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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき
3/57

 一 ~  そんなのできるわけがないだろっ  ~ (3)

 お腹が空くのは、自然なこと。

 そこに好みのものがあれば、誰だって手を伸ばしたくなるじゃん。

 

 いただきますだとっ?

「なんなんだよ、おい、こら、おいっ」

 ダメだ、完全に目が……。遠くを見てる……。

「おいっ、今田っ」

 さっきまでの大人しく眠っていたのは嘘だったのか。

 僕のそばに立つ今田姫香は、不気味に笑ってこちらをずっと見ていた。

 目はどこか虚ろで、僕を睨んでいても、遠くを捉えていて定まっていない。

 悔しいのは、それでもどこか可愛いと感じてしまうこと。

「ねぇ、血ぃ、ちょうだい」

「だから、バカかってっ」

 幼い子供がお菓子をねだるように、目を細めて小首を傾げた。

 小悪魔的な笑顔に騙されてたまるか。

「だから、なんだよ、それっ」

 ダメだっ。

 こいつに関わると危険なんだと、全身が警告を発している。

 咄嗟に後退りをして、姫香と距離を取ると、誰かの机に手を突きながら睨んだ。

「もぉ~。なんで、逃げるのよぉ~」

「当たり前だろっ。なんだよ、お前っ」

「だって、お腹が減ったんだもん。だから、血がほしいのっ」

「血? 何考えてんだよ、血がほしいって」

 まったく、意味がわかんねぇよ、血?

 冗談? 本気? どっちだ?

 姫香の笑顔は崩れない。それでいて、マサジマジと僕を見ている口元に指を当てている。

 まさに子供がお腹を空かし、お菓子を待っているように。

 本当にこいつは今田なのか?

 いつもはみんなと気さくに話していて、その気さくさに返って話しにくさもあり、どこか敬遠していたが、今は狂気に溢れているではないか。

「そこに人がいる。人がいるなら、血をいただく。これって常識でしょ?」

「なんだよ、その屁理屈はっ」

「いただきま~すっ」

 途端、急に姫香が走り出すと、僕との距離を詰めた。

 すかさず僕は後退りをする。

 ーーが。

 黒板が僕の逃げ道を遮った。

 教壇を上ったのはよかったが、ドンッと後頭部を黒板に殴られた。

 いつしか追い詰められ、背中に黒板がへばりつく。

 姫香は?

 見失ったと思うと、次の瞬間、目の前に姫香が現れた。

「ねぇ、古川くんって、何型?」

「何って…… えっと……」

 いやいやいや。答えている場合かっ。

 気の迷いが生じたとき、姫香は僕の肩を強く掴んだ。

 嘘でしょ。

 ネイルなどはしていなかったが、綺麗な細い腕には似つかない力に、僕は驚愕してしまう。

 捕まえた獲物を逃さないと、押さえられてしまい、僕はその場にしゃがみ込んでしまう。

 本当に、女の子の力か、これは?

「やっと、大人しくなってくれた」

 姫香の目に輝きが灯ると、大きく口を開いた。

 あ、八重歯。

 と突拍子のないことが目に止まった。

 と、そうじゃない。早く逃げないと。でも、逃げられない。

 えっと、えっと、あの……。

「あ~むっ♪」

 まったく。

 何が間違っているのか。

 ただの本能に任せているだけなのに。

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