2
噂によれば人間体から人竜化を行えるという話だが、あいにくノアはそう言う方面の知識を持ち合わせていない。
「何か御用でしょうか」
ノアはあの悪漢達の仲間かどうか警戒して、刺々しく言い放つ。
すると目の前の少年はけらけらと笑いだした。
「そんな警戒すんなよ、俺はむしろあいつらから助けようと見てたクチだぜ?」
必要無かったみたいだけどなとまた笑う。
「あの場には誰の気配もありませんでしたが?」
「へぇ、気配なんてわかる程度に戦い馴れてるのか。
残念、こちとらかくれんぼは得意中の得意でな」
リュウの民はこの世界の種族中最も戦闘に適した種族だ。
そんな種族が自分に何の用だと、ノアは少年の足下から頭の天辺までじぃっと見つめた。
「そんなピリピリすんなよ、お姉さん。
俺はただアンタの法具に興味があるだけだ。知り合いの奴に法具好きの奴がいてな、それこそ全ての法具を記録したいだの言うバカの使いだ」
少年は呆れたようにため息をつく。
全ての法具の記録。
それはノアにも少し興味があった。
「……立ち話も何ですし、そちらに座られてはいかがですか?」
ノアは自分が座っている席の向かい側の椅子を指差す。
少年はやっと警戒を解いたと思ったのか、大人しく席に座った。
途中、ウェイトレスが少年の注文を聞きに来るが、少年は迷わずチョコレートケーキ、と呟いた。