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「この場合の殺意の対象は、自分と娘を殺した犯人ではなく、車にいたずらをして傷つけた者たちだ。つまりは、ここにいるみんなのことだね。僕以外のね。車と同化したと言うことは、あの車が二人の身体そのものなんだ。それを傷つけられたからね。そりゃあただではすまないよ」
「ちょ、ちょっと待て。僕以外って?」
「そう、僕以外だ。僕は車に傷をつけてはいないし、それどころかみんなをずっと本気で止めようとしていた。それはむこうもわかっているんだ。だから僕は呪いの対象ではないんだよ」
峰元だけ助かると言うことは、俺にとっては想定外のことであり、ある意味において腹立たしいことでもあった。
あの場に七人いたのに、一人だけ助かるなんて。
でも峰元が車にいたずらをせず、みなを止めていたことは紛れもない事実だ。
だから全員どよめいてはいたが、俺を含めて峰元に悪態をつくものは誰もいなかった。
峰元はそれ以上何も言わなかったし、俺たち四人も黙っていた。
が、少しの間の後、俺はようやく口を開くことが出来た。
「峰元。お前のその霊力でなんとかならないのか」
「ならないね。僕の能力は見ることと感じること。それだけなんだよ。霊魂を追い払ったり退治するなんて力は、はなから持ち合わせてはいないんだ」
「……」
「だから僕を頼りにしたって、なんの役にも立たないよ」
そのまま二人とも黙ってしまったが、その沈黙に耐えられなくなった俺は、再び口を開いた。
「それじゃあ、みんな死ぬのか。お前以外」
「いや、死ぬのはあと三人だ」




