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「んじゃ、まずはお互い自己紹介でもするか。
俺はコク。リュウの民が一人、コク・リュウだ」
「私は、ノア・レヴァリエと申します」
そう名乗ると、コクと名乗った少年はノアさんか、と呟いた。
「じゃあ早速法具についてだが……。
あー、俺からやるのが礼儀か」
コクはそう呟いて着ているコートの袖を捲る。
そこには怪我でもしているのか、白く細い帯が包帯の様に巻かれていた。
コクはそれを解く。
「んじゃ、まず俺の法具からな。法具名、シロガネだ」
シロガネ、その名と共に帯はピンとひとりでにはりつめ、かと思えばその姿を白銀の小太刀へと変化させた。
「これが俺の法具。能力発動トリガーは強く握ること」
コクはシロガネをぎゅっと握る。するとシロガネの近くに薄く透けたもう一本のシロガネが現れた。
「そんでこれが、シロガネの能力。
シロガネの影とでも言うか、本体の分身をつくる能力だ」
コクはシロガネ本体を指揮棒の様にすうっと動かす。
するとそれに釣られて踊るように、シロガネの影はふわりと空中を漂った。
「影は俺の意思で好き勝手動かせる。本数も、法力がある限り無限に精製できる」
法力。
それは人の体内や自然界に漂う一種のエーテルの様なもので、この世界に生きる者なら全てが持っているものだ。
コクがシロガネ本体をすいすいと動かせば影は踊り、本数は増え、扇の様に広がった。