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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき
2/57

 一 ~  そんなのできるわけがないだろっ  ~ (2)

 なんで? 

 なんで、こんなことをしてしまったんだ?

 襲うのは後悔?

 わからない。知らないよ。

 でも、この行動は間違いだったのか?

 ふと、まばたきをしてしまう。

 見間違いだろうか。

 彼女が眠っている机に、一冊のノートが広げて置いてあった。その上に、覆い被さるように彼女は眠っているのだが、ノートの一部が見えていた。

 シャーペンも転がっており、几帳面な彼女にしては珍しいと思ったとき、僕の目に飛び込んできたのである。

 血、という文字が。

 ダメなのは痛感し、自制心が背中を這っていて気持ち悪い。

 でも、読まずにはいられない。

 つい、僕はこのノートを引き抜こうとした。

 ゆっくり、ゆっくりと気づかれないように……。

 ふう……。

 上手く引き抜けた。後ろめたさを好奇心が騙し、安堵から胸を撫で下ろした。

 さて、なんと書いてあるのか。

「……血が…… はい?」

 ーー 血がほしい。

 ノートに書かれていたことに僕は戸惑ってしまう。

「血がほしいって、どういうことだよ、これ」

 思わず声に出てしまった。

「……だって、血がほしいんだもん」

 えっ?

「ーーはっ?」

 あれ? この教室に誰かいたか。うん、いた。今田だ。けど、彼女は寝ていなかったか。

 そう。そんなはずはない。いやでも、この女の子の声に聞き覚えがある。確か……。

「ーーえっ?」

 頭に浮かんだ「?」に導かれながら、視線を落とした。

 すると、それまで眠っていたはずの今田姫香が体を起こし、大きく腕を伸ばしてアクビをしていた。

 いやいやいや。こんな無防備な姿。本当に今田なのか?

「あれ、古川くん?」

 僕に気づくと、満面の笑みを献上してくれた。

「お、おはよう」

 つい反応してしまった。

 うん、と頷くと、今田はおもむろに立ち上がり、席を回ると、僕の方に近づいてくる。

「あ、ごめん。勝手にノート読んじゃって」

 急に申しわけなくなり、咄嗟にノートを机の上に置いた。

 彼女は笑顔を崩さず、僕の横に立つと、おもむろにお腹を摩った。

 それはまるで、お腹が空いたみたいに。

「はぁ~。血がほしい」

「はぁ? 血? 血ってなんだよ」

「だ・か・ら・血」

 うん、血?

「け・つ・え・きっ」

 次の瞬間、彼女は不適に口角を上げた。

 あ、八重歯。

 いやいやいや。そんなことを考えている場合じゃない。何を言っているんだ、こいつは。

「じゃ、いただきますっ」

 いや、待て待て待て。

 じゃ、じゃないだろっ。

「なんなんだよ、おい、こら、おいっ」

 吸血鬼じゃあるまいし。こらっ。

「おいっ。今田っ」

 ってか、なんなんだ。

 ただノートを見ようとしていただけ。

 自分の行動は間違いじゃないはず。

 それなのに、こうなった?

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