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東方捨鴻天  作者: 伝説のハロー
第二章 馳せる干戈の烏
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第二章・第十一翼「抱擁」

第二章最終話、ようやく終息します。



「っ……劫戈!?」


光躬が声を張り上げる。


銀色の落涙の音が、土を叩く音で掻き消される。


日方の最期を看取って束の間、突如として力なく崩れ落ちた劫戈。


「……はっ……ごほっ」


額には球の汗が浮かび、吐血を起こして息も短く、顏も血の気が引いている。


観戦者達が、事態の急変に驚く。状況を把握した年長者達が指示を飛ばし、各々が行動を始めようとする矢先、光躬は一足早く劫戈の元へ。

劫戈は、すぐさま音もなく駆け付けた光躬に抱えられた。


「いけない……っ! 劫戈! 劫戈!?」

「ぅ……」


彼女は懸命に呼びかけるが、彼の反応は薄かった。


過剰な妖力の酷使、無理な機動の戦闘による反動が、今まさに劫戈を襲っていた。意識はあるが、眼は虚ろでほぼ無意識に近い。

大きな一対の黒い翼は重く垂れさがり、動く気配がない。艶やかさを失い、独特な彼の妖力を感じさせなかった。


劫戈の成長を我が事のように喜び、心躍るように魅入っていたが故に、劫戈の肉体への負荷を全く考慮出来ていなかったのを光躬は自覚した。顔を歪ませ、深く後悔を滲ませる。


「大丈夫、大丈夫だから……」


眼に見えるほどになった濃度の高い妖力を光躬は発する。烏天狗としては一線を画す、黄色の線が混じる黒い妖力だ。その存在感は、負傷した部分も含めて、何としてでも治すという意思を妖力全体から感じられる程だ。

劫戈を包み、治癒を高める効果を与えんと浸透していく。


それを傍で見ていた巳利は。


「……」


苦しそうに目を伏せ、しばしの間、何かを熟考した。


「っ!」


そして、意を決したように、劫戈を抱える光躬の隣へ。


「光躬様」

「……巳利?」

「彼は妖力欠乏を起こしている事はお判りでしょう。しかも見るからに過度な症状です。放置すれば命に関わります。すぐに妖力を分け与え、発作を緩和させるべきでしょう。幸い、親類は私です。最も親和性が高い」


不安と動揺を隠せない様子の光躬に、巳利は冷静且つ力強く申し出た。


「貴方がやるというの……?」


光躬は怪訝に巳利を見る。巳利を信用していなかったが故に、何より妖力欠乏を起こした劫戈を優先したいが故に。


妖力欠乏。

妖怪の妖力が底を尽くことにより生ずる症状を差す。妖怪の源である妖力・妖気そのものが枯渇すると、生命維持が困難になってしまう。妖怪は畏怖から生まれた想念の産物であるからこそ、己の根源たる闇の力───即ち、妖力の損失は存在そのものが根底から失われてしまう事と同義。闇の命は、生命力を使い果たして死滅、消滅を迎えるということ。日方が見せたような寿命を削って妖力を練る荒業があるものの、結局は死を早めるだけで延命にもならない。

ただし動植物がその形を変えた場合は、基本的に元になった生物と同じ法則に則り、食料や水で延命出来るため比較的、死の危険性は低い。

普段では欠乏するなど余程の事でない限り起きない。その余程とは、妖力を消費する闘争ぐらいか。あるいは、妖力を祓える神聖な力を有する者に害されるかだ。


この欠乏から回復する方法、回避する方法は多岐に亘り、自然治癒や食料の摂取、睡眠、妖怪独自の畏怖の吸収などがある。脱するのは難しくない。

ただ例外として、同種または近親者が存在する場合は分け与えられる事で脱する事が出来る。この方法は一番助かりやすく、一方で単一の個体である別種同士の妖怪では適用されない。


そういった事情から、妖力欠乏から助けたい光躬は巳利の提案に耳にする。


「はい。差し出がましいとは存じますが、彼を救うには最も早いと確信します故」

「……」


光躬は迷った。

今まで思想の違いや迷惑な恋慕から敵対し、日方や他賛同者達を葬って来た自分に対して、保身の為に言い寄っているようにも見える。光躬は巳利の言の通りにすべきかすぐに判断出来なかった。一人の女性として、想い人に近寄らせたくないという警戒心が勝ってしまったからだ。


巳利と劫戈の関係や実情を知る者達もまた、こぞって胡散臭さを覚えた。あいつに任せて大丈夫なのか、と茅が五百蔵や空将に訴えていた。その懸念は尤もだが、とはいえ大妖怪含む年長者が見張っている中で理性的な者が不利益になる事を仕出かす筈もない事は明らかだ。


判断に迷う光躬の元へ、五百蔵らを連れた空将が割って入った。


「巳利。お前の言は尤も。施術はお前がやるとして、私と光躬が立ち会う。それで良かろう? すぐに取り掛かれ」


落ち着き払った空将の素早い指示に、冷静さを取り戻す若者達。

すぐに劫戈をその場に横たえ、その脇で巳利は両手を翳し、妖力を少しずつ分け与え始めた。眼を閉じて、集中する。


「……くっ……なんだ?」


すると、巳利の脳裏に人型が現れた。

白い霊魂。その輪郭には人ならざる獣の耳と尻尾があった。その佇まいと、脳裏に現れたにも関わらず、発する妖気と気配が巳利を惑わせる。


(人……?)


劫戈への妖力を注ぎながら、しっかりと認識する巳利は呟く。


「───白い狼の女性……?」


途中、巳利は苦悶の表情で呟くものの施術は続行する。一部の白狼が反応するが気にしている場合ではない。


「…………」


しばし間を置くと額から汗が滴り始める。

自分に出来る最大限の事をしようとしている巳利に、光躬は警戒の色を弱めた。


そうして、しばらくの時間を要した。


闇色の光が巳利の掌から奔り、徐々に劫戈へと伝っていく。

息を吹き返したかのように艶が戻り、出血も止まって顔色も元に戻っている。


「……っ! く……はぁっ」


そして、今まで以上に大きく光った途端、巳利はふらりと後退って膝を付く。息を切らせる彼の顔は疲労に満ちていた。


「……成功、しました。もう大丈夫、です」



巳利が離れて少し間を置き、力強い黒が復活した。



そして、瞼が開いた。ぼんやりと虚ろ気味に蒼空を見ていた。


そんな劫戈だが、視界に入った女性を見て。


「みつみ……?」

「劫戈! 大丈夫?」

「ああ……ぃっ」


意識を取り戻した劫戈は、身体に残る痛みに顔を顰めながらも返答した。


「俺は倒れて……どうなった?」


混乱しながら身を起こす劫戈は、光躬に問い掛ける。倒れた所までは覚えていた劫戈だが、その先の記憶がなかった。


「巳利が、妖力欠乏に陥った貴方を助けたの」

「……巳利が?」


まさか、と驚いた劫戈は、少し離れたところで膝をつく巳利を見つめた。額に汗を見せる実弟に、劫戈は驚きのあまりすぐに声が出てこなかった。幼い頃に罵倒され、存在を否定され、縁を切られたも同然の関係であった筈の実弟に助けられるなど露ほど思わなかったからだ。


「お前が助けてくれたのか」


声を掛けると、巳利は顔を顰めながら背けた。

だが、努めて冷静に顔を戻した。実の兄弟はやっと視線が合う。


「……僕は、最初から敵わなかった。感情に任せ、愚かな事をした」

「巳利……」

「僕は、光躬様の軍門に降った。以降、貴方を害する事はないだろう」

「……俺は父を」

「父の事は既に承知、理解、納得している。父の臨んだ最期だった。その相手が貴方だっただけだ。恨む事はない。報復もない」


巳利は言い切ると、その場で深く頭を下げた。もうこれ以上は害する事はないと誓った通りに。


「───え、うわっ……!?」


すると見守っていた面々がこぞって劫戈を囲んで来た。

復帰した姿がはっきりと、彼ら彼女らの眼に映ったのだろう。劫戈と巳利のやりとりを余所に、歓喜に沸き立つのが解った。


「おにーちゃん、すごい!」

「頑張ったわね」

「あの日方を斃すとか、お前って奴は……!」

「わふっ!」

「恐れ入った、見事なり!」

「流石ですね! お義兄様!」


白い狼達に若い烏天狗集は、口々に賞賛の言葉を投げ掛ける。

烏天狗最強格相手に善戦して下した劫戈を賞賛する一同。集まる者達は喜んでいるが、その喧騒の中で茅だけは怒りを露わにしていた。


「おい! 劫戈!」

「え……茅?」

「何やってんだ! 無茶な戦い方をしやがって!」

「え……いや、あれは」

「御業を連発するとか、阿呆か!! 妖力欠乏になって当たり前だろ! 死にたいのか!」

「す、すみませんでした!」


茅の剣幕に押され、委縮する劫戈。遠巻きに見ていた五百蔵も咎めるような顔をしている。


「よくぞ凌いだ、と言いたいのじゃが、危ない戦い方じゃぞ、あれは。生きて帰るべき時には尚更、気を付けい」

「う……耳が痛いです」


自嘲気味に苦笑する劫戈。

逃げ場がない訳でもないのにも関わらず、目的を果たそうと躍起になるあまり、己の命を顧みない事をしでかした。全力を出し切る姿勢は好ましくても、自死を招く戦い方は褒められたものではない。まだ若輩である事は否めなかった。


拳骨でも落とすのか。五百蔵は渋い顔で、劫戈の元へ。


「じゃが」


しかし、五百蔵は穏やかに劫戈を労う。


「よくやった。お前さんは強い子じゃぁ」


それでも勝ちは勝ちだ。劫戈は五百蔵に優しい手つきで頭を撫でられた。


「日方相手によくぞ敢闘した」

「そうね。よく頑張ったわ、劫戈」


空将、光躬も続いて劫戈を讃え始めた。大妖怪に片足を入れていた日方を真正面から果敢に立ち向かい、見事打倒して見せた武勇を。


彼は褒められて思わず嬉しくなる。


「ありが……」


ありがとう、と言おうとした。だが続かなかった。

彼は口を噤んだ。喜びの感情は鳴りを潜めてしまったからだ。


「……」


劫戈は俯いて瞑想し、唸った。


その様子を多くの者は怪訝に思った。特に若い者達は。


劫戈の表情が歓喜でもなく、憤怒でもなかったからだ。




静寂が、その場を支配した。




そして彼は囲まれた中で寂しそうな、悲しそうな顔をした。


臨まれて応じた。自分の武威を示したかった。とは言え、実父を手に掛けたのだ。殺伐とした妖怪の摂理だが、心残りと言うものは少なからずあった。


この世に生まれ落ちてから今日まで。

生まれ、立場、感情、どれも複雑極まるが故に。


劫戈は呟くように声を絞り出した。


「……本当は、父とはもっと話をしたかったんだよ。……巳利、お前とも」


聴こえた巳利は無言で応える。彼は頭を下げたまま力を込めて瞑目していた。


(……己が神憑きでなければ、こんな事にはならなかった筈なのに)


内心で呟く劫戈だが、時間が戻る事はない。ただ進むのみ。地上の生き物は、己の領分の下で、止まらぬ時に従い生きるのみ。


その静寂の中で。


「劫戈」


そんな中、静寂を払うように光躬は言葉を投げ掛ける。肩に置かれた手はとても温かい。




──────。




「っ!」


劫戈は瞠目した。

向けられた彼女の眼は気遣いの籠った、慈しむものだった。


そこから察した劫戈は、悲しむのはいつでも出来ると思い留まった。


「そうだな……今は」

「ええ……───皆様!」


光躬は皆を見渡し、凛とした表情で声を張り上げた。重い空気を払うように。


「此度の懇談、思わぬ来訪者との一騎打ちと相成りましたが、見事、彼の劫戈が打ち破りました。───しかしながら、斯様な残党の横やりが起きた事を受け、我が方としましてはお時間を頂きたく存じます。お時間とは言いましたが、ご安心を。本日お集りのところ申し訳ありませんが、二度と起こさぬよう調整し、改めて懇談の場を持ちたいと思います」


佇まいは上位に君臨する姫のそれ。

伊達に女頭をやっていない姿勢で宣言した。




こうして、不安を呷る暗い出来事が起きたが光躬が頭を下げた事で、この出来事は落ち着く事となる。




白狼と烏天狗にとっての騒がしいその日は幕を閉じたのだった。




◇◇◇




寝床で目を覚ました巳利。


「……ああ、まだ明けていないか」


空はまだ、暗いまま。未だ、夜は明けていないらしい。


光躬以下派閥の管轄下に置かれて、与えられた仮の住まいでは簡単には休めなかったか。疲れ切っていたが故に、一足先に眠りに入ったものの駄目だったようだ。


己は生かされている。理解も納得も済んで、頭の中は透き通っている。


今や昼間以外の事を考える事は出来ず、実兄と実父の決闘風景を回想した。それはもう自らの生き方をひっくり返すほどの鮮烈さであったが故に。


終始、上位者に食らいつく未熟者。自身とて、届かぬ強者の実父に適うものか、とどこかで楽観視していた。


実兄は、腰に差した釼から恩恵を受けているとすぐに解った。背には烏天狗にしては大き過ぎる翼が何よりの証拠だ。


灰色の妖力は烏天狗ではあり得ず、総量も少ない異端児という印象は、長年定着したが故に簡単に払拭出来ない。白い狼の群れに拾われ、()の五百蔵に師事を受けたのならば、相応の力を得たと納得出来る。

直に会う事もあり、感じ取った妖力は総量に変化がなくても確実に強固になっていた。維持の仕方、練り出し方、平時でも均一を保ち続ける実兄の妖力制御は、自身にも劣るなどと口が裂けても言えない程になっていた。


戦闘の最中で、実証されたのだ。


妖力を発破させるという奇天烈な発想。

御業で追い込まれ、御業で返し、更に御業で対峙する雄姿。


まさに快挙と言えよう。これが同胞であれば、称賛ものだ。

だが、劫戈は違う。根底から何かが違うと、本能がそう叫んでいる。同一視してはいけない気がする。


そんな劫戈に対し、父は遠慮なく御業を披露する。

遂に明らかになる父の御業だ。木皿儀が繋いで来た妖怪の奥義であった。


祝詞を聞き及び、烏の体現を成す業だと理解した。我らの宵鳴きは凶兆を呼ぶとされ、事実それを体現した技と言える。


漸鵠殲(ざんこくせん)

あれこそ神格をも打倒する、風の化生が持つ本物の畏業なのだと。真の妖が起こす文字通りの災害だ。

漸鵠殲は、古く存在する巨嵐、台風の具現。それに意思を持たせ、自らの武器とする。鴻の啼き声が止む頃には、跡形も残さない。


かつて月に人が逃げたという古代において、妖怪同士で起きた生存戦争時に先祖が使った事があるという。


使われたという事は、本当の意味で、同等かそれ以上の御業しか返し技を持たない。


だというのに───。


得体の知れない御業を繰り出した。一瞬、劫戈の中に何かが膨れ上がったと思えば、まるで土砂崩れのように噴出していた。


それは、槭滅火(せきめっか)、というものだった。


嵐の釼が一瞬にして焔の釼へと変貌し、数多の衆生に死の恐怖を与える万物の火を使ったのだ。

(かえで)の如き赤は、山脈を一望して目に入る紅葉を表しているのだろう。脳裏に死の意識と山々一面に映える赤を連想させた。

その中には銀色があった。妖力とは言えない何か。その未知の力を感じ取り、生き物としての根底にあるものが震えた。身体が硬直し、冷や汗が背を伝うのを覚えている。


恐怖ではない。

憤慨でもなければ、悲嘆でもない。


そう、たった一つの念。


それは、畏れ。


その時には、全身全霊の父を見たという興奮はどこかへ消え去っていた。


どこか、跪きそうな、しかし忌避しそうな何かが心の中で渦巻く。


一体全体、どうなっているのか皆目見当もつかない。


広がる動揺に苛まれ、疑問がいくつも湧いてくる。

既に彼は奥義を体得していたのか。否、断じて否。では初めから使えたとでもいうのか。

そもそもな話、そのあり方を知ろうとも如何様に扱うかを教わっても尚、並大抵の妖怪では体得不可能な御業を、自然に放てる劫戈がおかしいのだ。


全く、ふざけている。


だが出来てしまえたのだ。実力がものを言う我々は素直に受け入れるしかあるまい。


そんな事を考えている間に奴は決定打を放った。槭滅火が父上の漸鵠殲を上回った時には、開いた口が塞がず、息も忘れる程の衝撃を受けた。


業火が父を焼き、致命傷を負わせた。ただでさえ、抗争で疲弊し、御業の連発で寿命を削る行為を重ねたのだ。もう助からないと解ってしまった。


父は、安堵していた。


妖怪としての畏怖を示し、最期を選んで散って行かれた。

息子としてはいつかは越えたい、と望んでいたからこそ悔しくて悲しかった。


同時に、最高の目標たる父を超えてしまった、超えるとは到底思えなかった実兄に先を越された事への憤慨が少なからずあった。

同時に、もう劫戈を覆す気力を失ってしまっていた。自分には劫戈を上回り、覆す力がない。文句しか言えないのだ。


父は安堵していた。邪魔な老人は轍を残して立ち去るのみ、と残して。

よくやった、と呟いたのは、どこかで劫戈に期待していて、己を超えてくれたからなのだろう。思い返せば、父は最後に敗北を認め、笑っていた事を鑑みれば、間違いない。


闘いを演じ、感じ取ったのだろう。長い事、研鑽を重ねた劫戈の事を。


烏天狗としては異質であるが、事実として大妖怪手前の若い強者。そういう事なのだろう。


ふ、と脳裏に過った。そういえば、と。


「……命の刃か」


その呟きは、妖力欠乏に陥った劫戈を助けた彼の感想だった。


彼が携えていた釼。

命名するなら、妖力の貸し借りが出来る命の釼だろう。そのあり方に関しては卑怯とは言うまい。事実、その命は束縛されておらず、劫戈の意思に応じていたのだから。


「銘は……」


巳利の脳裏には、分与した際の不思議な体験が蘇っていた。


白い狼の女性を。





──────




「え……はっ!?」


気が付くと不可思議な場所に立っていた。

真っ暗闇の空間。その中に自分を中心に仄かな明かりが照らされている。


「どこだ、ここは? どうなって……?」


おかしい。自分は妖力を欠乏した劫戈の治癒に従事していた筈だ。

見知らぬ場所にいる事に巳利は困惑したが、彼から少し離れた暗闇の中に、先ほど認識した白い狼の女性がいた。ただ暗闇の中に座っているのか、姿勢が低いうえに、視線を落としているようで顔は見えない。


不思議に思って近付いていくと、それに伴い明かりも移動する。


明かりの中に入り込む女性。


その全貌が明らかになると、何をしているのかが解った。

彼女は膝枕をしていた。力なく横たわる劫戈の頭を撫でながら。


穏和な雰囲気を放ち、慈愛深さを感じる。まるで幼子を包み込む母のような眼差しであった。


「貴女は?」


巳利は問いかけるが、女性は聞いていないかのように無視する。


「失礼……今、自分は実兄を救わねばならない任を帯びている。貴女の膝元にいる彼がそうだ」


すぐ傍まで移動し、彼女の前で問いかける。


「……救う?」


そこで初めて女性が反応した。救う、その言葉に。

耳が天を突き、伏せていた尻尾が荒々しく動く。次いで、赤い瞳がぎょろりと巳利に向いた。


「……散々、彼を罵り嬲ってきた貴方達がそれを成すと言うの?」

「っ!? 何を……」

「ずっと見ていたわ。私が彼に宿った日から。彼の中にある記憶も。寄って(たか)って、まるで餌を貪る禿鷹のように……なんと惨いこと」


冷たく鋭い視線で射抜かれた巳利。冷や水を浴びせられたように身体は動かない。


「でも致し方ないのでしょうね? 自分達は優秀で、それを証明する為に、誰かを虚仮降ろすしかなかった。彼が丁度良かったから」

「ぼ、僕は……」


突き刺さる、冷たい赤。その所為か、心の中に閉まった黒い感情が蠢いた。


「鬱憤晴らしに丁度良かった。心地良かった、そうでしょう?」

「やめろっ……!」


巳利の中で、遂に苛立ちが噴き出した。


「知った風な事を言うな!! 兄が凡愚なのは事実だった! だから僕に期待が伸し掛かった! 歴史ある木皿儀が舐められないようにするには、あれが手っ取り早い方法だったんだ! 津雲様とてそうだった! 兄が、妖として優れていれば……。あの時、思い留まらなければ穏便に済んだ筈なのに……!」


巳利はぶつけるように吐き出し続けた。今まで溜め込んだ黒い感情を。


「でも、兄は残り続けた。期待に応えようとした! そんな事出来ないと誰もが思っていたのに……! だから言ったんだ、そうしてきたんだ。無駄だから失せろ、と……!」


侮蔑、嫉妬、後悔。


「僕だって光躬様をお慕いしていた! でも、光躬様は兄を選んだ……! お情けを掛けられて!」


絞り出したのは、衝撃と悔恨。


「兄が全部持って行った! 大望を掴んだのは、優れていない筈の兄だった! 僕は優秀と言われても結局は駄目だった!」


至らなさへの慟哭。


「八つ当たりして悪いかッ!! 凡愚でしかなかった奴に、邪魔され続けた僕の心苦しさを知ったように語るなァ!!」


肩で息をするほどに巳利は激情を露わにした。この場は誰も見ておらず、この時は本音を吐露出来る故に。

全身から滲み出る闇色の妖気。初めて大きな感情を発露させたのだろう。高ぶりに応じて空気が震えたのは、日方の血筋である由縁か。


ともあれ、巳利は白い狼の女性に今まで溜め込んだ感情をぶつけた。いきなり現れて、劫戈を散々虚仮降ろした事を責めてきた。

だが、仕方なかったのも事実。巳利は幼い頃に、兄に向けられていた期待の矛先が一挙に向けられて精神的に落ち着く暇もなかった。唯一の安らぎは、恋した女子を眺める程度だった事。


「……」


ふと気が付くと、黙って聞いていた女性は冷たい表情を崩していた。納得したように、穏やかに。


「ああ……良かった」

「……何が?」


巳利は困惑した。黒い感情を叩きつけられたのにも関わらず、女性は嫌な顔一つしないどころか安堵しているのだ。

そんな巳利を余所に、女性は膝元の劫戈を撫でる。その手つきは幼子を労わるような慈愛の込められたもので、痛々しい眼の傷跡を気遣う仕草でもあった。


「貴方は解っているのね。そして悔やんでいる」

「え?」

「貴方の心には悔しい気持ちがあって、自分の無力さを恥だと思っている」

「それは……」


巳利は言葉を詰まらせた。目の前の女性との会話が、自分の為を想ってのものと気付いたから。激情が引っ込んでしまったのだ。

真っすぐ、女性は巳利を見ている。そう、見透かすように。


「やはり兄弟なのね。自分の非を認められる。好ましい事よ」

「……」


まるで母のようだ、と巳利は感じた。ただ実母はそんな事をしてはくれなかったと思い出す。父と同じように期待を向ける中、出来たら出来たで当たり前だ、では次もと言ってくる人であったから。

そんな家庭事情がある背景からか、気恥ずかしくて眼を逸らしてしまう巳利。


「自分に出来る事に全力で打ち込むところも、ね」

「や、やめてください」


ふふ、と微笑む白い狼の女性。


「貴方はこの子を救うつもりで来たのね?」

「……ええ。そうです」

「ありがとう。また喪わずに済むわ。お願いね」

「……貴女の名は?」


巳利は問う。彼女の名をどうしても知りたくなったのだ。


ふわり、尻尾が揺れ、悲しそうに眉が下がる。


「ごめんなさい。私はもう生者ではないから、その問いに答えられないわ。でもいつもこの子の傍にいるから解るでしょうね」


その言葉は、巳利に衝撃を与えた。劫戈が背負った(もの)の正体を知ったのだ。


「……まさか。貴女はあの釼───」




──────




その正体は、劫戈に宿る妖怪なのだろう。

彼女の魂と強く結ばれ、命の鼓動を助長させているのを感じ取れた。過去に、劫戈を助けるべく命を懸けたのだと察するのに時間は掛からなかった。


それだけではない、今や多くの先達に見守られているのが解った。

それ程までに大きな存在になっているのだと気付かされた。


対し、自分はどうだろう。順当に烏天狗社会で力を付けたが、何かしら大きな事をしていないし、特別なものを持っていない。


「僕は何を成しただろう……?」


地味だ。その一言に尽きる。

一族の為と陰で奔走し、胸を張った。しかし欲しい女の心を解せなかった。


光躬様に見向きもされないのも頷ける。


劫戈は違った。


這い上がって、吼えて見せた。求めた女の心に触れ、信頼を示していた。自分には出来ない事だったのは間違いない。


もう差は埋まらない。


「ああ……気が付けば、こんな様だな───」


言わなくても解る。実兄は最初からものが違う。それに甘んじる節はあるが、それでも相応に研鑽したのだと解る。それも含めて考えると、彼はやはり強者なのだ。


「……認めよう、木皿儀劫戈。我が実兄よ、貴方は強者だ。弱者と侮蔑した事、撤回する」


血筋を特別視しても、結局は平凡だった。


「光躬様……」


呟いて、初めて向けられた幼い笑みを思い出す。太陽のような笑みを。


そして心の中で決心する。

以降、自分は独り身でいよう。見合い話が来れば、種を撒く仕事と割り切る事にする。

光躬様への恋慕を直隠(ひたかく)しにして、横恋慕に徹しよう。もう、自分には相応しくはないのだから。


「……さて、明日から忙しくなる」


思考を切り替える。深く思考に耽っていたようだ。明日に備えねばならぬ。自分に課せられたものは多い。群れの繁栄に勤しむとしよう。





彼はあっさりと眠りに落ちていった。




◇◇◇




その日の晩。夕餉を終えて、皆が寝静まった頃。


月夜の下、劫戈と光躬は樹木の大枝に腰掛けながら寄り添い合っていた。太陽のない闇元を月光と星々が照らし、二人だけの静謐を作り出している。


因みに樹木は、懇談の場を利用して一時的に張られた天幕から少し離れたところにある。大枝は人の胴体程に育った頑丈なもので、数人分は座る事が出来る。ここは誰にも邪魔されない手軽な場所だった。


そんな幻想的な風景を一望出来る場所ながら、劫戈は浮かない顔のままであった。


光躬は、劫戈の手を両手で優しく握った。包み込むように、労わるように。


「悲しまないで」

「……光躬?」

「日方……貴方の御父君は、討たれて本望だった筈よ。とても安心していたように見えたわ。きちんと貴方を認めたのよ」


彼女の慰めの言葉は日方の最期を強く思い起こさせた。


「悔やむな。誇れ───そう言っていたわ」


劫戈は、その言葉を言った父の顔を思い出した。


苦しむ事もなく、憤慨する事もなく───笑っていたのを。

頑なな烏天狗の特に鎗のような鋭い男が、一度捨て去った筈の子に向き合った事を。


あの時の思いやる心を思い出した。思わず、涙ぐむ劫戈。


「父上……」

「彼の人にはまだ向き合う心があったのよ。頑固な烏天狗だけれど」


日方の心情の変化は、彼の気まぐれによるものではなかったのだという。


「祖父を終わらせて、一派を追いやってから、心境の変化があったんでしょうね。でも貫き通す生き方しか知らなかった」


光躬は自身も津雲を抹殺し、日方らを僻地に追いやった事を吐露する。その結果、日方は封じ込めていたものを吐き出すように振る舞うようになった。


不器用な烏天狗だ。


「…………」

「あの後、解散してから部下に命じて僻地へ確認に向かわせたわ。残党は日方の証言通り自刃して果てていた……」

「貫き通す事しか出来なかった……か」


鎗のような男とはよく言ったものである。


ふう、と一陣の風。

暗い空気を払うように風が通った。


光躬は劫戈の頬に手を這わせる。見つめる赤い眼は、幼い頃から変わらぬ優しいものであった。


「今は悲嘆になるよりも、将来の事を見据えましょう。その為に私達は生きている」

「……なんだか、人間臭いな。その生き方は」

「人間だからと見下していては、いつか足元を掬われるわ。今の人間の政は私達より進んでる。力強さよりも賢い生き方をしているのよ」

「人間が、俺達よりも進んでいる……? 光躬は人間の生き方を知ったのか……」


信じ難いという風に劫戈は聞き返すと、光躬の得意顔を見て真実なのだと感心する。


「そうか……」

「ええ……」


二人は、互いに変わったと感じて笑った。ある種の終わりを感じたのだ。


旧きが終わり、新たな道へ。


劫戈の胸中に感慨深いものが到来した。今までの出来事───追放、邂逅、喪失、自覚、再会、死闘、死別───それらが脳裏に過る。つい昨日までの出来事のように思い出せるのは、彼にとって鮮烈な記憶であったからだ。

特に今回は、最も会いたかった光躬との再会と共に歩める可能性が確固たるものとしてやって来た事から始まった。更に、烏天狗と白い狼一族間の関係が改善されていく事にも繋がっている。


実に一石二鳥ものである。劫戈にとって親しい二つの群れが手を取り合うという大変喜ばしいものになってくれた。


遠く感じていた。

でも、再びこうして触れ合う事が出来ている。


「ねえ……劫戈」


劫戈の胸元にしな垂れかかる光躬の声で、はっと我に返る。白く細い柔らかな光躬の手を握り返した。


「どうした、光躬」


方や凡愚、方や天才。

這い上がった劫戈。求めて抗った光躬。


幼き日、望まれなかった二人の結び。


二人は、一つになる事を望んだ。否定する者を跳ね除ける、強い熱い想いが二人を引き合わせた。


かつて描いた絵空事、幻想に終わった筈の二人の仲は、今こうして実現したのである。


「やっと二人きりになれたね」

「ああ……そうだな」

「貴方が大きく感じられる。あの頃とまるで違う」

「まあ、あれから成長したしなぁ……」

「逞しくなってくれて私は嬉しいわ」

「そ、そうか? それは俺も嬉しいな」


そこから無言になった。次第に視線───赤い眼と灰色の眼───が重なり合った。じっと離さなくなる。


そして向き合うとゆっくりと吸い寄せられていった。互いの顔が眼前まで来ると、軽く啄むような接吻をした。


「本当に綺麗になったな、光躬」

「そう言う貴方は素敵になったわ」


ややあってどちらからともなく抱擁した。背の翼も加わって、互いに相手を包み始める。ただ劫戈の方が大きいので光躬の方が簡単に包まれてしまったが。


「温かい」

「……光躬は少し冷たい気がする。冷えたか?」

「違うわ。雌なんだもの雄に温めて欲しいのよ」

「っ!? こいつめ……」


腕の中でくすくすと笑う光躬に一瞬呆けた劫戈は一層抱擁を強めた。なんとも男が悦ぶ事を言うのだから劫戈も嬉しくなって笑った。


「劫戈」

「なんだ?」

「私と、夫婦になってくれますか?」

「もちろんだ」


その即答に、光躬は感極まって嬉し涙を流した。一筋の雫が頬を伝う。


「だけど嫁入り、か……?」

「私はどちらでもいいけれど、でも木皿儀を名乗るのは皆反対なのよ……お父様も反対していて」

「なら、俺が婿入りすればいい。それで解決だ」

「いいの?」

「ああ……もう未練はない。射命丸の名は慣れないけど」

「大丈夫。貴方なら」

「ありがとう」


婚姻に関しては劫戈が婿入りする事で落ち着いた。


彼は背を押された事で、木皿儀の性に未練は抱いていなかったが故に、円滑に決まった。ようやく劫戈と光躬は結ばれたのだ。


「……」

「……」


そして笑みが消えた。妙に甘い香りが劫戈の鼻を擽る。


「ねえ……」

「……ん?」

「しましょう?」

「……あー、今か……?」


艶やかな吐息交じりに問われ、劫戈は返答を濁した。

しましょう、と。察しが良ければ、何を意味するかは解る。光躬が劫戈に求めて止まない感情と行動を鑑みれば、今何をして欲しいのか言うまでもない。


しかし、寝静まっているとはいえ、ここは野外で、近場に天幕がある。耳鼻に優れる狼が多数寝ているのだ。羞恥心からそのような行為は憚れる。


「……後日じゃ駄目か?」

「いやよ、ずっと我慢してきたのよ。皆、私達の関係の事は解っているから、明日は堂々としていてね」

「えっ!? 待て……待て、光躬!」

「劫戈は嫌? したくない? ここまで来て、まだ我慢しろって言うの?」

「いや、それは……」


不満げに上目遣いで詰め寄る光躬。

対し、雌に求められて雄としては嬉しい劫戈だが、理性が制止を掛ける。


「それとも自信がない? 大丈夫。私も経験なんてないわ」

「そういう問題じゃないんだよ! 寝てるから、皆が!」


劫戈は未経験だが、知識と本能から何をどうすればよいかは理解している。それによって生じる音や臭いは、こっそりやるわけにもいかないものだ。誤魔化しが利かない。


「……ご、後日にしよう……な?」


頬に添えられた彼女の手をやんわりと握って返答する。

正直に言えば、彼もしたかった。とはいえ、安易に状況に流されてはならないと自制が利いてしまい、もどかしく思っていた。


「そう……今の貴方がその気でないのは解ったわ」


残念そうに俯く光躬だが、その赤い眼が妖しく光っていた。

不穏な気配を感じ取った劫戈は、顔を引き攣らせながら問う。


「光躬……?」

「その気にさせるからね」

「え──────っ!?」


瞬く間に、劫戈の視界は艶やかな黒に彩られ、鼻や肌は蕩けるような甘い感覚に襲われた。齎された快感が突き抜け、それを理解した瞬間、彼の中に眠る雄が歓喜し、本能が目の前の雌を認識して───。




その晩、二人は夫婦の契りを交わす。押し殺した嬌声と水気を含んだぶつかり合う音が響いた。




結局、彼の自制が意味をなさなかった。一挙に削り取られた理性は、役に立たずに終わったのだ。










「……こんな時に。気の早い、仕方のない娘だ」


ある御仁は横になって寝ずの番をする傍ら、響いてくる情事の音を無視した。


夜明けはまだ遠い。願わくば、娘の性欲の強さに腰を抜かさないで欲しい、と彼は胸中で思った。








◇○◇








遥か天空。


地上を見やる、眩い焔を纏う黄金の女神がいた。その眼は穏やかで、我が子を見守る母のように佇む。



『……我が愛し仔は契りを結んだか』



ふう、と安堵する女神。



『まこと喜ばしい、無限の時を生きる我ら。汝らに幸あらんことを……』



そう言って微笑む。細められた目は、安堵と慈愛が宿っていた。



───が、その顔は一変した。



『しかし、(とき)は待ってはくれない。旭の軍神も憂いておられる』



女神は険しく顔を歪めた。自らの非力さを嘆くように。



『それまでは仲睦まじく、己の領分の下で栄えよ』







そこへ歩み寄る人影が一つ。雄々しい巨大な覇気を持つ存在、鬼を思わせる偉丈夫だ。



『───ここにいたか、迦楼羅(かるら)

羅刹(らせつ)か』



女神こと迦楼羅───婆羅門、護法十二天が一柱、鳥類を統べる神は、羅刹と呼ばれた男神を一瞥する。



『時間だ、始まるぞ』

『しばし……しばしの間だけ待ってはくれまいか。この眼に刻んでおきたい』

『……迎えに行ってやればよかったろうに』



羅刹は呆れながら、迦楼羅の末裔を見た。

天空からでは米粒にも満たぬ大きさにしか見えないが、距離を問わぬ神眼は見たいものをしっかりと視認可能である。

羅刹は冷静に分析する。邪なるものを焼き殺す黄金の焔は受け継がれなかったが、代わりに神妖独自の銀色の力が宿っていると。



『今や地上の妖怪であっても貴様の血を引く末裔で素養も高いならば誰も否定はせぬ。寧ろ、貴様の加護を持つ以上は地上では生きにくいだろう』

『いや……我が(かいな)では()いてしまう。直接触れられぬ』

『だから待っているのか』

『……なんのことだ?』

『あれが代行者になりうる力を付けるまで待っているのだろう? 覚醒すれば神格が触れても害される事もない。あわよくば後継者にも出来る』

『……』

『まあ、そういう事にしておく……』



まあ無理もないか、と羅刹は続けて呟いた。これから起こる事を考えれば已む無し、とも。



『さあ、行くぞ。事が終わり次第、また見に来ればいいだけだ』

『……───わかった』



地上観察を切り上げて踵を返すように、二柱は自身がいる場所よりも遥か上空を見た。







見据えた先には未知なる深淵が映っている。澄み渡る青空に、一点、異質な黒いものが顕れた。


泥水のように空を汚して浸透するそれは、得体のしれない何かが這い出て蠢いており、今にも何かが飛び出してきそうであった。







『我が子孫には指一本触れさせぬ……覚悟しろ!』



咆哮する迦楼羅天は邪龍殺しの焔翼を拡げた。これから一戦交える為に。



『来るがいい───外なる神よ!』




───第二章 了───


ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

こんな結末ではありますが、ここで第二章は終わりと致します。ハッピーエンドをご所望の方々は、ここで終わったと脳内保管して下さい。

烏天狗に限った話ではありませんが、有翼人って凄いですよね。飛行しながら出来ちゃうんですよ、所謂スカイプレイ。まあ、安全面は別として。


さて、ここで一部設定を補足しておきます。

最後に出てきたのは、インド神話の迦楼羅天で、これまで登場していた女神です。

拙作における烏天狗は、迦楼羅天の子供達の末裔が妖怪になったという設定。そして、その血筋である劫戈は先祖返りとも言える体質で、迦楼羅の加護を受ける“神憑き”になりました。また迦楼羅の思惑で、色々と間接的にフォローされていました。

その理由は、まあ最後のでお察しください。




では、ここから作者よりこの第二章終了の説明を。


この結末。これには理由があります。

そう、ハッピーエンドで終わったとしたい方々向けに区切りを設けること。


全ては第三章こと最終章に繋げる為です(にっこり)。


さて、ここまで来るのに長い時間を掛けました。一段落が付いたので一旦、更新を止めて第三章の再構成及び、書きたくなった新しい小説に注力したいと思います。


では、これにて。



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