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グレンデルと名乗った昔の彼の手には、十字架を模した様な細剣が握られており、グレンデルの後ろには血を流して倒れる両親の姿があった。
少女はその現実を受け入れたくなくて、ずっと嘘だ嘘だと叫んでいる。
「私は、あの方を知っていた……」
ノアは泣き叫ぶ少女、楽しそうに笑う少年を見てぽつりと呟く。
「だって、あの方は──」
その言葉と共に映像の向こうの少女は倒れ、辺りに光が満ちる。
ノアは悪夢の世界から戻り、ぱちりと目を開けた。
どこかの民家のベッドに寝かされており、真っ先に天井が目に入る。
辺りを見回すとそこにはいくつもの本がつみかさなっていた。
「ここは……」
ノアはベッドから抜けると窓の外を見渡した 。
どこかの民家の二階の用で、そこにある目と鼻の先にある巨大な一本の緑葉樹がよく見える。
そしてそれを取り囲むように民家がたてられた里だった。
別名、叡知の里と呼ばれるソフィアール。
巨大な一本の木は神木、ソピアーとして里の名の由来となっていた。
そこには妖精種ソファイアが暮らしており、妖精らしく羽を持つソファイアと、羽を持たぬソファイアの二種類がいた。
ノアは訪れたことこそ無いものの、知識としてだけは知っていた。
時刻はすでに夜を迎えており、そらは深い紫色に染まっていた。
「あのあと、私は一体……」
そう呟くとノアの脳裏に思い出したばかりの記憶が溢れる。
「っ……!」
ぞわりと背筋が凍るような感覚に陥った。
あの夢がノアを恐怖に掻き立て、足は震えてその場にへたりこむ。
ノアは身を抱いて、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返した。




