ハコブネの巫女
暗い意識の底で、ちゃぷんと水の音が聞こえる。
その音で現実に引き戻されるように、ノアはすうっと目を開けた。
目を覚ますと、最初に飛び込んだのはどこかの民家の天井だった。
ベッドに寝かされており、起きることなく視線だけをはわせる。
するとベッドの隣にはコクと瓜二つだが、雰囲気はまるで研ぎ澄まされた刀の様な、白髪を黒いリボンでポニーテールにしたリュウの民の女性がタオルを濡らしてノアの看病をしていた。
「目を覚ましたか。
待っていろ、今コクに説明させる」
女性はタオルをノアの額にのせ、どこかへ行ってしまう。
階段をののぼる足音を聞きながらノアは起き上がり、改めて部屋を見回した。
ベッドにクローゼット、本棚に雑貨と至ってシンプルな部屋で、どこか殺風景とも取れる部屋だった。
しばらくすると、女性の大きな声が響き渡る。
「コク!お前の客だろう!お前がいなくてどうするのだ!」
「わ、わかったって姉さん!」
世話しなくどたどたと歩き回る音が聞こえたと思うと、ノアが寝かせて貰っていた部屋にコクが現れる。
「よう、ノア。やっと起きたか」
「コクさん……。あの、ここは……」
「イニティウム近くの俺の家。
アンタ、あの後2日も寝てたんだぜ?」
2日も寝ていたと言われ、驚愕しない方がおかしいだろう。
それから騎士団は壊滅、市民はケガを負ったなどと、あの後の事をコクから説明され、ノアは暗い影を落とした。




