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みなで車に駆け寄り、触ったり眺めたりしていた。
すると沖田が庭に落ちていた石を拾うと、それで車に落書きをし始めた。
「やめろ!」
峰元の声だ。
この時間帯にふさわしくないほどに、鋭く大きな声だった。
「おい、なに偉そうに言ってんだよ」
沖田はそう言って落書きを続行した。
「やめろと言ってるだろう」
「ふん。うるせえよ」
そのうちに俺を含めた全員が、石を拾って車に落書きを始めた。
「やめろ!」
「やめろってば」
「いいからやめろ!」
「もうやめろ!」
峰元が何度も何度も止めていたが、それはみなに無視された。
六人でやりたいだけ落書きをすると、もう落書きが出来るところがないほどの状態となった。
そこで六人の狼藉がやっと止まった。
「おまえたち、ほんとどうなっても知らないからな」
峰元はそう言うと歩き出し、そのまま闇の中に消えた。
「なんだよ、しらけるやつだな」




