マフラーの少女
「──小さな意思は、やがて大きな力となる」
遥か古、たった一つの、世界を怨む誰かの悪意から生まれた、世界を滅ぼせる程の力を持った悪魔の道具があった。 それは何年、何千年ととある一族に封じられていた。
そして、その道具を封印し続ける使命をもった少女と少女に起こった悲劇
それは物語の始まりでもあり、少女の運命の始まりでもあった。
──この物語を我らが一族に捧ぐ。
人の命とは儚いもので、一度失えば二度と戻ることはない。
ある少女は、それを頭では理解していた。
だが、目の前に広がる赤い血溜まりと、その上で横たわる両親。
その光景を理解することは出来なかった。
少女は目の前で血に濡れた突剣を持つ少年に、ただ問いかけるしかない。
"どうして"と。
幼い少女は目の前の光景にただ錯乱するのみで、その両目からぼたぼたと大粒の涙を流していた。
少女は息は少しずつ荒くなり、ろくに呼吸も出来ずただ喘ぐばかりだった。
"ごめんね"
少年は泣きじゃくる少女に向かってそう呟いた。
少女は嘘だと泣き叫び、膝をつく。
顔を覆って、少女は泣き続けた。
"嘘じゃないよ"
少年は少女ににこりと微笑む。
その笑顔はとても優しいもので、まるで現実離れしたような笑みだった。
少女はそれを引き金にその場に倒れる。
少女の幸せに満ちた物語はここで終わり、彼女の長い長い物語はここから始まるのだった。