田舎の宇宙港
作者が自分住みたい街を想像して書きました。小説書いてみたくて書いたらこうなりました。後悔はしてないです...ほんと思いつきと勢いで書いたんで、時間があればちゃんと考え直します。
....宇宙エレベーター早くできないかなぁ
僕の生まれ育った町には宇宙港がある。宇宙港といっても、現在主流のテレポーテーションシステムではない。ひと昔前の産物ーー宇宙エレベーターだ。僕は宇宙エレベーターの方が好きなんだけど、どう考えてもテレポーテーションシステムの方が便利だ。小さいし、安全だし。
この宇宙エレベーターでは宇宙に行けない。お役御免になった宇宙エレベーターだ。だから今は記念館のような感じ。あまり人は来ないけどね。
この町は昔、この宇宙エレベーター建造の町として栄え、宇宙好きな観光客であふれていたーーーらしい。みんな宇宙エレベーターに珍しさなんてもう感じない。
赤く染まった空が夜の暗さにのまれ始める。雲は夜から逃げているかのようだ。いい天気だ。
僕たちはいつものように宇宙港に向けて歩いていた。ふと僕の幼馴染の日和ちゃんがつぶやく。
「ベータ壊されちゃうらしいよ」
ベータというのはこの町の宇宙エレベーターのことだ。同時に僕たちの二人の間での愛称でもある。
「しょうがないよ。使い道がもうないんだもん。お客さんだって滅多に来ないし」
「えー、夕方とかキラキラ光って綺麗だったのにぃ...」
日和ちゃんの言う通り、ベータのワイヤーが空高くにそびえ立ち、夕日で映える光景は何度見ても美しい。僕はまだこの町から出たことがないから知らないけど、他の宇宙エレベーターもきっと綺麗なんだろう。
今も夕日で光り輝く半透明のベータのワイヤーを二人で見上げながら話している。
「ねえねえ!慧、やっぱりボク、ベータがなくなるのは嫌!何とかならないかなぁ...」
「ベータの廃棄を止めさせたいってこと?さすがに僕たちじゃどうにもならないよ...」
「慧なら何とかできるっ!いや、してっ!」
「そんなこと言われても...」
ベータの入り口に着いた。ベータは海に突き出した人工島にある。時刻は午後6時過ぎ。春の夕方はまだ風が冷たいが優しい匂いがする。
ーーーーじきに日暮れだ。
僕、早見慧と幼馴染の斎藤日和は共に地元の中学校に通う1年生だ。今年の春に入学したばっかりである。
僕たち二人は幼稚園に入る前から知り合いだ。実際には僕が都会から5歳の時に引っ越してきてからの仲。幼稚園、小学校とずっと同じクラスで、とにかくずっと一緒だった。
日和ちゃんは生まれた時からこの町に住んでいる。僕の一人称が「僕」だったからか、日和ちゃんの一人称も「ボク」になってしまった。
そんな僕たちは晴れている日の夕方にはだいたいベータに来る。満天の星空を見るためだ。
僕が小学4年の頃に、宇宙の図鑑を読んで、宇宙にドはまりした。日和ちゃんが宇宙好きなのは完全に僕の影響だ。両親は、あまり興味がないようだったし、学校じゃそういうことを教えてくれなかったから、日和ちゃんが宇宙の良さを理解してくれて本当に嬉しかった。
だからこうして星空を今日も見に来る。
ーーー宇宙への扉である宇宙エレベーターの前で。
「ねえねえ!!慧!今日はちゃんと星見えるかなっ!」
「こんなに晴れてるんだもん、たくさん見えるに違いないよ!!よしっ!今日こそスピカを見つけるぞ!!」
「ほんとスピカすきだよね〜そんなに見たい?ボクはアークトゥルスの方が好きだなぁ、図鑑で見た時綺麗だったし。」
「それを言ったらスピカだって!!あの青白い光が綺麗なんだよなぁ...」
ーーーー夕日が沈んでいく
僕たちは空を見上げる。今夜の星空は満点だ。