西へ・・・。
首飾りの手がかりもないままだったが
行方不明の男は見つけることはできた。
そこに現れた盗賊。
そして首飾りの行方は・・・。
細い入り口のおかげでィシウの存在は、まだバレていない。
ィシウは入り口の所で身を潜め斧を構えた。
それを確認し、わざとらしく叫んだ
「うわっ待ってくれ!命だけは勘弁してくれ
何でも持って行って構わないから!」
入り口の向こうに3人見える。
声の代わりに3回足をならしィシウに合図を送る
合図がわかったのかィシウは頷くと
二人目が入ってきたタイミングで、斧の腹を相手にめがけ
振り下ろした。
ゴッっという鈍い音と共に2番目の男が地面に崩れる。
慌てる男達目掛け走り寄ると、先頭の男の太腿を切りつけた。
顔を上げると3番目の男は、
すでに逃げ出しその場にはいなかった。
戻ってくるかもしれないし、注意する必要はありそうだ。
男二人を縛り上げ、楽しい尋問の時間の始まりである。
先程の冒険者の手荷物から松明を拝借し
斧で叩き割った破片を針のようにする。
その木製の針を男の指と爪の間に当てがった。
城にいた頃、よくイタズラをして捕まると
尋問官を呼んで同じ事をするぞ!とおどかされていた。
その頃はただの脅し文句だったので
どれほどのものなのか知る由もないが
こんなにも効果があるとは驚きである。
やはり首飾りは、この男達の仲間が盗み
西の大富豪「アダラジャー」へ売り飛ばしたようだ。
その屋敷に案内するよう男達に命令すると
文句を言い出したので
改めて優しく木製の針で「オネガイ」をしたところ
快諾してくれた。本当に凄い効果である・・・。
手も出せず一連の流れを見ていたィシウは
何故か隅っこでガタガタ震えていた・・・。
色々あったがなんとか目的地の目処がたった。
目指すはアダラジャーの屋敷である。
その前に、頼まれていた人探しを終わらせてあげよう。
残念な結末であったが・・・。
先程の冒険者の遺体を漁り、形見を探し出すと
ゾンビ化しないよう火をつけた。
焼け残った遺体の一部も持ち帰ってやる事にした。
だが、男達が隙を見て逃げてしまう前に
屋敷に案内させたい。
雑踏の中ではそれも難しいだろうし、申し訳ないが
こちらの用事を優先させてもらおう。
ーアダラジャーの屋敷ー
屋敷に着き珍しい物があると伝えると
従者の小人族は屋敷へ迎え入れてくれた。
屋敷の中は大きな甲冑の石像や大きな壺など
沢山の珍しい物があった。
アダラジャーは、私が見たことのない珍しい物であるなら
その辺のコレクターよりも弾むと言った。
何を持ってきたのか問われたが
単刀直入にあの王家の首飾りの正当な持ち主だと主張した。
初耳のィシウはビックリした表情でこちらを眺めている。
「この首飾りが、そなたの物であるということだが
ハッタリや盗んだものでない証明が出来ると?」
自国の紋様が描かれている首飾りであるが
確かにそれを、自分のものと証明する術はない。
それを見透かしたようにアダラジャーはこう言った。
「本当にこの首飾りの持ち主であるならば
証明をすることなぞ容易いぞ?
一滴で構わん、そなたの血をこちらに渡してみよ」
そう言うと従者に大針と金の小皿を渡した。
従者はこちらまで来ると、指を出すよう促し
指から、数滴の血を皿に取ると
アダラジャーへ差し出した。
余程大切にしているのか、懐から首飾りを取り出し
金の皿の血を一滴首飾りへ垂らした。
その瞬間、空気が変わり
首飾りが青く淡い光に包まれた。
「ほほぅ・・・」
目を細めながらアダラジャーが唸る。
その光が収まるとアダラジャーは
「首飾りの持ち主という
そなたの言い分、間違いないであろう。
それを踏まえたうえで、こちらは相談だが
正式にこの首飾りを譲っていただきたい
当然タダとは言わん、20万Gを出そう。」
に、にじゅっ・・・。
あまりの金額に驚きィシウは固まってしまっている。
だが、幾ら積まれたとしても首飾りを手放したく無かった。
追い打ちをかけるようにアダラジャーは言った。
「ただし、この金額はこの場で即決した場合のみだ。
当然、首飾りを返すつもりはない。
潔く金と引き換えに首飾りを諦めるか
それともこの警備の中、実力で取り返すかね?」
そう言って、周りの護衛に目配せをすると
人形のように身動き一つしなかった護衛達が
一斉に槍を構えた。
「一晩考えさせてください。」
部屋を後にする背に向け、アダラジャーはこう言い放った。
「即決でないならば、支払う金額は8千だ。
加えてそなたの血一瓶も貰おう。詮索は無用だ。」
始めからそのつもりであったのだろう
何が相談なものか・・・。
アダラジャーの手配した馬車で街へ向かう。
自分の中でどれだけあの頃の思い出が大切だったのか
再認識する。
首飾りを金に変えれば、前に進める事はわかっている。
だが、その進むべき一歩が正しいのかもわからない。
ましてや、国を取り戻すと誓い、何一つ守れず
全てを失っている今となっては
首飾りですら失うのが怖い。
ィシウが元気づける様に声を掛ける。
「まぁ、首飾りは残念だったが
アレじゃ取り返せないし、命の方が大事だろ?
ゆっくり依頼をこなしてお金を貯めたらいいじゃない。
亡骸を引き渡しに行きがてら
美味しい話でも探すとしますか。」
ー港ー
その男は、冒険者の亡骸を抱えながら
思い出すように語り出した。
「コイツがよく言ってたよ。
『金を失うのは小さい事で、名誉を失うのは大きい。
だがそれらに気を取られ、勇気を失うという事は
すべてを失う結果になる』ってさ
何が勇気だよ。結局、命まで失っちまって・・・。
バカだよまったく・・・本当に・・・。」
手間をかけて、すまなかった。ありがとう。
男は最後にそう言った。
補足分を書いていたら
前回との2話分になってしまいました。
引っかかった部分でも良いので
コメント頂けるとありがたいです。




