第十四話「作戦、始動!」
第十四話「作戦、始動!」
所定の位置についたアルは自分の手を見つめる。
「どうしましたか?」
その後ろに控えているステラは不思議そうに尋ねた。
「う……うぬ。実はな……我は今まで大したことをしてこなかったのじゃ。そんな我が今、こうして自分の手で奴らを追い返そうとしておる。……手が震えてしまうのじゃ」
「……頑張って下さい。これが魔王としての第一歩ですよ」
その手をステラが優しく包み込む。
「……すまぬ、魔王らしからぬ失言じゃった」
「辛かったら言ってくださいね。大して力になれないかもしれませんが、話を聞くことはできますから」
「……恩に着るぞ。さぁ、始めようぞ!」
アルはスラミーたちに指示を送った。
魔法使いは大きなくしゃみをした。
「うぅ……寒い」
突然の大雨によりパーティ一行は雨宿りを余儀なくされた。濡れたことで体力が奪われていくのだろう。僧侶は眠たそうに頭を揺らしている。
「すまない……俺が意地を張ったばかりに」
「……ま、それがあんたの良いところだから、何も言うことはないよ」
魔法使いが鼻をすすりながらそう返す。だからこそ、戦士は更に申し訳なく思ったのだろう。
「……一度引き返そう。休息も必要だ」
「引き返す……ね。うん、そうしようか。この子もかなり疲れているみたいだし」
こうして直接対決がなされることなく、パーティは引き返していた。
「うまくいきましたね!」
「うぬ! こうまで上手くいくとはのう」
スラミーも水色になっていて、凄く嬉しそうだった。
3人が取った作戦はこうだ。まず、幻惑魔法で何の変哲もない森を歩き回らせ疲弊させる。そこにスラミーたちがかき集めた水を木の上から吹きかけ、それと同時にアルが幻惑魔法で大雨が降っているという錯覚を起こさせる。当然戦士一行は雨宿りするだろう。そこで更に疲弊した一行は帰りたくなるはず、という算段だった。
「お疲れ様でした。ですが、ゆっくりするのは早いですよ?」
「うぬ。うかれず、早くダンジョン作りをせねばのう!」