「ーーー爆ぜろ。」
「!!?」
瞬間、間近にまで迫り、大剣を振り上げたジャイ二さんの動きが止まる。そして、
「ぐっーーー…ぐがぁぁあああーーー!!!!?」
ジャイ二さんの体が大きな光とともに爆発する。
「な…一体…」
何が起きたというのか。ユノの直前の行動は、息を吸いーーー吐いた。それだけだった。
「ジャ、ジャイ二さん!!」
ジャイ二さんの大きな体が、ついに、地面に倒れる。
「ーーーん〜?まだ生きてるの?強いな。」
「お、お前…一体何をした!?」
「何って…君も見ただろ?息を…吐いたのさ。」
一体どんな手品なのか。もしかして、それがユノの『異能』なのだろうか?
「特別に教えてあげるよ。これは、『異能』じゃない。私たち星ノ使徒に与えられた力…『継承』さ。」
「け、継承…?」
初めて聞いた。そのような力があるのか。
「簡単に言えば、ありとあらゆるものを浄化…つまり元に戻す力なのさ。」
「戻す力…」
「そうさ。ーーー傷があれば、なかったようにもどす。バフ効果、デバフ効果の魔法を付与していればそれらを解除する。と、いったようにね。」
ユノが自分の力を隠すことも無く言い放つ。
「このおじさん…かなり傷を負っていたよね。その傷を浄化してあげたのさ。もちろん、浄化するときの痛みは負っている傷に対して私が自由に選べるのさ。」
「選べる?まさか…」
「もちろん、浄化するときの代償さ。」
「ーーー!!」
「もちろん、負っていた傷に比例するようにしたさ。そうすることで、さらに同じ痛みを与えられるだろう。」
やることが、人間のそれじゃない。
「お前…最低な野郎だな!」
「なんとでも言うがいいさ。」
つまり、自分に対してはノーリスクで傷を癒せるというのか?いや、そうなのだろう。実際、ユノが負っていたはずの傷が消えている。ジャイ二さんの傷も消えたことから、あいつ自身、自分の『継承』という力で癒したのだろう。
「なら、爆発は…」
「君は意外と慎重なのだね。いや、臆病というべきかな…」
「なんだと?」
「この状況で、話し合いを続けるのかい?おじさんの命を気にしないのかい?」
「ーーー。」
「そんなに睨まないでくれ。すまないね、君は癒すことができないんだよね。」
「ッーー!!」
俺は咄嗟に魔法を放った。
「《ギガボルト》!!」
「無駄なことだよ。」
しかし、離れていることもあり当たるはずがなかった。ユノは続ける。
「君の質問に答えるよ。爆発の理由でしょ?ーーー流れ出た血が元に戻ろうとしたんだよ。それだけで分かるだろう?」
「ちっ、厄介なやつだな。」
少し平静を取り戻した。爆発は血の逆流による血管の破裂が原因か。
「もちろん、逆流程度じゃ爆発はしないからね、少し代償を増やしたけどね。」
「ーーーお前だけは、許さない!」
高らかに、自分の力をぺらぺらと話すユノに対し、俺は敵意を放った。
どうも生贄さんです。今回は情報が増えた既存人物の説明です。
ユノ
???歳。誕生日不明。血液型不明。『異能』は不明。
「星ノ使徒『純潔』継承者」。
『継承』は「純潔の吐息」。




