第六話「ダンジョンは安価に、かつ恐ろしく」
第六話「ダンジョンは安価に、かつ恐ろしく」
ステラは様々なダンジョンの特徴がまとめられたカタログをアルに見せた。
「うぅぬ……色々とあるものじゃな。できれば大きいのが良いのじゃが」
一ページで一つダンジョンが紹介されているのだが、そのカタログは300ページにも及んだ。後半に進むにつれてダンジョンは豪華な作りになっており、最も費用がかかる宙に浮かぶ魔王城がラストのページを飾っている。
「大丈夫ですよ、私たちは最初の方を読みましょう」
「それはそれで悲しいのう」
「徐々に大きくしていけばいいですよ! 早速ですが、私は平地型をお勧めします」
平地型とは最も費用がかからない代わりに、ダンジョンとしての脅威は皆無に等しい初歩的なタイプだ。威厳も無く、人間界では○○の森などと地図に名前が載るほど警戒されない。
「せめて、地下に造りたいものじゃな」
「そうなると……ほら、こんなに費用がかさみます」
「うぐぅ……」
アルの資金は残り銀貨数枚。地下にダンジョンを築くとなると、最低でも金貨一枚は必要だ。まさに夢のまたの夢の状況である。一方で平地型は子供が空地に秘密基地を作る程度なので費用は一切かからない。
「ですがアルさん、平地型にはかなりお得なポイントがあるんですよ」
平地型は安いことだけが長所ではない。特に森の中にある場合、その土地を熟知していれば地の利を得ることができる。人間界では、森での戦闘において地の利を得た子供はよく訓練された一個大隊にも匹敵すると言われている。
「……それは地下ダンジョンでも同じではないかの?」
「それはあり得ません。地下ダンジョンはどうしても魔物の手が加わってしまいます。自然ゆえの煩雑さ、荒さが表現されず同等の脅威とはなりえません」
「そ、そうかそうか! うぬ、ならば平地型ダンジョンから始めようかの! 我はこの地で生まれ育った者。草の一本までどこにあるのか把握しておるわ!」
「条件としては最高に満たせていますよ! 早速見て回りましょう」
二人で森を散策した結果、森の中にはいくつか広場があり、そこに至るまでの道のりはよく整備されていることがわかった。行き先は人間たちの集落か何かだろう。
「……作戦としてはこの道を破壊するか、それとも開拓されていない土地を活用するかですね」
「うぅぬ……道を破壊したら我らも困るのではないかの?」
「そうですねぇ……それに、道を破壊したら私たちを排除しようと人間たちが一気に押し寄せて来る可能性もあります。未開の地を活用しましょうか」