転生したら魔王のペットだった件外伝 ~始まりの物語 ~ 幻影の邂逅
初の外伝にしてミラージュの人だった頃に体験した奇妙な物語です。
これは私がミラージュと呼ばれる前の…。いや、前世での話です。
私は仕事を終え、終電で自宅に帰るため電車を待っていました。
奇妙な霧が立ち込め不気味な様子の中漸く時間通りに来た終電に乗ったが、本当の異変は暫くしてから起きました。
いつもならもう次の駅に着いている筈なのに電車が止まる様子が無いのです。
私は違和感を覚えて電車の車掌室の方へ向かおうと席を立とうとした所、少しずつ速度が落ちてきて停車しました。
私が降りる駅は丁度乗った駅から一駅先。つまりここのはず。
私は嫌な予感を覚えながらも降りる事にしました。
しかし、私が降りた駅はどういう訳だか私には駅名が読めませんでした。
「何なのここ…。」
駅から出るとそこは見渡す限りの草原で駅は出た途端にまるで幻のように消えてしまった。
消えた駅に何処かもわからない場所。しかも夜なので周りは真っ暗。私がどうしたらいいかもわからず途方にくれていると
ガサガサ…。
と背後の草原から何かが動いた音がしてた。
「誰かいるの?」
私が振り向くとそこには真っ黒な人形のヘドロのような何かがいた。
「ヒィ!!」
「ウゥゥ…。」
頭を抱えへたりこむ私に黒い何かが襲いかかってきた。
「お姉ちゃん危ない!」
ゴン!!
黒い何かの後ろから幼い少女の声が聞こえると同時に黒い何かは木の棒で殴り倒されていた。
「大丈夫?」
「え?」
私が恐る恐る目を開けるとそこには木の棒を持った銀髪金目の5~6歳くらいの黒いローブを着た少女がたっていた。
「お姉ちゃんこんな所で何してるの?」
「え…。」
「名前は?何処から来たの?」
「わ、私は三良杏樹気がついたらここにいたの。貴方は?」
「私はリル=フォン=ルーンフェリアだよ。ここは危ないから一緒にいこ。」
リルと名乗る少女は私に手を差しのべた。
「え、ええ。」
私が何とか立ち上がると草原からさっきの黒い何かが何人も現れた。
私はリルと共にとにかく走った。走って走って走り抜いた。
だけど黒い何かはどんどん増えて私達を追ってきた。そしてとうとう私達は崖の近くまで追い詰められてしまった。
「もう逃げ場がない。」
「どうしよう。」
リルは不安そうに私にしがみついていた。
「ウゥゥ…。」
黒い何かは尖った爪を振り上げ私とリルに襲いかかってきた。
「危ない!!」
ザシュ!!
リルを庇った私の背中に激痛が走った。
「みらお姉ちゃん!みらお姉ちゃん!」
リルは必死に私を揺すっていた。
激痛が走り意識が薄れいく中、遠くで誰かの声が聞こえた。
ああ、リルちゃん…。守ってあげられなくてごめんね…。
私の意識はここで途切れた。
「…。さん…。お客さん。」
「うぅん…。あれ?ここは?」
私が目を覚ますとそこは見慣れた駅のホームのベンチだった。
「お客さん、終電来たよ。乗らなくていいのかい?」
「あ、ありがとうございます。」
私は慌てて終電に飛び乗ったのだった。
これは私が交通事故で死ぬ一週間前の出来事でした。
ただ、一つ言える事は帰宅後入浴中に背中か少し染みるので姿見で確認した所、私の背中にはうっすらと爪で引っ掛かれた跡が残っていたと言う事だけです。
はたしてアレは夢だったのか?あるいは…。本当の事は今でも分からぬままです。
本、短編を読んで頂き誠にありがとうございましたm(_ _)m
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