第八話「眠れたはずがないでしょう、わかります」
第八話「眠れたはずがないでしょう、わかります」
スライムの種を育て始めてから3日が経つ朝。ステラは眠そうに目を擦りながら起床して窓を開ける。
「おはようございます、アルさん。よく眠れましたか?」
「うぬ! 我はいつでも快眠じゃ!」
そう言うアルの目の下は真っ黒だった。
「アルさん……昨日、何時に寝ました?」
「う……えぇと……じゃな、確か……そう、まだ暗かったことは覚えておるぞ!」
「そうですか、それは良かったです。今日は早めに切り上げて休みましょう」
ステラはアルを連れて外に出る。今日も晴れで、木々の合間を縫って差す光にステラは目を細める。
「今日もいい天気ですね。スライムも良く育ったのではないでしょうか」
「そうじゃの! 早く見に行くぞ!」
アルは興奮気味に畑へと向かう。そこには白い花が一輪咲いていた。
「アルさん、これはスライムの種からできた花です。もう花が咲いているのでスライムが生まれていると思いますよ」
「ど、どこじゃ!? 我の魔物は一体どこじゃ!?」
「そう焦らないで下さい。早速探しに行きましょう」
二人は畑のあちこちを歩き回るもスライムの姿はどこにもない。
「う……うぅぬ……恥ずかしがり屋さんかの?」
「そうですね……水辺にでも行ってみましょうか?」
スライムは体の九十%が水分だ。そのため脱水症状に弱く、定期的に補給のため水辺に集まる性質がある。二人が近くの池に行ってみると、その木陰で小さくなっている物体が一ついた。
「あ、いました! スライムですよ!」
「な、何っ!? おぉう……可愛い奴よのう」
ゲル状になっていたスライムは二人に気が付くと、なめくじのように体を這わせて近寄って行く。
「アルさん、スライムは言葉を話せません。ですが……ほら、好意を示す時は色が薄くなるんですよ」
スライムの青い体が水色に変色している。
「うぬ! これからよろしくのう、スライム!」
「アルさん、名前を付けてあげましょうよ」
「名前……そうじゃな、考えておこう!」
こうしてアルの軍勢にスライムが加わった。