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ノアは思わずその場にぺたんと座り込む。
流れてくる記憶の波に、追い付くのがせいいっぱいだった。
どうして忘れていたのか。
その思いがただ胸中を巡る。
「嘘……、嘘……!」
ノアはうわ言の様に繰り返す。どれだけ否定しても、戻った記憶は残酷に現実を突きつけるのだ。
「嘘!嘘だ!嘘だ!!だって、だって貴方があんなことをするはずがない!」
「ノア。言ったでしょ、"嘘じゃないよ"って」
その言葉を聞いて、心臓がどくんと大きく鳴り響いた。
「は、ぁ……っ、はぁっ、は、ぁ……っ!」
少しずつノアは呼吸が荒くなる。
まるで呼吸の仕方を忘れているかのように、なんどもなんども荒い呼吸を繰り返す。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!」、
荒い呼吸と共に、世界がぐにゃりとねじまがった様に思え、ノアの身体は甲板へと伏せられた。
「ノアっ!」
コクとハクがノアに駆け寄る。
コクがノアを抱き起こすと、ノアは気を失っていた。
「なになに、紫ちゃんどうしたんだぜ!?」
何も知らないレイルは狼狽えるばかりで、何度も彼女の名前を呼んでいた。
「貴様!ノアに何をした!!」
ハクはクロガネを取り出し、その切っ先をグレンデルと名乗った人間に向けた。
グレンデルはそれを一瞥するとぽつりと答える。
「何をって、見てたでしょ。
ボクはノアに挨拶しに来ただけだよ」
グレンデルはどこか不機嫌そうに顔をしかめた。




