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ノアの声は語る事を恐れているようで、その声は少しだけ震えていた。
口をきゅっと引き結び、ノアは再び自身の過去について語る。
「私は巫女として、グレンデルの封印とグレンデルに操られている一族の者を救済しなくてはならないのです……!」
ノアは薄く涙を浮かべてそう語った。
ノアの言う禁忌を犯した一族の人間。
それがノアの探し求めていた人物なのだろう。
「ですから、一刻も早くグレンデルによって操られた方を止めなければなりません、これ以上誰も傷つけられないためにも……!」
ノアは下を向いて拳をぎゅっと握る。その姿は泣くのを必死に堪えているようだった。
「それがあのローブのやつか」
「はい、あの方で間違いありませんが、あの方が誰なのかどうしても思い出せず、手がかりはグレンデルと言う法具のみで……。
グレンデルによって操られた人間の救い方すらもわかりません……。
そこでコクさん、以前仰っていた法具好きの方に会わせて頂けませんか?
その方ならきっとグレンデルについても知っているはずです、危険な旅路に誘う事は理解しています。
ですがどうか、どうかご助力頂ければと」
ノアはコクに懇願するように見つめた。
「別に構わねぇけど、そいつがグレンデルについて知らなくてもしらねぇぞ?」
ノアはかまいませんとだけ呟いた。
「ああ、奴に会いに行くのか。それならわたしも同行しよう」
ハクは頼む訳でもなく名乗り出て、ノアは少しだけ顔を明るくさせた。
「ありがとうございます!」
ノアは立ち上がって深々と頭を下げる。
少しでもグレンデルに近づけるかもしれない。
そう思うと自然と胸が熱くなるのだった。
第二章「ハコブネの巫女」終了




