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そこは薄暗い路地だった。
光は建物に遮られ、昼でも夜の様に暗い。
大通りは明るく、活気に満ち溢れているというのにこの場所は、まるで世界から切り取られた様に静寂に包まれていた。
静寂に包まれていた路地裏から、一人の少女の声と男性二人の声が響く。
「お姉さん可愛いねぇ。
ね、良かったら俺らと遊ばない?絶対楽しいからさぁ」
男性二人は少女を囲むように陣取り、ねっとりといやらしい目と、まとわりつく様な声音で少女に詰め寄る。
少女は何も言わぬまま、下を向いている。
男の内の一人が、それが気にくわなかったのか少女の顎をつかみ、無理やり自身と目を合わせさせた。
少女は藤色の長い髪に、海の様な青い目。白く長いマフラーを巻き、それに加えて、男を魅了する体躯を紫のラインの入った黒い服で包んでいた。
「うっは、やっぱ上玉だわ。ねぇ、いくらでも払うから一緒に遊ぼうよ。
旅の資金、必要でしょ?」
男は少女の持つ大きなトランクを一瞥する。
それは旅行にしては少し大きいが、彼女がどこか旅する途中であることを明確に表していた。
おとなしく顎を捕まれていた少女はぱちんと、品のない男の手をはたき落とした。
「ごめんなさい、こちらも用事がありますので。
貴方がたと遊んでいる暇はありません」
女性らしいが、臆する事の無い凛とした声。
男性は叩かれた手と少女を見る、少女はただ上品に笑うだけだった。