王国の追撃
凄い勢いで迫る追っ手を
やり過ごす作戦に出る主人公達。
追っ手として差し向けられたのは・・・。
一刻もしないうちに騎馬が姿を現した。
隠れていて正解だった・・・現れたのは、あの二番隊長だった。
自分の顔を知っている為、先遣隊としてやってきたのであろう。
「おーいチョット助けてくだせえ!!」
素知らぬ振りをして、大男が二番隊長へ叫ぶ。
足を早めていると思っていたかもしれない。
ましてや、こちらから声を掛けるとは予想外であったろう。
「貴様達!!荷物を改めさせて貰うぞ!全員そこへ並べ!」
一瞬ひるんだ様子だったが
二番隊長はそう叫び、側へ駆け寄ってきた。
「貴様達の中に、先の王の愚息が紛れ混んでいるという
情報があった!!真ならば今すぐここへ連れ出せ!
逆賊を庇うと身のためにならんぞ!」
二番隊長は騎乗したまま、一人一人の顔を確認していた。
父上への恩を仇で返し、
簒奪をしたのは彼らではなかったであろうか
自分の事を逆賊扱いするとは、盗人が偉くなったものだ・・・。
「おいそこの男!荷物を全てみせよ!」
大男へ声をかけるとアゴで積荷を差した。
この通りなんにもないですぜ?そういう大男を一瞥し
「の様だな」と呟くと馬を返した。
だがすぐに「いや・・・」と言って馬を降り
馬を木に繋ぎ止めると、背中のバスタードソードを抜き
仲間内の一人の首へ押し当てた。
「居るのは解っているぞ!我々の本隊が到着する前に
姿を現さなければこの者の首を落とす!!
お前、下賤の者の癖に王国の役に立てるのだ、ありがたく思えよ」
二番隊長はそう叫びながら辺りを見回し
首へグイグイと剣を押し当てて見せた。
ハッタリなのは解っていた・・・だがもう我慢の限界だった。
「簒奪に手をかした逆賊が!!
戯言を喚いているだけなら見逃したが
国の発展と恩恵をもたらす民へ
そのような行為を働くとは容赦ならぬ!
その様に性根が腐っていたから剣も腐っていたのだな!!
だからいつまで経っても、お前は騎士団長には
なれなかったのだ!!神へ代わり我が裁きを下してやる!!
自分の咎を恐るならば、すぐに逃げ去り逆賊共と共に
再び我の前へ姿を表すが良い!
まだ誇りが残っているのであればこの首その手でとって見よ!!」
近場の岩へ飛び乗りそう叫んだ。
大男には、「いざ」の方へのプラン変更を目で合図した。
大男は頷き、その場にいた仲間たちと共にその場に平伏をした。
バスタードソードを構え向かって来る二番隊長を迎え撃つ為
街道脇の林へ駆け込んだ。
彼とは何度か手合わせをしている、太刀筋はある程度読める
初撃さえ避けられれば、短剣でも勝ち目はゼロではない・・・。
相手の攻撃は大振りの為、とっさに林へ逃げ込んだはいいが
ここでは向こうの攻撃を避けられるが反撃がしづらい・・・
足場が悪くて広い場所がいい・・・
「さすが先の王の息子だな!所詮は口先だけで
逃げ惑うしかできないか!大人しく首を差し出せ!!
それとも、あの情けない団長のおままごと稽古では
逃げる事しか教えて貰わなかったか!!」
そう叫びながら追いかけてくる
「お前の死に場所を選んでやってるのさ!
街道に野犬も喰わない死体が転がっていては邪魔だろう!!」
そう言い返えし、振り返ると川が目に入った。
河原ならば足場も悪く広さもある、それに賭けよう。
二番隊長は顔を真っ赤にしながら追ってくる
90度向きを変え、川へ向かって走り出した。
まだ距離はあるが、段々と間合いが詰まってきている
さすが隊長を任されているだけはある。
林を抜け視界が開けた瞬間、自分の運のなさを呪いたくなった。
丁度一帯が崖になっており、数メートル下に川が流れていた。
引き返している時間はなかった。
二番隊長がバスタードソードを下段に構えたまま飛び出してきた
その勢いで薙ぎ払われては、ひとたまりもない。
靴を直す仕草をし、短刀を抜くと二番隊長へ向かって走り出した。
相手が力を込めた瞬間
拾っておいた小石を顔面めがけ投げつける。
狙い通り、剣の腹で小石を防いだため構えが崩れた。
すかさず間合いへ飛び込みざま、死角から腹へ膝蹴りをいれ
剣の柄で頭へ一撃をいれた。
ぱっと見だけなら押しているように見えるであろう。
だが向こうは鉄の塊に身を包んでいる。ダメージは皆無だろう。
「うぉぉぉぉ」
良い様に連撃を入れられ頭にきたのか
二番隊長は雄叫びをあげながら、こちらの腹に拳を叩き込み
続け様に蹴り飛ばし、距離を取ると
バスタードソードを振りかぶった!
「っ!!」
避けなければ殺される!!
痛む身体を必死に起こしながら
ステップして相手の攻撃を避けた!
避ける事に必死になりすぎ、着地の事まで考えが及ばなかった。
崖のぎりぎりに着地してしまったせいで、勢いが殺せず
崖からずり落ちそうになる。
「とどめだ!」
二番隊長は叫びながら、先ほど振り下ろした体勢から
素早く突きを繰り出した!
もう避ける術は一つしかなかった。
落下中に飛び出ている崖へぶつからないように
思い切り足下の川へ向かって飛び込んだ。
数秒後に感じたのは強い衝撃と、何かが水に潜る音。
それが最後の感覚だった。
対決のシーンは
どう動けば有利に動けるのか
動作の隙などをシュミレーションしながら
考えました。
ブツブツ言いながら
移動中の電車内で考えていたので
かなり怪しい人に・・・。