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方舟物語  作者: 狛ノ上緒都
方舟物語・第十章
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9


「やっぱりそっちに姉さんいねぇだろ」


コクも壁近くに来たのか、先ほどよりも声が少し大きく聞こえた。


「はい、お誘いしてもいらっしゃらず……」


「姉さんこう言うとこ苦手だからな」


「それは悪いことをしてしまいました……」


壁越しに雑談を始める。

声は周囲に良く響き、湯が跳ねる音に混じって互いの声が良く聞こえた。


「大丈夫だろ、姉さんそう言うの気にしねぇし」


「後で枕投げでもしたらいいんだぜ!」


壁越しにレイルの楽しそうな声が聞こえた。それにあわせて笑い声が響く。


「それやったら旅行だな」


「ですね、楽しそうです」


会話に花を咲かせていたが、一つの事に考えが至ってしまい、ノアは暗い影を落とす事となった。


「皆さんとの楽しい日が、ずっと続けば良いのに……」


「あ?何か言ったか?」


ぽつりと呟いた言葉はコクの耳には届くことなく、湯の音と共に消える。


「何でもありません、先に部屋に戻りますね」


ノアは立ち上がり、ばしゃ、と身体から湯が落ちる音が響く。

コクが何か言っていたが、聞こえないふりをして脱衣場へと戻った。


用意していたタオルで身体をふき、髪の水気を切る。

下着を身につけると、糸が切れた人形のように音をたてて壁に背を預けた。


「物語に終わりは必ずくる。たとえそれが喜劇でも、悲劇であっても……」


ノアは壁に背を預けたままぽつりぽつりと呟く。


「もしこの旅が終わったとして、その時私は、私には……」


髪に水滴がつうっと伝う。ノアはそれを拭うことは無かった。


「何が残る……?」


ぽたりと水滴が床に落ちる。

それはまるで誰かの涙のようにも思えた。





第十章「物語の行く末」終了

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