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「大切にする。ありがとう」
ハクは少し気はずかしそうに笑みを浮かべ、ノアもどこか恥ずかしさを覚えながら笑みをこぼした──。
ハクと別れ、宿の大浴場。
ノアは服を脱いで籠に入れ、大浴場へと足を向ける。
扉をあけると硫黄のにおいがふわりと湯気に混じって広がる。
シャワーの並ぶ屋内の風呂に加えて、さらに奥には露天風呂まであった。
この時間は人がいないのか広い大浴場にノア一人しかいない。
「貸し切りですね」
そういって石畳の床を滑ってしまわないように慎重に歩く。
ノアは露天風呂を選び、広い浴槽の湯を桶ですくう。
かけ湯をしてから湯に足をつけた。
少し熱い湯が肌に絡み付き、ノアは肩までお湯に入る。
最初こそ熱かったが次第に身体は馴れ、その心地よさにノアは一息こぼした。
「良いお湯ですねぇ。ハクさんもこちらにいらしたらよかったのに」
隣は男湯と繋がっているようで、静かな女湯とは違い誰かの話し声が聞こえる。
「おい、ここで泳ぐな!」
「だーって誰もいないんだぜ~」
その話し声はずいぶんと聞き覚えのある声だった。
「もしかしてコクさん、レイルさんですかー?」
「お!多分紫ちゃんだぜ!壁越しにやっほー」
「ようノア、そっちも来てたのか」
やはりコクとレイルのようで、壁越しに声をかける。
ノアは壁の近くまでよると、そのまま壁に背を預けた。




